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プロローグ



「優斗っ!!」


駅前の鳩の時計塔の前で待つ橋本優斗(はしもとゆうと)の元に汗を流しながら小鳥遊未来(たかなしみらい)が駆け寄る。


手を大きくふりながら走る姿に通りすがった人は老若男女問わず振り返って魅いってしまっている。


「ったく何時だと思ってんだよ!!」


優斗は右手に着けている腕時計をバンバンと叩きながら自分の苛立ちをぶつける。


約束をしていた時間は2時ぴったりのはずなのに時計は3時を過ぎている。


それだけならまだ我慢できた。


今日は35度を超える異常な暑さが優斗のイライラをピークにまで達しさせていた。


「いやー……ちょっと用事がはいっちゃって」

「なら電話の一本くらいしろよ!!こっちから電話してもでないしよ」


優斗はイライラしながら今度は携帯をバンバンと叩きながら言う。


本当にここまでイライラするなんて優斗自身どうかしてると思うがイライラをぶつけるものがなく思わずあたってしまう。


「まぁまぁ落ち着いてよ」


「これが落ち着けるかってんだよ!!」


イライラの矛先がなくなり優斗の怒りがついにピークを超え爆発しポケットから携帯端末のような物をとりだした。


時間閉鎖(タイムクロウズ)!!」


瞬間、手に持った携帯端末が強烈光りを発する。


その光はやがて弱くなり、全く無くなったときには二人を残し世界から人が消えた。


「本当にあんたは怒りっぽいんだから」


二人っきりになった世界で未来がやれやれとあきれながら優斗を見る。


「今日の今日は本気だからな!!お前の腐った根性を叩き直してやる!!」


「でも戦略エリアを選ぶなんて本気には思えないんだけど」


優斗の本気発言を未来が軽く笑って流す。


実際戦略エリアでの対決で優斗は一度も勝ったことがない。


むしろこの限定空間戦闘(リミテッドエリアバトル)で一度も勝ったことがない。


だが今回だけは今までとはひと味もふた味も違うのだ。


「余裕こいてるのも今のうちだぜ?」


このバトルが終わった後の未来の泣き顔を想像してニヤリと笑う。


「ならさっさと始めましょうか」


「「ゲームスタート!!」」










「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


すっかり優斗の体がかまどうままみれになったところで戦略エリアの上空に『youwin』の文字が表示され未来がガッツポーズをする。


かまどうままみれになった優斗はゲーム終了と同時に意識を失い白目をむいている。


「このゲームを選ぶまでは良かったんだけどね」


勝利者の権限を使って未来が優斗の体からかまどうまを消滅させる。



優斗が選んだゲームは自分のモンスターを召喚しながら相手のリーダーを倒すという普通の大戦略ゲームだった。


それだけではいつもの通り歯が立たずぼこぼこにされるだけだ。


そこで優斗は自分が召喚するモンスターをかまどうまやゴキブリといった虫にしたのだ。


これならどんな人でもあまりの恐怖に泣き出すだろうという作戦だった。



「覚悟未来!!」


優斗の勝ちよりも未来の戦意消失を狙う最速のゴキブリ大軍が未来の陣へと大量に流れていく。


しかし未来は表情を変えることなくむしろどこか笑っているような目で自陣に入ってくるゴキブリを見る。


「さぁこれで俺の初勝利だ!!」


勝利を確信した優斗が手を未来に向けゴキブリに指示する。


しかしここで未来が動き出す。


「全くあんたは詰めが甘いのよ」


「え────」


優斗は目の前で起きていることに思わず目を疑う。


なんと未来の周り一帯にいたゴキブリが氷漬けになっていったのだ。


「まだこれからだよ?」


未来が不敵に笑いながら優斗の足元を指差す。


優斗は危険を感じジャンプをしようとするが未来がタイミングを逃すはずもなく地面へと落下していく。


「ほらチェックメイトよ」


すっかり落下して見えなくなった優斗に微笑みながらかまどうまを次々と落としていった。



そしてそのまま未来の勝ちで幕を閉じた。



「遅れた私も悪かったけどせっかくの今日にこんなに怒らなくっても」


白目状態からどうにかもどり唸っている優斗を抱きながら頭を撫でる。


時計は5時をさし携帯のアラームがなった。


もう未来は次の用事があるので行かなくてはならないと優斗を寝かせ立ち去る。


「……勝って未来に男って認めて欲しいのに」


突然の優斗の寝言に未来は体をびくっとさせ振り替えり、しばらく優斗の顔を眺めニコリと微笑んだ。


「まったく素直じゃないんだから」


そう言いおでこに優しくキスをした。





「優斗おはよう!!」


勢いよく優斗の背中を叩きながら前の席の谷岡直樹(たにおかなおき)があいさつをする。


