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握力特化のバカが行く  作者: 溶ける男


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第2話 最初の壁

復活ポイントの神殿で生き返った後、取りあえずログを確認してみた。


貴方は死亡しました。

復活ポイントへの移動を開始します。

スキルレベルの合計が20未満の為デスペナルティの効果無効。



うん…よし、気持ちを切り替えて行こう。


ただ死んだわけではない、ちゃんとレベリングの効果もあり≪握力強化≫もLv3になったし、意外なところで≪運搬≫もLv3になっていた。

運搬をした記憶はないが、長時間グミを持ち続けていたことが関係しているのだろう。

デスペナルティが無いと言うことは、このままもう一度挑戦できると言うことだ。

冒険者ギルドが空いてたら登録を済ませてリベンジと行こう。


と言うことでやって来た冒険者ギルドは、一時間前よりも空いておりクランへの呼び込みも疎らになっていた。

サクッと登録を済ませるとステータスに冒険者ランクと言うモノが追加された。

ランクに合わせてクエストが受けれるようになるそうだが、登録したばかりなので1番下のFと言う表示されている。

特に受けようと思うクエストもないし、討伐系のクエストは指定のドロップアイテムを渡すだけなので手に入れてからでもクリアできるそうだ。

冒険者ギルドを後にしてもう一度草原にやって来た。

グミへのリベンジを果たすために、その前にネズミでレベリングを開始する。


門から少し離れた人が少ない場所まで移動してネズミを探す。

丁度草むらから出てきたネズミに向けて駆けていくと相手も気が付いたのかこちらを威嚇した後、飛びかかって来た。

それを右手で捕まえる事には成功したが、手のひらに噛みつかれてしまい痛みに手を放しそうになって慌てて左手掴み直して一匹目の捕獲に成功した。

両手でグッと力を入れるともがいていたネズミは「ヂュゥゥ」と苦しそうに鳴いた後ポリゴン片となって消えた。

…感触がリアルに伝わってくるのでグミとは違って罪悪感が半端ないな。

特に最後の骨が折れたような感触とか中々くるものが有った。


それでも収穫も有った。

ドロップアイテムのネズミの毛皮だが、品質が最高となっていたのだ。

説明を読む限り、傷もなく状態がいいという一文が有ったので武器や魔法で攻撃をしていない事が条件だと思う。


其れからひたすらネズミ狩りに夢中になっているとスキルレベルの合計が20を超えたのか


デスペナルティの適用条件が解放されました。


と言うアナウンスが出たので一旦ステータス確認も含めて休憩することにした。

周りを見渡すといつの間にか草原を抜けて森林エリア付近まで来ていた。

スキルは≪登攀≫以外はLv3を超えていて≪握力強化≫は6を超えていた。

折角森林エリアまで来たので木登りをして≪登攀≫のレベリングもしてしてしまおうと思い適当な樹に手を付けると、スキルの効果かなんとなく次に手を掛けるべき場所が分かるのですいすいと昇れてしまった。

