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 それからも、リイリと会話が噛み合わないことが続いた。

 半妖精ってこんなもの?それとも、リイリがおかしいの?

 誰にも相談できなくて、私はまた部屋に籠り勝ちの生活になってしまった。


「ちっす。イルザ、最近元気ないってあいつが心配してたぜ。なにかあったのか?」

「……ジャン、そんなことの為にうちまで来たの?」


 今はなるべく人に会いたくなかったのに、ジャンが心配してくれてれいるのは分かっているのだけど、迷惑だ。そういう風に思ってしまっている自分も嫌いだ。


「そんなことってなんだよ。ここの所リイリにも会いに行ってないんだろう?」

「リイリちゃん、何か言ってたの?」

「いや。リイリの奴、お前の事忘れかけてるよ。だから、しばらく顔見せてないんだなって」


 さも当たり前のようにジャンは言った。リイリが色んなことを忘れていくのはここでは普通の事みたい。


「リイリちゃんは何で忘れちゃうの?半妖精は皆そうなの?それともリイリちゃんだけ?」


 リイリの記憶が抜け落ちていくことを普通と思いたくなかった。当たり前と認識したくなかった。

 ジャンはうーん、と頭を掻くと困ったように言葉を紡いでいく。


「半妖精だからそうなのか、リイリが特殊かなんてわからないけど、色んなことを忘れていったって中身はそのまま変わらないぞ。俺がガキの頃からリイリはあの姿で、あの性格で、ずっとあそこで暮らしていた。リイリはリイリだ。それじゃあダメなのか?」

「駄目とか、駄目じゃないとか、そんな話じゃないのよ。でも、そうだよね。リイリちゃんはリイリちゃんだもの」


 あの日、久々に笑って色んな物を受け入れるようになった時から、リイリは時間が止まったように変わってないのだろう。変わらないなら、あのお日様のような眩しい笑顔が消えることはない。もし、リイリの中で何かが変わり悩み苦しんだ時は私が力になってあげればいい。その時まで見守っていよう。


「ありがとう、ジャン。ウジウジ考えていたら益々リイリちゃんに忘れられちゃうよね」



 ジャンにお礼を言うと私は妖精の家まで駆けだしていった。すぐに会いに行かないといけない衝動に駆られていた。リイリは覚えていないかもしれないが謝らないと。


「……こんにちは、イルザさん」


 鐘を鳴らすといつもはリイリが出迎えてくれた。けれど、今日は妖精さん、エナが出てきた。エナは作ったような小さい笑みを浮かべている。前の村の妖精さんとは違い穏やかでふんわりした空気を纏っていると同時に、前の村の妖精さんと同じような底知れない恐怖も感じる。どこにいたって私にとって妖精は苦手な生き物のようだ。


「こんにちは。ちょっとリイリちゃんとお話がしたいのだけど、呼んでもらってもいいですか?」


 エナと話すのは初めて会った時以来だ。緊張で手が汗で湿ってくる。


「……あの子、今お昼寝しているの。悪いけど、また出直してもらえるかしら?」

「昼寝…?そう、ですか」


 現在の時刻は14時過ぎ位。普段はお昼寝なんかしていないみたいだし、この時間には毎回会えている。胸の奥で引っかかる感じ。


「あの。リイリちゃん、体調悪いんですか?」

「……そうね。そんな感じかしら」


 半妖精と言えども人間だ。病気にだってなるよね。でも、まだ何か引っかかる。なんだろう?

 リイリに会えなかったから気持ちが焦っているだけかもしれない。ただの気のせいだと自分に言い聞かせて、一言お大事にくらい声を掛けて帰ろうとした。


「…貴方がリイリに余計な事を吹き込むから、こうなったのよ」


 エナは低い声でそう呟いた。張り付いていた笑みも消え、冷たい視線が私を刺す。


「…リイリは覚えていられないことが苦痛だったみたい。貴方のせいよ。これだから人間って嫌い。私のリイリを壊そうとするもの」

「妖精、さん…?」

「時間をかければリイリは元通りになるわ。でも、何度も続くようならどうなるのか私にだってわからない。次に変なことをしたら、私は貴方を許さないわ」


 ニッコリと微笑んで見せるとエナは音もたてず奥の部屋へと帰っていった。

 先程の作り物のものと違い血の通ったような綺麗な笑みだったが、とてつもなく恐ろしかった。




「あさおきてからエナねえさんがみあたらないのです。イルザさんはなにかしりませんか?」


 あれから何十年も経って、妖精さんがいなくなったと聞いた時、私は心配よりも安堵の方が先に出た。得体の知れない化け物が、やっとこの村からいなくなったのだと思ったのだ。

 だが、妖精がいない村は人が離れていくもの。私が生まれ育った村のように。


「きっとどこかおさんぽにいっているのでしょう。わたしひとりでもおくすり、つくれますから、だいじょうぶですよ」


 えへへ、と昔と変わらない太陽のような笑顔でリイリは笑う。

 見た目も全く変化がないように見え、リイリだけがこの世界から取り残されているように感じ悲しくなる。


「わたし、こうみえてもりっぱなレディですから。エナねえさんがいなくても、リイリはがんばりますよ!」

イルザさんからみたリイリの話でした。

ゾッとするような話を書きたかったのですが上手くいきませんね。

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