第15話 初めての○○
お久しぶりです。
リアル(怪盗やったりガバス集めたり)が忙しく時間が空いてしまいました。
まぁ遊んでいただけなんですが、なんとなく話の展開がうまく進まず書ききれなかったので思ったよりかかってしまいました。
ようやくDランクになりセカンディアから次のエリアへ向かう門を超えることができた。
俺は、イライラをぶつける様に見かけたモンスター全てを相手しながら進んでいた。
イライラの原因は…
先日開かれた第一回最強武闘祭と言うゲーム内イベントの性だ。
結果は、予選専用のフィールドに飛ばされて本戦に向けてポイント稼ぎをしていた時に出くわした今大会優勝者のマサチカと言うプレイヤーにあっさりと倒されて敗退となった。
マサチカは、白色の長い髪を後ろで束ね着流しを纏った見た目のおじいさんだったが、どことなく雰囲気がライラさんに通じるモノが有り一目で実力者と分かった。
予選が終わり本戦が始まるとあっという間に優勝を掻っ攫いあの出来事が起こったのだ。
表彰後に開催されたエキシビジョンマッチで優勝者のマサチカとライラさんが戦うことになった。
仰々しく紹介されライラさんが闘技場の中に現れると客席から盛大な歓声が上がり周りを見渡すとNPCと思われる人たちがライラコールを始める。
ここでは如何やらライラさんはかなりの人気者の様で中々静まらない会場をライラさん自ら一喝して観客を黙らせるとマサチカに向き直って
「そろそろ始めようか、あんたなら本気を出しても大丈夫そうだ」
今までで見た中でとびっきりの獰猛な笑顔でそう呟いた。
客席から見ていても逃げ出したくなるほどのその笑顔にゾクゾクしながら開始の合図を待つ。
「始め!」
合図とともに駆け出した両者はこの距離だからある程度、動きが把握できるが実際の間合いでは何をされているか認識することは出来なかったと思う。
お互いが繰り出す必殺の一撃を紙一重で躱し切り結ぶ、それはまるで演武の様で思わず見惚れていた。
それから一時間お互い致命傷を受けることなく、お互いの武器に設定していた耐久値が無くなり引き分けでエキシビジョンマッチは幕を閉じた。
固い握手を交わし再戦約束をするとそれまで静まり返っていた客席から割れんばかりの拍手が2人を包んだ。
そんな会場を見つめながら僕は、1人違うことを考えていた。
なぜなぜライラさんのあの笑顔を引き出したのが僕じゃないんだ
なぜあそこに立っているのが僕じゃないんだ
なぜ予選の時に同士討ちに持って行かなかったんだ
そうすればこんな試合観なくて済んだのに
なぜ…
なぜ…………
なぜ……………
……ナゼオレハ、コンナニ………ヨワイ…。
生まれて初めて身を焦がすほどの嫉妬に耐えられなくなりその日はそのままログアウトした。
不思議とログアウトすると先ほどまでの感情が嘘のように鎮まった。
それからログインするまでに3日かかった。
ログインするとまたあの感情に支配されそうな気がしたからだ。
ようやく気持ちに整理を付けてログインすると例えようのないイライラが心の中でくすぶっている様な感覚を憶えた。
門を抜けて新しいエリアに行って心を落ち着けようと渡ってみたがどうにも収まらず当たり散らすようにモンスターを狩っていく。
この周辺には、反対側と同じようにリザードマンが多く生息しているようだが、若干色が濃かったり黄色など他の色の個体が居るようだ。
最大の違いは大きな個体と取り巻きというグループで行動するといったところか、あちらでは基本的にソロで徘徊していたのでいいカモだったのだが、こちらでは戦い方を改める必要があった。
そして色違いの奴らがそれに輪をかけて面倒なものにしてくれた。
黄色はマヒ、ピンクはチャームの状態異常の発生する毒を吐きかけてくるのだ。
マヒは毒液の掛かったところから広がるような形で徐々に弱まっていくが動きをかなり阻害してくる。
一度左足に毒を受けてまったく動かない様になってしまい何とか動く右足のみで戦う羽目になってしまった。
チャームは…ヤバかった。
ソロなので味方に攻撃すると言った事には成らなかったが、受けた直後軽く酔ったような感覚になりリザードマンが可愛く見えるのだ。
更にリザードマンが敵の認識しているモノに対して攻撃意識が向いてしまうので結果として自分を殴って正気に戻ると言った具合だった。
これが素手だったから致命傷にならなかったが、万が一武器を持っていたりしたらソロプレイヤーがチャームにより切腹みたいなことになりかねないと思う。
そんな感じに当てもなく1時間ほど進んだ頃、気が付くと明かりとなるはずの月が隠れてたのか、完全な闇が見渡す限り広がり自分が今立っているのかさえも認識できない真っ暗な空間に居た。
「ねぇ何をそんなにイライラしてるの?」
何処からともなくそんな声が聞こえた気がしたので慌てて辺りを見回す。
くすくすくす!あはははっ!
