拝啓
拝啓、保健室の君へ。
ご機嫌いかがですか。お元気でしょうか。
んなわけないね、だってうつやもん。これを読んどる時もきっと落ち込んどるんやろうね。ウチら付き合って二ヶ月、三ヶ月?くらいやから、結構アンタのこと分かってきたよ。
決めた。ウチはお先にいくことにしたから。前からずっとどうしよどうしよ考えとったけど、やっと勇気出たわ。
本気でそう思ったら、すうっと楽になってね。なんも悩むことなくなった。よりも、可笑しくてしょうがなくって、ケタケタ笑えたよ。ちょっと踊ってみたりもして。
楽しい――じゃなくて、心から余計なもんがなくなった感じ。こんなに胸張って心晴れたことないよ。多分、生まれたばっかの赤ちゃんがこんな気分になれるんかもね。
アンタのせいじゃない――ってゆってほしい? アンタはウチにな〜んも関係なかったって信じたい?
そんな殺生な〜。ウチはアンタのおかげでここまで生きてられたし、ここで終わろうって思ったんやから。
アンタ結構、お母さんの次くらいに責任重大やったんよ。なんせ『うつ友』やもんね。
悲しく思わんでね。後悔したりもせんでね。
感謝しとるよ。
なんやかんやウチの話に付き合ってくれて、とことんうつのこと喋って、お互いのことバカにして、からかって――楽しかったぁ。お母さんとかお医者さんとかやったら、うつをバカにしたら怒られるもんね。アンタしかおらんだよ。
最後に良い人に会えたちゃ、本当に。
ふぅ――死ぬわ。そろそろ。
短いって? そりゃそうやろ。アンタの手紙が一番最後に書いとるから、もう手が疲れたんよ。だからもう、ちょっとだけ。
ウチの身体、ぐちゃってなるやろうから、式には来んでいいよ。アンタに見られたくない。
『こーでん』やったっけ? お金もいらんよ。どうせもう使えんし。
こっちに早く来ても会ってやらんからね。ゆっくり来ること。じゃないと許さんから。閻魔さまみたいに送り返すから。
じゃあね。
ありがとう。
またね。
さよなら。
いってきます。
以上。
手紙の端々が濡れて滲んでいる。雨にでも降られたか、洗面所にでも落っことしたか、あるいは――
誰かが流した涙か。
俺はその日一日中、手紙を開いては閉じてを繰り返した。




