三幕~未来と人生の分岐点! の巻っき!~
丸い満月が鬼瓦市全体を淡く染め上げ、週末を迎える駅前の繁華街は賑わいを見せている。その喧騒の中を黒いコートのポケットに両手を突っ込み足早に歩く冬彦は繁華街を抜け細い路地から役所通りに入る。鬼瓦警察と消防署の先を抜け、図書館の隣に市民映画館がある。その映画館内に足を踏み入れた。テンプレ学園では横山優斗の死亡はステージ上のセットの倒壊による死亡事故として扱われた。すでに優斗の葬儀はしめやかに行われ、その悲しみが怒りにしか変換できない自分の弱さに心を潰されそうになりながら文化祭からの日々を過ごした。
今現在、ノンはまだいるかもしれない人魔旅団を捜すと言ったまま数日外出している。静まり返る映画館の入口で携帯を出し、メールの受信欄を確認する。
(鬼瓦楓……一体俺とノンちゃんの何を知っている。そして優斗の死の真相って何だ?)
メールの差出人の楓からの伝言は一人で鬼瓦市民映画館のロビーに来る事だった。
用件は平次の十手と死亡した横山優斗の件。そして、矢田ノンについて――。
この文面を読んだ以上、たとえそれが罠であっても一人で行くしかない。
すでに壊れた平次の十手の情報と死んだ優斗の死の真相。そしてノンという少女の本当の姿を聞く為に。
(十手が無い以上、俺は戦闘になれば何も出来ない。だが、ここで引くわけにはいかない。この話はノンちゃんを交えては話せない。さて、進むか……)
変身の要である平次の十手が無い以上、冬彦はもう正邪純装は出来ない。だが、十手の力が無くても一死報いてやる覚悟で深夜の街を歩き鬼瓦市民映画館に到着した。寒気がする薄暗い入り口を抜けると、明かりが灯るロビーが広がる。その受付カウンターの少し横の自販の並びに水色のジャケットを着た一人の髪の長い女がいる。表情を変えない冬彦はうんこすわりをしながらガチャガチャを回す黒髪の女のつぶやきを聞いた。
「やっと……出た」
カプセルを開ける楓は白銀の輝きを放つ柄にピンクの房が付いた十手を見てうっとりした。その艶めいた姿に女を感じてしまいながらも警戒心を解かずに、
「深夜の市民映画館を貸しきりに出来る権力があるとはな。ここのオーナーはお前か?」
「そうでもあるし、そうでもない。そんな話をしに来たわけじゃないでしょ? 早く席につきなさい」
促されるまま冬彦は席まで歩いていき丁度中央にあたる席についた。もし刺客がいるならどこに座っても同じだろうと考え、堂々と周囲を囲まれる真ん中に座る。後に続く楓はその冬彦の隣に座ると、場内は暗転し映写幕が左右に開き映像が流れ始める。江戸時代と見られる昔の日本の映像が流れ始めるが冬彦は隣に座る女の横顔に異性としての存在を意識せざるを得なかった。甘い香りが漂う女の横顔は大人そのものでいつも学園で見ている楓ではなかった。その楓は冬彦の左手に触れ、首筋を覗き込んでくる行為に息を呑んだ。
「平次の十手が壊れたわね。全ての力に覚醒した以上、江戸時代から伝わる古びた十手じゃ力に耐え切れず壊れてしまう。今の貴方の力を最大限に生かすには父親の京介の十手以外ありえない」
「それはこの前の戦いでヒロースという奴から聞いたさ。お前が人魔旅団の仲間じゃないというのは本当のようだな。奴等の仲間なら俺を殺す最高のチャンスだからな」
「わかってくれたようね」
左手に触れる柔らかな手は優しく冬彦の手をなでる。
「マヒルートが俺の親父が使ってた京介の十手を封印するケイジカプセルに隠したからあそこまでしてガチャをしてたのか。誰でも買う事が出来るガチャのカプセルの中に隠したとなればああも必死になる」
楓はノンが冬彦の前に現れる一週間前。
国会議事堂の一部が崩壊した日から異様にガチャに執着するようになった。