今度ははっきりと聞こえたが、誰もいない。
「こっちたよこっち」
気が付くと頭の上に何かが乗っている感覚が有ったのでそれを掴むために手を伸ばす。
「あ!ちょっ待ってたら!
こら、レディーの体にそんなに気安く触らないで。
あぁぁ!もう、羽が傷ついたらどうするの!」
掴んだ何かを目の前に持ってくるとそこには小さな妖精がいた。
手の中から顔を出して取りあえず手を開くように言われたので手のひらを上に向けて広げた。
ちょこんと手の平に立った妖精は淡く緑色に光っていて真っ暗な空間にそこだけ明かりが灯ったようだった。
着ていた服のしわを伸ばしこちらに振り返った妖精は先ほどの扱いについて懇々と説教を始めた。
10分ほど謝り倒して何とか落ち着いた妖精に聞かれるまま武闘祭であったことを話した。
「なるほどね。
じゃあ、あんたは強くなるしかないわけね」
「そういうことになるのかな?」
「なに?煮え切らない反応ね。
まぁいいわ、付いて来てあたしがあんたを強くしてやるからさ」
「え?ちょっと待って」
妖精はそう言って手のひらから飛び立つと何処かへと飛んでいこうとするので慌てて付いて行く
「遅い遅い、置いていくわよ」
遠ざかる光を追いかけて走ったが、相手は飛んでいるのにこっちは走っているので凸凹とした地面に足を取られ突然現れる木々にぶつかりそうになりながらも何とか追いかけた。
ようやく止まったので追いつくと先ほどまでが嘘のように鮮やかな場所へと到着した。
そこは、大きな樹を中心に広場のようになっていて周りの木々の枝の根元などに小さな家が建っていた。
「ようこそあたしの村ミニッティアへ」
村の光景に見とれているといつの間にか村人たちが集まっていた。
大きくても10cmほどしかない小人や妖精たちがこちらを伺うように取り囲んでいた。
人間だ。
人間は何しに来た?
俺たちを捕まえに来たのか?
それなら結界が守ってくれるはず。
じゃ何しに来た?
わからない。
見ろよあの頭。
もじゃもじゃだ。
モジャモジャ。
……モジャモジャーー!!!
何かぶつぶつと呟き合ってるかと思うと突然もじゃもじゃと言いながら体を上ってくる。
え?えぇぇ?
肩まで登って来た彼らはそのままアフロヘヤーにダイブしていく。
彼らは何が気に入ったのかアフロの頭から顔だけを出して楽しそうに笑いだした。
飛べる子たちは上空からそのままダイブしてアフロのクッションに突っ込んだ。
なんだこれ?
一応村に受け要られたってことでいいのかな?
助けを求めるようにここに連れてきた妖精にを見るとお腹を抱えて笑っていた。
10人くらいが代わる代わる頭の上ではしゃいでいるし順番待ちの小人たちが肩の上で遊びだすともう収拾が付く気がしなかった。
彼らが飽きるまで近くの気に背中を預けながらぼうっと眺めていた。




