調査開始Ⅰ
ふぅ、もうどっかに行ってくれたみたいだ。
あ、後で花楓が本部と問い合わせたところ、対大陸級のあいつ等は、別件で通り掛かっただけだそうだ。
良かったー
通常は連盟が必要性感じた場合、複数の聖者を現場へ向かわせるし、その事を連盟は本人達に通達するはずだ。
花楓からも何の連絡は無かったので、間違いない。他の聖者と協力って事は無さそうだ。これは俺一人に任された事案だ。前の事件に比べれば大した事無いけど、任された以上きっちり解決しますか。
それにしても五帝聖が偶然ここに通り掛かったという事はこの事件は思ってる以上に厄介に違いない。
余談だが、五帝聖を俺が徹底的にディスるには理由がある。俺は奴等の所為で一度トラウマレベルの被害に遭った。危険を引き起こした張本人は俺が居た事知らなかっただろうけど。
噂では五帝聖は危険な事態を発生させやすい体質(?)をもつらしい。その影響か、五帝聖の管轄と被ったせいで、巻き添え食らって殉教した聖者もいたとか。故に、『災厄発生機』、『危険の前兆』、『殉教通知人』なんて有難くない別称があったりする。連盟の監視リスト上位に入る主な理由はその体質が原因と俺は睨んでたりする。
とはいえ、奴等に関する噂には誇張されている節が見受けられるし、俺も被害に遭ったのはたったの1回なので、あえて「らしい」という事にしておいた。
さて、調査開始…なんだが、今回も伝えられるべき内容が端折られすぎた所為で、行き先が実質一つに限られる。警察署だ。
まあ、端折るのはわざとだろうな。そうやって聖者達を警察と協力するという選択肢へと追い遣る事で連盟は警察組織と協力したという実績を手に入れ、逆に警察組織は手柄を譲って貰うことで申し訳程度の面子を保つ事ができるという仕組みだ。まあ解決したら大金貰えるからそういうのはどうでもいいけどね。
「…取り敢えず警察署に行きましょう。案内します」
「ああ、監視役なのに案内役も勤めてくれて助かるよ」
「いえ、湯川所長の方向音痴の所為で日が暮れてしまってもおかしくないので、必然的に私が案内する必要性があるだけです」
「た、単に遠回りするのが好きなだけだから(震え声)」
「へえ、以前連盟本部にお越し頂いた時は指定時刻を4時間も過ぎてから来たそうじゃないですか。しかもその時間帯に何度も連盟本部の周りを通っていた様子を外部に設置されたカメラがバッチリと録りおさえていますが」
「いや、その、あれだ。周辺の景色が綺麗だなって…」
「もう言い訳はいいですから早く行きましょう」
うっ、やけに不機嫌だな。やっぱり我慢させたせいかな?だとしたら申し訳無いな。
「花楓、警察署で話聞いた後、何処かで昼食摂りたいけど、良い場所知らないかい?俺が奢ってやるから」
「え、いいんですか?じゃあ、前から行きたい場所があるんですけど、そこで構いませんか?」
「君がそう言うって事はそれなりに期待出来そうだ。そこで構わないよ」
「やったー!」
すっかり上機嫌だな。現金な奴め。喜ぶ姿は微笑ましくも可愛いからいいけどね。