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握力特化のバカが行く  作者: 溶ける男


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第8話 迷い

「えーと、ココかな?」


ライラさんの地図を頼りにスターティアの裏路地を歩くこと1時間弱ようやく目的の場所についたと思う。

そこは、隠れ家的と言うか人が住んでいるのかすら怪しいボロボロの建物だった。

それでも、窓から中を覗いてみると外見からは想像できないほど立派な機織り機が見えるので間違いないはずだ。


コンコンコン


深呼吸して息を整えてドアをノックすると2mを超える大男がドアをくぐって現れた。

男の見た目は、スキンヘッドに白いタンクトップと茶色いズボン。

どちらかと言うと冒険者の方が向いてると思うほど筋骨隆々の体つきでとても裁縫なんて出来なそうな印象だ。


「なんだ?」

「始めまして、ニギルといいます。

 ライラさんの紹介でやってきました。

 これ紹介状です」


そう言って、紹介状を指しだすと男は奪うように受け取りその場で読み始めた。

紹介状を読み終えた男は、めんどくさそうに僕を下から上に見た後、店の中へと招き入れた。


「ところで、ニギルだったか?」

「はい」

「お前、冒険者ギルドからここまでその顔で来たのか?」

「顔?」

「気づいてなかったのか、ほれ」


そう言って鏡を渡されたので覗き込んでみると右の頬が大きくはれ上がり真っ赤なモミジが出来ていた。

ここまでくる間すれ違う人たちから妙に視線を感じると思ったらこれが原因ですか。


「で、紹介状にはそのことについては触れてなかったが何があった?」

「え~っと、それは…」


そうして、聞かれるがままにモミジの原因を話してしまった。


「ひ~ひっひ、あ~腹痛て~あのライラ(バトルマスター)が可愛くなっちゃって」

「バトルマスターですか?」

「ああ、何から話してっと…まぁそんな事は置いといて仕事の話をしようじゃねぇか」

「どうしたんですか急に?」

「後ろを向いてみろ」


言われるままに後ろを振り返ると入り口からライラさんが顔を覗かせていた。


「グ~レ~ン~、要らない事は言ってないでしょうね」

「はい、もちろんです。ライラの姐御」

「姐御って呼ぶんじゃないよ」


ライラさんの登場で椅子から立ち上がり、起立の姿勢のまま受け答えしだした大男ことグレンさん。

態度の変わる様子を見るにライラさんは相当頭の上がらない存在なんだろうと思う。


「ニギル、こいつからなんか聞かなかったか?」

「大丈夫です、これからってところでライラさんが来たのでセーフです」

「ニギル、おめぇってやつは、…姐御勘弁してくだせぇ」

「姐御って呼ぶんじゃねぇって言ってんだろうが!」


そう言って綺麗なアッパーカットが決まりグレンさんが宙を舞う。

床を転がり起きる気配のないグレンさんを揺すって呼びかけるが完全に意識を刈り取られたようだ。

なんだこれ、もう収拾がつく気がしない。


あれから10分ほどしてようやく目を覚ましたグレンさんに素材を渡して、採寸を終えて服のイメージを伝える。

イメージとしては、袖が無い道着の様なものを作ってもらう方向で話を進めて後は、ほかに必要な素材なんかは余った糸を下取りしてもらって立て替えると言うことで落ち着いた。


「ところでライラさんはどうしてここに来たんですか?」

「ん?…そうだった。

 あの後、ギルドでこれから蜘蛛のボスを倒しに行くって言ってるやつらが居たから知らせに来たんだった」

「え?それってもう1時間以上前の事じゃないですか!」

「すまん、すっかり忘れてた」

「あぁもう、ちょっと行ってきます!」

「ああ、気を付けて行って来い」


後のことはライラさんに任せてグレンの店を飛び出すと一直線にモニュメントに向かって駆けだした。

間に合え、間に合ってくれ!

そう願いながらフォレスティアに跳んで森に入る。

着いたところで何が出来るのかは、分からないがとにかく行かなければ絶対後悔する。

通い慣れた道を進み広場へと到着したときには、戦闘が始まっていた。

既に巣は壊されたのか、地上に降りて応戦しているクインちゃんはプレイヤー4人を相手に必死に応戦しているようだったが、足を2,3本失っていた。


「やめろ!」


僕は、何かに弾かれる様に戦場の真っ只中に駆け出してクインちゃんを庇うようにプレイヤーと対峙した。

今回は短いですが、区切りの良さそうなところで終わらせました。

クインちゃんについては、まだ決めていないのでどうなるかは分かりませんがその辺は次回をお楽しみにと言うことで。

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