衝撃
「…というわけで、今期から彼にヘルプに入ってもらう。あくまでもヘルプなので、常駐するわけではないが身近にはなると思う。疑問点があったらすぐ聞くように」
3日目前の朝礼で説明する部長の隣に立つ元彼の姿に、頭をガツンと殴られた様な気がした。
視線を机に落とし、必死に椅子の背を掴む。
平衡感覚が消えてゆき、何かを凝視していないと倒れてしまいそうだ。
なんで。どうして。あぁ、理由はさっき部長が言った、この時期は配属された新人がよくミスを起こす。
でも決算を控えた社員に指導する暇なんてあるわけない。
だからヘルプを募る。社員の中から。もちろん査定にも影響する。
教えるのは会社内の一般的なルール。手が足りなければ他部署の人員が配置される。
だからって。どうして。彼が。
「以上で朝礼を終わります。」
ガタガタと人の移動する音の中、握りしめていた椅子を引いてその中に滑り込む。
纏まらない頭を無理矢理起こして、メール画面を立ち上げる。
震える手で動かしたマウスが、一つの社内メールで止まった。
『件名:よろしくお願いします。』
…救いだったのは、課内全員に送られたことだ。
***
個人の事情など勘案せず、日々の業務は流れていく。
掛かってくる電話や同僚の確認に応対している内にお昼になっていた。
食欲はない、でも食べなきゃ。
時間をずらして、コンビニでインスタントのスープパスタでも買いに行こうと思っていると、
目の前に絵里子がいた。
「今日は『山善』に行くからねー」
目を合わせるなり、腕を組んで有無を言わせず連れて行こうとする、
うん、わかったからお財布くらい持たせてよ。