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握力特化のバカが行く  作者: 溶ける男


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第1話 グミ

お久しぶりです&初めまして。

ここのところ読み専に戻りつつあったのですが、ちょっと妄想が膨らんできたので書いてみました。

更新は不定期になるとは思いますが、お付き合いいただけると幸いです。

一般家庭向けにVR機器が発売されてより十数年が経ち、遂にゲーマーたちの夢であった全感覚をVR空間内で完全再現可能で安全なVR機器「レイス」が誕生した。

レイスの発売と共に、世に出ることとなったレイス専用VRMMORPG「クロスティア」は、レイスの機能を余すことなく発揮し、まさに異世界での冒険から生活まで、まるで本物の様に体験できると言うことで爆発的に話題になった。


クロスティアは、ファンタジーを基礎とした世界観で様々なスキルを育てながら冒険をしたり、生産活動をしたりと限り無い自由度を持っていて、さらにはAIにおいてもNPC一人一人に実は社員が動かしてますと言われた方がしっくりくるくらいのレベルのモノが搭載されていた。


このゲームを始めると先ずは、アバターの容姿を決めた後メインスキル1つとサブスキル5つを選ぶこととなる。

メインスキルは、変更することが出来ない代わりに設定したスキルの効果と成長率にボーナスが発生するようになっており、メインで使う予定のスキルをこれに割り当てて残りの部分をサブスキルで補うと言う形でが一般的だ。

サブスキルの枠は、最初は5つだがクエストなどをクリアすることで増えて行くようだ。


クロスティアの正式サービスが始まって2ヶ月ようやく新規登録制限が解除されたその日、中塚ツカムは情報サイトのアバター作成時の取得可能スキル欄を睨みながら自分のプレイスタイルを妄想していた。

2ヶ月と言うハンデを覆すほどのプレイスキルを持っているわけもなく、だからと言ってテンプレ的なスキル構成にして無難にプレイするのも面白くないと「うんうん」うなりながら画面をスクロールしているとそれを見つけた。


≪握力強化≫だ。

このスキルは、所謂補助スキルで武器や盾に強力な攻撃が当たっても装備を落としにくくなったり、≪登攀≫などの握力が関係するスキル行動を補助したりする程度のスキルであり別になくても使用するスキルレベルが上昇することで同じように補助されるため不要なスキルだとそのサイトには書いてあった。


このスキルを見付けた彼の頭の中に、「すべてのモンスターをアイアンクローで倒したい」と言う壮大な夢?が広がった。


そうして目標の決まったツカムは、早速ログインを済ませてアバター作成に取り掛かった。

容姿に関しては、自分の体をもとに髪の色を黄色に近い茶色にしてアフロにした。

そしてスキルを選んだ結果がこれだ。


名前:ニギル

メインスキル

≪握力強化Lv1≫

サブスキル

≪格闘Lv1≫≪素手強化Lv1≫≪身体強化Lv1≫≪登攀Lv1≫≪運搬Lv1≫


格闘は、手や足を使って攻撃する時に補助が入ったり専用の技が出せるようになるそうだ。

素手強化は、素手での攻撃の際にプラス効果を発揮するが武器を装備するとマイナス効果が発生すると言う情報サイト曰く微妙なスキルらしいがリスクが有る分からこそ効果も高いと思う。

身体強化は、効果が力や丈夫さなどを全体的に底上げしてくれるのだが、特化型の力強化などと比べると劣ると言うことで此方も微妙なスキルとして紹介してあった。

後の2つは、握力が関係してそうな補助スキルだ。


「これでよしっと」


完成したアバター自分を見下ろしながら、手をグーパーして感触を確認した後、メニューを呼び出しアバター決定のボタンを押して、遂にクロスティアへと旅立った。


一瞬の浮遊感が終わり目の前には中世ヨーロッパ風の街並みが広がり、後ろにはこの町のシンボルの浮遊する石で出来たモニュメント、そして同じようにログインしてきたプレイヤーたちが、看板に冒険者ギルドと大きく書かれた建物へと向かっていくので取りあえず付いて行ってみると、入り口付近にプレイヤーが僕らを歓迎する様に立っていて、入学式の大学や高校みたいに自分のクランへの呼び込みが行われていた。

因みにクランと言うのは、同じ目的を持つプレイヤーなんかのクラブとかサークルみたいなものだ。

今のところ入る予定も、入れてくれるような変わったところもないだろう。


このままじゃ登録するのも一苦労だと思い、落ち着くまで町の外にでも行ってみようと流れから脱出し門を目指して歩き出した。


歩くこと数分、ようやく門を抜けて草原が広がるフィールドに到着した。

ここもやっぱりお祭り騒ぎで、ポップしたモンスターを争うようにプレイヤーが倒している。

ポップするモンスターは、大ネズミとグミだ。

どちらも20cmくらいの大きさで、大きなネズミと楕円形のグミの様な半透明の生き物が草むらから出てきていた。

大ネズミは人気なのか、沸いたらすぐ倒されているが、グミは2,3匹ほどピョンピョン飛び跳ねているのを見つけた。


取りあえず誰も相手をしていないグミを右手で1匹掴み上げてグッと力を込めて握り込んでみたが、グニッという感触とともに指の間から変形したグミが逃げようともがいていた。

今の一撃でダメージはほぼ0と言っていいくらいでグミは元気にもがいている。


右手でグミを揉みながら、左手用のグミを確保して門の近くの壁に背中を預けて座り込み、交互にグミをニギニギしながら≪握力強化≫のレベリングを開始する。

時折変なものを見るような目で見られるが、こっちの事なんて気にしてるからネズミにつま先を齧られてる。


それから10分ほどグミを握りながら他のプレイヤーを観察したところ分かったことは、このグミと言うモンスターは最序盤のモンスターなのに打撃耐性と斬撃による分裂と言う特性を持っているようなのだ。

剣を持ったプレイヤーがグミを斬り付けると最大で4つまで別れるのだ。

4分の1サイズまで小さくなると、素早さが上がる代わりに斬られると死んでしまうようだが通常サイズの2倍くらい早くなっていた。

打撃耐性に至っては、衝撃がほぼ吸収されるのかダメージがほとんど無い。

その代り、魔法耐性は低いのかどの属性でも一番弱い魔法で一撃だった。

そして手の中の2匹は、まだまだ元気にもがいている。

HPも20%くらいしか減らせていないので、あと40分はニギニギしないと倒せそうもない。


それからしばらくして、グミたちのHPが30%を切ったころ如何やら観念したのかもがくのをやめて、グミの表面から液体が出だした。

無駄にリアルだなと思いながら更に、握っていると手の平にチリチリと痺れるような痛みを感じて見てみると、液体に触れた皮膚が赤く変色していた。

自分のHPも5%くらい減っている。

この液体、グミの冷や汗かと思ったら消化液か何かか?

今手を離せば、この攻撃から逃げられるけど、グミに負けたことになる。


…こうなったら、耐久チキンレースの始まりだ。

どっちのHPが先に無くなるか勝負だグミよ!


一心不乱にグミをニギニギしていると急に体に力が入らなくなった。

各種メーターを確認する

HPはまだある。

MPも大丈夫。

SPは、…無くなってる。

と言うことは、…スタミナ切れだ!


朦朧とする体に鞭打ってそれでもグミを握り込むが、とうとうグミより先にこちらのHPが無くなってしまい僕の体は、壁に背を預けたままパリンとポリゴン片になり砕けた。


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