その真意がわかった冬彦は江戸時代に活躍する銭形平次の映像に見入る。
「……国会議事堂が誰かの暴動により一部崩壊した。そんな大事件が起こっても今まで地球のどこでもそんなニュースはなかった。地球の世界連合政府はどうなってる? これも人魔旅団のアジトを壊滅させ、国会を襲撃した人間が関わってるのか?」
「議事堂が襲撃された以上、政府が動くのは当然。でも動かなかったのは私が止めていたからよ」
「お前が止めていただと……? お前は一体……」
「私はノンと同じ十年後の未来から来た鬼瓦楓。地球の全てを統括する世界連合の影の最高司令官よ」
その女、鬼瓦楓はテンプレ学園の教師というのは表の顔で、裏では世界連合の総帥を操る影の最高司令官だった。ノンと同じく十年後の未来より禁忌の桜吹雪の力を使い現れ、ノンが過去の冬彦を殺さないようにノンより過去に飛んで地球連合に干渉し、そこで地位を得ながらまだ幼い冬彦の監視をしていたという。未来では十手の力を使い地球の覇者を目指す冬彦の秘書官だったようで、心身共に支える恋人でもあったのを告白した。驚く冬彦は身体の血液が沸騰するように興奮し、全身の毛穴から汗が吹き出た。
(だから俺はいつもこの女が関わる出来事で感情がかき乱らせてたのか。他の奴なら冷静に接しても、この女だけは何故か自分を抑える事ができなかった)
未来の恋人と触れ合う手は熱くなり、恥ずかしさと緊張でおかしくなりそうだがその手を振りほどく事は出来なかった。自分の胸の奥の気持ちに気がついてしまったからである。
「……未来から十年前ならお前もノンちゃんも生まれてる。桜吹雪の呪いの第一段階は自分の家系から消えると聞いたが?」
「そう、すでに現代に私達は存在しない。私達は親がわかるけど、親が生む子供は私とノンにはならない。それが桜吹雪の呪いの一つ」
「人としての道を外し過ぎだ。復讐と保護。未来の俺がお前達の人生を狂わせたのか?」
「未来の貴方は過去に向かうノンに実の妹のように接していた心の隙を突かれ、次元の狭間に落とされそうになり力の大半を失って過去に渡るだけの力が無くなった。それで過去へ渡る力を唯一宿す私は禁忌の桜吹雪を使って一人追撃をした」
「やはりノンちゃんは未来で俺と十手の開発をしていた矢田という男の娘というのも正しい情報だったんだな。その関係の中で俺は実の妹のように接していた。そしてノンちゃんの父親の矢田十史朗を殺した」
「では話してあげましょう。ノンの父親の十史朗の死の真相と、貴方の父親である銭形京介が引き起こした人類始末屋家業。通称、人魔戦争の真実を」
その楓の微笑が冬彦の心の壁を壊し、二人は映像で京介が暴れて爆発を起こす国会議事堂など気にもならないように二人の世界に堕ちていった。
人魔戦争に関しての真実は、世界連合のコンピューターをハッキングしたヒロースから聞いた情報と同じだった。それについては楓があえてリークさせた情報だという。人魔旅団と冬彦の対立を煽らせ、手紙まで仕込んで両者を戦わせ十手の力に覚醒させた。何事にも犠牲はつきものだという楓の考えは、自分の背中にある桜吹雪に象徴される。そして銭形京介が断罪された後に今までの全ての記憶を書き換えられた冬彦は監視され成長した。
しかし、時が経つにつれて過去の過ちを忘れ暴走するかすかに残る銭形の血筋の生き残りを利用して覇権争いなどが発生した。それは世界連合要人の暗殺にまで発展し、また戦争かと思われるほどの状態になったが、単純に報復に出るよりも身を守る為の道具が必要と成長し未来の世界連合で働く冬彦は世界連合幹部に解く。冬彦は苦心の末、ノンの父親の矢田十史朗と共に普通の人間でも扱える普人十手を開発する。矢田はその後、普人十手を悪行として扱える人間を集め徒党を組みだし、メビウスを名乗る。メビウスは急速に発展し地球全土を脅かす勢力に変わりつつあった。そこで冬彦は世界連合の一員として、そして普人十手開発者として立ち上がり江戸前仕置人を設立。
