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握力特化のバカが行く  作者: 溶ける男


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第9話 別れ

「やめろ!」


そう言って、強引に戦闘に割り込みクインちゃんを背に庇いながらプレイヤー4人と対峙する。

コレがマナー違反なことは分かるが、そうせずにはいられなかった。


「なんだオッサン、初期装備のクセに割り込んでんじゃねぇよ?」

「オッサンって、まだ二十代前半なんだけどな」

「そんなことはどうでもいいんだよ、邪魔しないで貰えませんか。

 マナー違反なのは分かってますか?」

「ああ、それでも割り込まずにはいられなかったんでな」

「何なんですか、貴方は?」


パーティーリーダ―と思われる剣士?に問われたが、確かに何なんだろうか?

数瞬悩んだ後、絞り出すように答えた。


「…彼女の友人だ」

「は?もしかして彼女ってのは後ろの蜘蛛のこと言ってんのか?」

「ああ」

「ぶふぅぅ、モンスターが友達って…くふふ、バカじゃねぇの!」

「そうかな?モンスターだってこの世界の住人だ、仲良くなることぐらいは出来る」

「仲良くって、所詮はデータじゃん。オッサンはリアルに友達いない派なの?」

「そんなことは無いが、それとこれとは関係ないだろ」

「大体モンスターを連れ回したいならテイムでもしてればいいんだ」

「そういう君は、後ろの仲間たちをテイムしたのか?」

「は?リアルフレだリアルフレ。

 オッサンとは違って一緒に遊ぶ人もいるわ」

「そうだな、テイムなんかしなくても仲良くなることは出来るもんな」

「何が言いたいんだ?」

「この世界だって同じだってことだ。

 モンスターだろうがNPCだろうが此方がちゃんと対応すれば友好的な関係を持てるって話さ」

「ふん、だから仲良くなったその蜘蛛を殺さないでってか?」

「まぁ、そうなるな」

「そいつは無理だな。

 俺たちだってここまで来るのに準備にお金もかなり使ったしこのまま手ぶらじゃ帰れないんだよ」

「ふぅ、やっぱりそうなるか」

「もしかして、俺たちと戦うつもりか?」

「話し合いで片付かないなら、そうする事もやむおえないかとは思ってる」

「舐められたもんだぜ、初期装備のクセに俺たち4人と戦おうってのかよ」

「やっぱり後ろの3人も引いてはくれないよね」


そう問いかけるとリーダーの子も振り向き3人に意思確認する。

やはり引いてくれることは無く、4人とも戦闘態勢を取る。


「一応PvPにしない?

 このままやったらどっちが勝ってもPKに成っちゃうしさ」

「ああ、俺たち4人対あんたと蜘蛛のでいいのか?」

「いや、俺1人でいい」

「ふん、さっさと終わらせてやるぜ」


PvPの設定が終わりこちらに承諾の確認のためのメッセージボードが現れる。

はいを選択してPvP用の結界の様なものが広がって行く。

この結界内は周囲と隔離されるようになり、決着が付くまで出ることは出来ない。

カウントダウンが始まりこちらも構えを取るとともにクインちゃんへ逃げるように合図を送る。

多分負けるであろうが、時間を稼げばクインちゃんなら逃げることは出来るだろう。

その為の、PvPの提案であり後はどれだけ自分が戦えるかに掛かっている。

相手側は此方に集中していて、まだクインちゃんが居なくなったことには気が付いていない。

カウントダウンが終わり開始の合図が鳴り響いた。


彼らの構成は、見たところ前衛1:遊撃1:後衛2という構成だろうか?

前衛の先ほど喋った剣士と遊撃にはシーフっぽい恰好の子、後衛は魔法使い2人だ。

開始の合図とともに、剣士が走ってくるのに構えているとナイフが飛んできた。

シーフが剣士に隠れて投げたようだ。

ギリギリ避ける事に成功したが、その隙に斬りかかってくる剣士。

彼の動きは、何というかお粗末なものだった。

綺麗な太刀筋で読みやすいとでもいうのか、何処を狙ってるのかがはっきりと分かるのでとても避けやすいし攻撃速度もそんなに早くない。

軽く避けたついでに足を掛けて転がすと、防具が重いのか直ぐには立ち上がれないようなので、その隙にシーフのこと後衛にターゲットを切り替える。

後衛に近づこうとするとシーフの子が間に割り込んできた。


「いかせねぇ」


そう言って、ナイフで切り掛かってきたが、こちらも如何やら剣士の子と同じようでとても読みやすい太刀筋だった。

さっと避けて顔面に思いっきり掌底を当てて怯ませて大外刈りの要領で背中を強打する様に倒して、後衛に向けてすすむ。

後衛の子たちは慌てたように魔法を詠唱しているが、そんなに慌てていると、ほら失敗(ファンブル)した。

不発に終わった魔法で無駄にMPを消費して、怯えるように杖を振り回す2人を捕まえてはシーフの所目掛けて投げつける。

うーん、装備の割に弱いな。

少し怯えるような目を此方に向けて再度集まった四人に向けてちょっと疑問に思った事を投げかけてみる。


「ちょっといいか?」

「な、なんだ?」

「君たちってこのゲーム長いの?」

「一応第一陣だ」

「じゃぁスキルレベルもそこそこ言ってるんだ」

「何が言いたい」

「一言でいうと、思っていたより弱い」

「な…、何だよ。そんななりして本当はβプレイヤーか何かだったのか?

 俺たちをいたぶって何が楽しい!」

「いや、こっちは第二陣だし。

 スキルレベルの合計も40行かないくらいだ」

「なんだよ、リアルチート持ちかよ」

「リアルチートって…、多分そんなんじゃないと思うんだよね。

 君たちってさギルドの訓練場に行ったことある?」

「訓練場?

 あんなところ行くわけねえだろスキルレベルなんて町の外の方が上がるんだから」

「やっぱりそうか。

 訓練場を利用する時にさ追加料金で教官を付けてもらえるのは知ってる?」

「ああ、あの鬼みてぇに強い女だろ」

「そうそう、ライラさんね。

 彼女にちゃんと教えを乞えば、スキルレベル関係なくこのくらいにはなれると思うんだけど」

「教えを乞うってどのくらいの期間だよ」

「う~ん、僕の時は2週間毎日通ったけど」

「2週間って、どMかよ」

「なんでそうなる」

「あんなのに2週間も付き合える奴なんていない。

 見た目がいいだけの戦闘狂の教官なんかに付いていけるか!」

「でも、その結果がこれじゃないかな。

 いくらスキルレベルが高くてもさ、スキルに振り回されてちゃ太刀筋なんか読みやすいし、その内スキルだけじゃ倒せないモンスターとか出てきて頭打ちが目に見えてるよね」

「ぐぬぬ」

「と言う訳でさ、負けを認めてくれないかな?

 これ以上やってもあんまりいい結果になりそうにないしさ」

「くそが!」


そう言ってリーダーの子が敗北を認めて初めてのPvPは終わった。

もう少し連携して攻撃されると負ける気がしていたので、取りあえずはったり気味に全員に対して敵わないと言う印象を与えて無理やり負けを認めさせたのだ。

彼らは、負けたことが相当悔しかったのか町に戻って訓練所に通ってみることにしたらしく挨拶もなく町へと向けて走っていった。


戦闘が終わり振り返ってもクインちゃんの姿はそこにはなく、合図通りに何処かに行ってしまったようだ。

初めてで来たモンスターの友人の無事を祈りながらその日はログアウトした。

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