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ディーと私  作者: 真月
11/18

帰宅

午後は、会議があったり来客があったりで気忙(きぜわ)しく過ごした。


終業10分前辺りから、机の上の書類を整理しつつ何分後に席を立とうか考える。


月曜日からフルスロットルで仕事出来るほど、気力も体力もない。


メールと掲示板をチェックし、必要なものとそうでないものを振り分けていく。


明日の予定をメモ書きして、大まかな時間配分を考える。


と、終業のチャイムが鳴ったので、メモ書きをデスクマットの下に入れる。


周りの人と今日の夕食の献立や最近の映画などの雑談をしながら、パソコンの電源を落とす。


処理済みの書類を綴ったファイルや未処理分を入れたケースをキャビネットに入れ鍵を掛ける。


挨拶をして部屋を出ると、若干の疲労を感じながらもそれに倍する開放感で自然と表情が柔らかくなる。





会社を出て、人通りの増えてきた中を駅へと向かいながら携帯を見る。


着信もメールもないことを確認してから、自分の部屋へ電話を掛ける。


『はい。』


1コールが鳴り終わる前に相手が出る。無機質だが電子音とは思えない声だ。


「美里です。これから帰るから。夕食の準備をしておいて。」


『わかりました。準備を始めます。食事の内容はどうしますか?』


「今日は洋食が食べたいわ。メインとサラダとスープとデザートを。」


『…確認しました。食事の開始は90分後でよろしいですか?』


「そうね、そのくらいで。じゃあお願いね。」


返事を待たずに通話を切る。これから家に帰るまでの時間で出来上がるものに思いを馳せながら、足を速めた。





新しく自宅となったマンションに入り、エントランスでエレベータに乗る。


程なく着いた廊下に足を踏み出して、ふと、鼓動が早まっていることに気づく。


緊張しているのかと、わずかに苦笑して息を吸い込む。


吐き出して、目の前のドアの鍵を開ける。


ただいま、と言いながら玄関に足を踏み入れると、突然何かが覆い被さってきた。


え、と思っているとドアの閉まる音に重なって、耳元で「お帰り」と囁かれる。


その、高すぎず低すぎずの声に思わず背中がゾクッと来る。


慌てて両手で押して身体を離し相手を見上げると、眼を合わせてにっこりと微笑まれる。


自分の頬がかなり熱くなっているのを感じながら、私は今朝言ったことを思い出した。


『帰ってきたら、抱きしめてから『お帰り』と耳元で』…


確かにそう言ったけれど、ええ、そう言ったのは私だけれど…


このタイミングはないでしょう!?













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