絶対的な力の正義をかざし、それは粛清される側には一切の容赦が無く、まるで銭形京介のような邪悪の象徴として扱われた。
世界連合は父親を殺された銭形の血筋であるノンの行動に気がつき、冬彦のガードマンとして恋人の鬼瓦楓を使い監視させた。そしてこの三人の歯車が狂々と廻り出した――。
映像は文化祭で行われていた江戸前仕置人うんがら仮面に切り替わっており、あの文化祭の夜に殺されていたうんがら仮面の企画発起人である横山優斗を思い出す。その死の真相は楓にも人魔旅団にも聞いてはいない。これは自分が犯人だと思う人間に自分から聞かなければならないという決意があった。カルピスの入ったカップを一口飲んで口を潤すがまるで渇きが消えない身体を責めるように一気に飲み干した。
「……そうか。ノンちゃんも薄いが銭形の血筋なのか。一つ気になっていたんだが、何故ノンちゃんは変身する時にうんがらげっちょにこだわるんだ? あれは正式には正邪純装だろ?」
「うんがらげっちょは未来のうんがら仮面の掛け声よ。同時に未来の貴方の技でありそして、ノンの父を殺した技」
「未来の貴方の表の顔は江戸前仕置人というヒーローだったの。街で反乱を起こすメビウスを退治する銭形平次のような謎の江戸前仮面ヒーロー」
「それでノンちゃんは戦隊物にこだわっていたのか。まさか……優斗は未来の……」
「そう、優斗は未来のうんがら仮面の監督よ。私もレッドとして活躍してたけどね」
未来の表のヒーローである江戸前仮面――。
それをうんがら仮面として子供から大人までが楽しめる映像特撮作品として企画、構成をしその映像化を優斗がしていた。しかし、未来におけるうんがら仮面は優斗が死んでしまった為に今の歴史のままでは放送される事も無い。
「そうか。それと、ノンちゃんを止めたいだけなら何で同じ時代にワープしなかった? 俺を監視して保護するなら同じ時間に現れ戦って始末した方が早いはず。それに、早く俺に十手を渡して強化しておけば対策は立てられたはずだ」
「ノンが持っていた平次の十手は銭形一族の家宝。まだ子供の貴方のオーラが発現させるには本物の銭形の血筋によるオーラの洗礼が必要だったの」
未来から現れたノンを止めると同時にそのノンからオーラを注ぎ込まれ渡された平次の十手で自身の力に目覚めさせる。早い段階から正邪純装に覚醒させ江戸前仕置人に対抗する勢力が出ないように抑制する為であった。未来で優位に立つには資産や権力以上に十手の力が必須条件である。
「……それでノンよりも過去に運よくワープしてテンプレ学園で待ち構えたのよ」
「ノンちゃんがすぐに俺を殺さないのはよくわかったな。どこで気がついた?」
「それは議事堂に現れた時によ。議事堂を破壊し、人間である人魔旅団を魔族の姿に変えさせたさせた以上体力は残っていない。桜吹雪の呪いの副作用もあるしね。その時思ったのよ。あの女は左冬彦と関わり成長させその力を利用して自分の力を回復し、最後に裏切るはずだと」
「ノンちゃんが……そんな事を」
「簡単に人間を魔族の姿に変えて、それを利用して目標を成長させる殺人者よ。どこまでも冷酷で残虐なのは明白」
深淵の闇を宿した瞳で言う楓に身震いをする。文化祭で撮影されたうんがら仮面は終盤になり、もう帰れない日々に冬彦は小さく溜息をついた。この文化祭までの日々で築き上げたクラスメイトとの関係も戦乱に突入する以上全て終わる。これからは未来の自分と同じように江戸前仕置人として生きるしか選択肢は無い。楓はまだはっきりとそれを言わないが、ノンとの決着をつける為にも江戸前仕置人に入るのは必須である。それをしなければ待っているのは死以外には無い。
