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ディーと私  作者: 真月
13/18

夕食

そうは言っても指示しないわけにもいかず、気まずさを覚えながらも出迎えのタイミングを覚えさせた。


さすがに毎日あれを続ける気力はないし、ましてやあれに慣れてしまったら駄目な気がする、日本人として。


逃げるように洗面所へ駆け込んで手を洗いうがいをする。


気恥ずかしくて鏡が見られなかったが“家電の呪文”を唱えて目を上げると若干赤い顔をした自分がいた。


なんだか苦笑が浮かんできて、笑う自分を見て肩の力が抜け、急にお腹が空いているのを感じたため食卓へ向かった。




彼の中にはレシピが料理本何冊分も入っている、らしい。


洋食・和食・中華などの方向性と品数・種類・食材などを指定すればランダムで作ってくれる。


ただし量や味付けは基本通りなので、自分の好みなどは調整しなくてはいけない。


面倒にも思えるが、それほど舌が肥えているわけでもなく普通に美味しい。


まぁ、データベースに必要かと思い注文をつけているのだが、あまり凝った料理だと逆に『美味しい』という基準がわからなくなる。


初めて食べた料理が上手か下手か分からないようなものか。


今日のメニューは鮭のクリーム煮、温野菜のサラダ、ジャガイモのポタージュにプリン。


量も少なめになっていて、素直に嬉しい。


それ以前に、本当は作って貰う御飯に文句なんてないのだが。


「いただきます。」


手を合わせてから一口食べる。美味しい。


もぐもぐと食べていく私を、ディアスは向かい側に座って微笑みながら見ている。


当然ながら、食事の必要はないので眺めているだけだ。


「美味しいわ、ディアス。ありがとう。」


と笑顔を向けると、


「どういたしまして。貴女に喜んで貰えて嬉しいです。」


にっこり笑顔を作って返してきた。


もっと淡々とした返事を想定していた私は、その不意打ちのような満面の笑顔にとっさに眼を逸らす。


ポタージュを飲んでそっとディアスを伺ってみると、さっきと同じ微笑みを静かに浮かべている。


あぁ、いいな、こういうの。


なんだかすとん、とそんな気持ちが胸に落ちてきて、気づけば私も同じように微笑んでいた。


こんな穏やかな気持ちになったのは、何時以来だろう。


美味しい食事を、安心できる人と食べる。


それだけのことが、こんなにも幸せに感じる。


ささやかな幸福を噛み締めながら食事を終え、私は胸もお腹もいっぱいになっていた。





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