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ディーと私  作者: 真月
15/18

就寝

髪を触られていると、眠くなってくる。


お風呂上がりの身体が温度を下げていくのに連れて、とろとろと心地よい眠気が私を包んでいく。


「美里、眠いのですか?」


髪を整えていたディアスが、その指を首筋に伸ばしてそう聞いてくる。


「分かるの?」


「体温、脈拍、呼吸数共に下がっています。時間帯から推測して、睡眠を欲している可能性が一番高いと判断しました。」


ディアスの声が聞こえる。


「うん、そうね、眠い…」


「美里、睡眠を取るのであれば、ベッドの方が適しています。ここから移動しますか?」


耳に心地よい声は、子守歌のように私の意識を拡散させる。


「うん、運んで…」


眼を閉じたまま、両手を差し出す。


「わかりました、抱き上げます。」


微かに駆動音がして、脇と膝の下に腕が差し入れられる。


近づいた首に手を廻すと、そのままぐっ、と持ち上げられる。


その落ち着き先に些か戸惑ってしまった。


「立て抱っこ…?」


「先程の体勢から安定する抱き方を選択しました。大丈夫ですか?」


耳元で囁かれる声に対して、全く甘さのない口調と内容。


思わずくすくす笑い声を立ててしまう。


これじゃ恋人じゃなくてお父さんだ。


「美里?どうしました?」


「ううん、何でもないわ。ベッドに連れて行って。」


首にぎゅう、としがみついて甘えた声を出す。


でも自分で分かる。今までの男に媚びる声ではなく、親に甘える子供の声だ。


「わかりました。」


目を閉じて、運ばれる振動を感じる。


子供の頃、記憶に残らなかった親の愛情。


当たり前だ、その時はきっとぐっすり眠っていたんだから。


それを今、再び味わって、泣きたくなるような幸せを感じる。


「下ろします。」


静かに言われて、そっと下ろされる。


離れていく腕が心許なくて、思わず掴んで引き留めてしまう。


「美里?」


「寝たかどうかは分かるんでしょう?」


「医療用ではないので、厳密には分かりません。現在であれば、身体機能が一定以下となった場合、睡眠に入ったと判断します。」


「あぁ、突然死とかあるものね。…でもそれなら問題ないわ。私が寝付くまで、手を握っていて。」


そう言うと、ディアスはベッドの脇に膝を着いて、私の手を両手で握った。


「おやすみなさい、美里。」


「…おやすみなさい、ディアス。」


私好みのイケメンに、ベッドまで運んでもらっても身体の関係に煩わされることなく、手まで握っていてもらえる。


なんて幸せなんだろう。


そんなことを考えながら、眠りに落ちていった。



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