「ノンは貴方が覚醒をした以上、すぐにでも帰還用のゲートを貴方の命を使って開き未来に帰りたいはず。でも帰るには京介の十手が無い以上、帰還用の桜脈のエネルギーが流れるゲートを探さなければならない。それは私達、江戸前仕置人のアジトである国会議事堂の最下層にある」
「そこにおびきよせてノンちゃんを殺せというわけか」
楓は表情を変えずにただ頷く。
「お前達は未来の俺を利用する為に来たのか……十手の力を人間に広め、人類史上最悪と呼ばれる銭形の力を利用しに」
「……全てを知って嫌になった? でも、もう逃げ道は無いわよ。死ぬ以外にはね」
「その未来しかないならば、受け入れてやるさ。俺の頭に復讐と言う二文字があったのは事実だからな」
グッ……と右手を握り全身からオーラを意識的に噴出させエンドロールが流れる映像に見入る。流れるピアノの旋律が心の奥を駆け巡り、今度は冬彦の左手が楓の右手の上に重なった。
「正邪純装の力で俺は……?」
その瞬間、楓の胸が発光する。痛みを伴う光に驚きながら破れたYシャツの胸ポケットにある教鞭型の十手が破損していた。火傷をする白い胸に戸惑いながらもハンカチを出す冬彦に楓は、
「……そうか。未来で貴方が今まで開発した十手を全て破壊できたのはそういう事ね」
ふと、楓は未来で冬彦が人類に出回った普人十手が大量に破壊された事を思い出す。
それは正邪純装と冬彦がオーラを込めて言うと、十手のプログラムを破壊できる装置だった。そのプログラムを開発中に仕込んでいた為、敵対する場合は簡単に相手の十手を破壊して無力化できた。それを知った二人は、今までノンが言っていた為にノンの十手には効かない手段だとも思った。そして現代の十手にも通用しない。軽い火傷ですんだ楓に冬彦は話す。
「先生は何故、未来から来たのに俺をすぐに変えようとしなかった? 十手は無理でも他の事は出来たはずだ」
「私も過去を変えて、未来を変えるためだけに来たのに、いつの間にかこの時代の人間と仲良くなりすぎた。未来の人間達より、暖かい人達に触れあう中で私はこの時代を変える事なんて出来なくなっていた。この時代の人達を、裏切るのは無理になってたのよ。愛してしまったから」
その言葉を聞いて、楓の心の旋律が聞こえたような気持ちになり気分が安らいだ。
「すでにこの地球上でも銭形の隠れた血筋による争いの火種はあり、このままいけば近い未来に戦争は免れない。もしこの戦いに感づいて十手の力を模倣したマジックロッドを手にした者が覚醒した場合、その火種は三ヶ月もすればこの地球全体にも広まるでしょう。すでに世界各国は普人十手の存在を関知し、日本に対して早急に生産を求めているから」
「……」
「後は貴方自身が考えなさい。戦うも何もせずいるのも自分で決めなさい。どちらにせよ、ノンは未来に帰るうえで貴方を殺しに来る。タイムリミットは後、一週間」
するとエンドロールも終わり、映写幕が閉じ始める。映画の終わりと共に今までの日々が走馬灯のように駆け巡りうつむく。
「要するに、後一週間でノンちゃんをどうにかしないと俺は死ぬ。だが、一週間あれば全ては終わっているさ。俺にはこの親父の……京介の十手があるからな」
楓から渡されたペンダントサイズになる京介の十手にオーラを注ぎ込み実寸大まで具現化させる。マヒルートがノンから守った十手は新品同様で、桜色の柄の房が美しい。
火・水・風・木・金・土・雷――。
その自然の力を使いこなせる京介の十手は平次の十手よりも強力だ。
大きな力の源を手にしながらも震える冬彦の左手は楓の細い手に重ねる。