天辺まで来てみたが特に何かある訳でもないが、手ごろなギリギリ掴める太さの枝を掴んで懸垂でもしてみる。

現実だと落ちないように握力ばかりに気を取られて懸垂が出来そうもない太さだったがスキルのお陰で危なげなく出来たが、30回を超えた辺りであれが襲ってきた。

そうスタミナ切れだ。

逆上がりの要領で枝の上に何とか登って座り込みSPの回復を待つ。

結構上の方でやっていたのでもし落ちたら死に戻ってしまうかもしれなかった。

SPの回復を待っていると、西の地平線に太陽が沈んでいくのが見えた。

このゲームでは、4時間ごとに昼と夜が入れ替わる。

これからは夜の時間と言う事だろう。

夕日を眺めながらこの後について考えていると、東から月が昇って来た。

如何やら太陽と月が時計の様な役割を果たしているようで、規則正しく四時間かけて東から西に動くことで大体の時間把握が出来るようになっているようだ。


夜になるとモンスターの分布は一変する。

草原エリアについては、大コウモリと言うモンスターが追加されるだけらしいが他のエリアでは、モンスターが群れで出やすくなったり狂暴化したりするらしい。

そんな事を考えていると、首筋に痛みが走った。

痛みに振り返るといつの間にか肩に停まっていた大コウモリに噛みつかれていた。

慌てて頭を掴んで引きはがしそのまま力を込めて握りつぶすとネズミと同程度のHPらしく直ぐにポリゴン片に姿を変えた。

此処に居ると狙われそうなので樹から降りて一旦町に戻ることにした。


如何やら昼間はノンアクティブの大ネズミも夜は違うらしく茂みから襲い掛かってくるが、散々倒してきたのでもう慣れたモノである。

体当たりか噛みつきしかない彼らは自分から近寄ってきてくれるので、それをカウンター気味で捕まえてそのまま握り潰せばポリゴン片に姿を変える。

しかしここは草原を越えて森林の近く、より凶暴なモンスターが出てもおかしくないと思い、今日の所は時間も時間だし戻ってグミにリベンジを果たしてログアウトすることにしよう。


来た道を引き返しながら手ごろなグミを2匹捕まえて門の横の壁に背中を預けて揉み始める。

グミの感触は、硬すぎず柔らかすぎない絶妙な硬さで揉み心地もいい、開発スタッフのこだわりを感じさせる逸品だ。

こんな硬さの枕とか布団が欲しい。

それはさておき、先ずはこのグミを倒すことに集中だ。


「すいませ~ん、もしもーし」


グミを夢中になって揉んでいると声を掛けられたので、顔を上げると重そうな全身鎧を身にまとっている割に幼い顔をした女性がしゃがみこんでこちらの顔を覗き込んでいた。


「あ!やっと気が付いてくれました」


どうやら、集中しすぎて声を掛けられていることに気が付かなかったようだ。


「何をしてるんですか?」

「これ?う~ん。レベリングかな」

「テイマーさんですか?」

「いや、≪握力強化≫のレベリングなんだ」

「え?≪握力強化≫ってあの不要な補助スキルとか言われてるやつですよね」

「そうそう、よく知ってるね」

「これでも、ベータテストからやってますからね」

「へー、うらやましいな。僕は、今日が初日なんだ」

「もしかしてレア目当てでランダムでスキルを選んだんですか?」

「いや、目的を持って≪握力強化≫をメインにしたんだ」

「え~!!補助スキルなのにメインスキルにしてるんですか?どんな目標何ですか?」

「それはね、全てのモンスターをアイアンクローで倒すってやつさ」


興味津々に目をキラキラさせて聞かれたので、ちょっと格好つけて目標を宣言してみたら彼女はお腹を抱えて笑い出した。

一分ほど笑った後、落ち着いたのか


「ふふっ、すいません。別にバカにしたんじゃないですよ」

「いいよ、自分でもバカなこと言ってると思ってるから」

「いいえ、目標が有るっていいですね。

 私なんて、友達に誘われて応募したら運よく当たっただけで、面白いから続けているだけですもん」

「僕も応募はしたけど外れたんだよね。

 でも当たってたらこんなスキルは選んでなかったと思うから結果オーライなのかな?」

「いいな~、よし!私もこのゲームで何か目標を探してみます」

「そっか、何か見つかるといいね」

「はい、それでは失礼しました。頑張ってくださいね」


そう言って彼女は、手を振りながら森の方へ走っていった。

如何やら、パーティーのメンバーを待たせていたようで合流しているのが見えた。


さてと、残りのHPが3割に差し掛かりグミが反撃の消化液の分泌をはじめたのでここからが本番だ。

スタミナに気を付けながら揉み込むが、やはりこちらの方がHPの減りが早い。

ここで手を放してしまえば死ぬことはないし、ポーションを使う手もあるがそれで倒してもグミに負けた気がする。

それにいくら耐性持ちでも、最初の町付近に出る最弱レベルのモンスターに回復アイテムを使わないと勝てないようでは先が思いやられる。


グミを必死に握り攻撃を加えたが結局、本日二度目の死に戻りとなってしまった。

デスペナルティのアイテムのランダムロストと所持金の3割を失い、30分のステータス半減を受けて神殿で復活した。


「ふ~う、物理耐性手強いぜ」


思わず独り言をつぶやいてしまい、静かな神殿内に鳴り響いた。

幸いプレイヤーらしき人はいなかったが、恥ずかしさのあまりいそいそと神殿を後にしてログアウトした。

お読みいただきありがとうございました。

物理耐性の壁は厚めにしています。

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