「どうしたお前?全然元気ねぇな」


いつもなら叩きあいが始まり最後に肩を組むといういつものパターンにならないことを不信に思い直樹が優斗の顔を除きこむ。


「まぁちょっとな」


昨日のトラウマがフラッシュバックしかけたので理由を話さず軽く流す。


「まぁならいいけどな。先に行ってるぜ」


「あぁ、ありがとう」


一人にしてほしいという思いを察してくれたのか直樹はそういうと先にいってしまった。


本当に直樹の空気の読める度の凄さに感謝だ。


いくら限定空間の世界でのできごとだとしても昨日の感触といい光景といい常人に耐えられるものではない。


いくら限定空間でのできごとだとしても昨日の感触といい光景といい常人に耐えられるものではない。

しかし優斗が凹んでいるのはそれだけではなく、昨日あったあれのせいが一番大きかった。


心に誓った思いを心の中で繰り返し手に持つ限定空間バトルコントローラ(通称Labコン)を強く握りしめる。


「絶対に俺を男だって認めさせてやる……」


そう強く願いをこめながらLabコンをポケットにしまい走り出した。





「ねぇ昨日のJLABの魔剣戦みた?雅人かっこよかったよね!!」


「雅人もいいけど黒神もかっこよかったよ!!」


教室に入るとクラスの女子が昨日あったJLABの魔剣戦の話で盛り上がっていた。

JLABとは日本限定空間バトルの略で毎月12ある部のなかから順番一つ行われる大会のことだ。


いまやLabは世界共通で人気を誇る空間バトルゲームだ。


格げーから魔法もの大戦略ゲーム、FPSと12ものジャンルをメインに幅広いジャンルのゲームがあり、まさに夢のようなハードウェアだ。


また個別通信、痛覚調整、世界通信なと多種多様の使い方ができゲーム以外に使われることもある。


それほど世界的に普及しているのがLabだ。


「それにしてもまさか赤髪が勝っちゃうなんてね」


「全くびっくりだよね」


クラスの女子がうんうんと激しくうなずきながら同意をする。


昨日の魔剣戦は世界ランキング4位の黒神と世界ランキング15位の雅人そして世界ランキング57位の赤髪の対決だった。


ランキングから考えて誰もが赤髪が勝つとは思っていなかった。


しかしリーグ戦の結果二人ともKO勝ちで赤髪が勝つという誰もがびっくりする結果で終わったのだ。


「でもさ赤髪ってめっちゃ可愛いよね!!」


「確かにあの可愛さはやばいよね!!」


もう一つみんなをびっくりさせたのは黒神と雅人が男なのに対して赤髪が女だということだ。


日本初の女王誕生ということで昨日はすごい盛り上がりだった。




しかし赤髪がかったことこそが優斗を苦しめているもう一つの理由だった。


そう赤髪とは未来の魔剣戦の名前なのだ。


だから未来が勝てば勝つほど優斗は未来が勝ったことの嬉しさと勝てなくなる悔しさに押し潰されそうになるのだ。




未来との出会いは小学生の時だった暴れん坊だった優斗はなかなか周りに合わせられず合わせようとしたときにはもう誰も話をしてくれない。


もう学校なんか行きたくないとついに小4の時に家で引きこもった。


その時たまたま同じ団地で優斗と同じように引きこもっていたのが中二の未来。


優斗と未来は四歳の差なんかないかのようにいつも一緒に遊んだりご飯をたべたりと本当に仲の良い姉と弟のようだった。


しかしそのときからLabが強かった未来はどんどんとLabが強くなっていった。


そして優斗が未来を好きと気づいた時にはもうほど遠い存在になっていた。


だからこそ昔のような関係にもどれるように、未来がどうおもうかじゃなくって優斗自身が強くなると決めたのだ。


けれど何度挑んでもボコボコにされ何度も悔しさに泣いた。


今日も昨日の試合をみて自分なんかが目指すものじやないと何度も未来を諦めようとした。


けれどどうして、どうやっても未来が好きという気持ちをかくせない。




「そういえば優勝インタビューきいた?」


「『いつかあがってくるあいつのために上に居続ける』ってやつでしょ?かっこいいよね!!」


クラスの女子が話した言葉を聞き優斗はびっくりした。


昨日は未来が勝った瞬間泣きじゃくって最後まで見れなかったのだ。


「『私はあいつが来ると信じている』とか言ってた弟子とかいるのかな?」



優斗は女子たちの言葉に泣きそうになる。


未来は俺が上にとあがっていくねを待っているんだ。


優斗はあまりの嬉しさに涙がこぼれそうなのを必死にこらえながら決心した。


必ず上にたどり着いてみせる。


今日から俺の全てをかけた戦いが始まる。




誤字脱字はデフォです(笑)


気づいたら教えてください!!




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