「……」
「未来に俺がノンちゃんの父親を殺したのは事実だろう……けど、過去に戻ってまで世界を変えるのは許されない。この現代にも一生懸命生きている人がいるんだ。どんな悲しみだろうが、それだけは許されない……争いの全ては、俺の全てでもって終わらせる。全ては俺にひざまずき、全てを俺が終わらせるんだ」
楓の右手を掴む左手は強く、強く右手にある京介の十手よりも強く握られていた。
その覚悟とは裏腹に、冬彦の無様な涙は流れ続けた――。
※
数日後。冬彦とノンは自宅近隣に出没する人魔旅団の追跡をしていた。
一瞬姿を現したかと思ったらすぐにどこかに消える敵の捜索に悪戦苦闘している。
冬彦は楓からもらった京介の十手を持っていた。何故所持しているかは十手はヒロースがノンが到着する前に在り処を吐いていた事にして嘘をついた。
丸一日かけての捜索にノンの顔にも疲労が目立ち始め、言葉数が少なくなる。
二人は夕食がてらカレー屋に入り食事を取っていた。
その最中、あまり疲れを見せない冬彦はふと呟く。
「このカレーはあまり旨くないな。ノンちゃんと出会ってから外食よりもノンちゃんの手料理に慣れたから味覚が変わってしまった」
「いい事です。いいものを食べないと元気が出ないですから」
「そうだな。また自宅でゆっくり食事をしたいものだ」
「そう……ですね。帰ったらノンがカレーを作ってあげますです! カレーは二日目がおいしいですからたくさん作りますね!」
「あぁ、頼むよ」
その会話をする二人には、もう互いに食事を取るという事は無い事がわかっていた。
文化祭以降、二人は一緒にいても大きな壁が存在し互いに介入しないようにしている。
それは、この一連の流れの戦いが終結に向かいはじめるのと同時にこれまでの日々で隠してきた事があらかた知られているというノンの挙動が冬彦をそうさせていた。窓の外に流れる冷たい風が、すでに枯れている花壇の花を揺らした。それにノンは驚いた顔をし、
「……花が枯れてる」
「花は枯れるだろ。花だって生きてるんだからな」
「未来では花は桜以外咲いていないです。街に咲く花は全て造花で、桜の花以外の花は存在しないです」
「そうか……そこまでの状態になるのか。この十手の戦争というのは」
すると、冬彦のポケットの中の携帯が振動しメールを確認する。ゴクリ……と息を呑んだ冬彦はポケットから出したハンカチをカレーのついた口元にあて拭う。
「……ノンちゃん敵だ。いくぞ」
「ん? どこです?」
サササッと無言のまま冬彦は河川敷の方へ向けて走る。つられるようにノンも駆け出し河川敷の橋の下に人魔旅団の一人を見つけた。先手を仕掛ける冬彦はすでに致命傷を負わせたのかすでに戦いは終わっていた。
「お前達のボスである江戸前仮面はどこだ。それを吐けば命は助けてやる」
「……国会議事堂の下の地下神殿プロビデンスだ。そこに十手のパワーが集結する桜脈がある。これでいいんだろ……」
「プロビデンス……それが未来の魔王になる少年、江戸前仮面のアジト。そこに桜脈もある……ならば善は急げです! 早速――」
瞬間、倒した魔族が急激に燃えた。
「がああああっ!? 話が! 話が違うっ!」
(楓が仕掛けておいた罠だな。アジトを吐かせて消す。これでノンちゃんも議事堂に侵入出来る理由が出来て最後の決戦の舞台へ行ける……)
江戸前仮面のアジトの場所と十手のエネルギーの源である桜脈。
捕らえていた人魔旅団にこの二つを言わせるためだけに始末した。
その事に不快感を感じながらも、全ての真実を明らかにする為に心を殺し国会議事堂に向かう。併走するノンが口元を嗤わせているのに気がつき、冬彦はやはりこの少女を殺さねばならないと思った。