第02話 君が勇者
今日は、大事な大事な転校初日だ。
ただ、どうやら学校に行く余裕はないらしい。
頭痛いよ、俺。
「大丈夫かよ!?」
1人の少年の声で、智也は目を覚ました。
視界に移るのは青い空と、なんだか幼い顔つきの少年に、綺麗よりも可愛い系っぽい少女がいた。どうやら自分の顔を覗き込んでいたのか…なんてふと智也は考える。
そしてこの状況を理解した。
「な、お前らって空、空から!」
「あー、うん。まぁ」
「本当にごめんなさい。…怪我はないですか?」
苦笑気味の少年と切なげな表情を浮かべる少女。
どちらもパッと見は普通…、否。黒髪黒眼が当たり前のこの世界では、少し目立つ外見だ。少女は淡い青色の髪。少年は金髪。まるで外国人、と言うか少女の場合は不良だとしか思えない。
………まるでアニメや漫画に出てくるような…。
ふと、手元にある真っ白だった本を見た。
まさか、この人たち――――――?
「なぁその、お前の持ってる本について話があるんだけど…」
少年の声にパッと顔を上げる智也。
ほら来た、ビンゴだ。そう心の中で呟きながら智也は少年を見た。
「何だ?ここじゃアレだし、近くの公園に行かない?」
「おう、おれもその方が嬉しい」
「じゃぁ移動しましょ」
そう言いながら、智也たちは公園の方へと歩んでいった。
まぁ学校はイイか…、と智也は思いながら。
「その本なんだけど」
「あ、その。俺的に思う事があるんだけどさ」
少年の言葉を遮って、ブランコをゆっくり漕ぎながら智也は言う。もちろん2人は首を傾げる。
なんだか純粋そうな2人だよな、と思い智也は心の中でクスッと笑いながら。
「もしかして、2人ってこの本の登場人物とかだったりする?」
「―――――え?」
ハモッた。
眼を丸くして、2人は。
これは当たりだろう。
「な、何で分かったの?」
「いや…。何か2人とも外見が、特にあなた。なんか非現実的な感じがしたから」
「私ってそんなに…?」
「ああ、髪が青だからか…」
智也の言葉に感心する少年と少女。それをなんだかもどかしい感覚で、智也は見ながらブランコを勢いよく漕いだ。
そして存分に感心したらしい2人は、そうだよと言いながら智也の眼を見た。
眼を見られるのは、なんだか慣れていない。
少しくすぐったい気分になる。
「実は、この物語をあなたに完結して欲しいんです」
「この世界で実際に行動して…、主人公ってか立場的に勇者様っていうのかな?」
――――本の世界で、勇者になって、物語を完結させなさい。
どこのRPGですか、君たち。
「えっと…」
「動揺しちゃうよね!!ただ単刀直入に言うとそうなんだよぉ」
わたわたわた、と慌てる少女。
智也はとりあえず落ち着こうとする。
つまり自分は、選ばれた?だから本が落ちてきて、この2人もやってきた?
そして自分は勇者となって、人々を守ったり…するのか?
「何をするんだよ、勇者って」
「ああ…、あの。
―――――ドラゴンの子孫を倒すんだよ」
ドラゴン!?!?
「ドラゴンって、あの羽の生えた大きな?何それ、ただのRPGじゃんかよ。本じゃないよそれ、ゲームにした方がいいってば」
「ん?なんかおれ良くわかんねぇけど…。子孫っていうか、ドラゴンの遺伝子を組み込まれた5人のロボットを倒す…って感じなんだけどな」
「…ああ」
少年の困った感じの言葉を聞いて、俺はやっとピンと来た。ただのドラゴンならゲームで、子孫でロボットならば本っぽいな。智也は納得しつつ、さらに2人に聞いた。
「村や町の人は困ってるってことなのか?」
「そうなの。5人は異常な身体能力とドラゴンの力の源がそれぞれ合って…。あ、源はそれぞれ体の部位で、心臓、爪、舌、血液、眼です。そのそれぞれに力があって…乱用しているんです」
「乱用ね…、ありがちだ。で、俺はそれを説得すればいいのかな?」
普通はそうだろう、なぜなら勇者と言っても俺は一般人だから。
そう思いながら、智也は少女に問う――、が。
彼女は真逆だった。
「違います。
――――――――その部位を、あなたは切らなければならないんです」
え?
それは、俺にロボットであっても、人を殺せと言う事なのか?
「一緒に来てくれませんか、勇者さん」
少女の強い眼差し。
「大丈夫、力は今はなくても…、きっと本の世界に行けば自然に手に入るから」
少年の明るい表情。
期待している?
この“王道”展開の勇者は、きっと昔いろいろありましたみたいな過去が、あるはずなんだろう。
それが、ない。俺は普通の人生を送ってきた。
「俺は、勇者なのか?」
俺の世界は“王道”に呑まれた。
けれど、その世界に俺はいらないのではないか。
本を握りしめ、智也はゆっくり頷いた。
今回の主人公は、本当に普通の一般家庭で育った少年です。
彼はこれから勇者として、たくさんの人の期待を背負うことになります。
それと同時に、ロボットと言われているドラゴンの子孫を殺す運命も。
これが前作との大きな違いかなと思います。
前作よりも暗い展開になること間違いなしなので、そこはちょっと覚悟して下さい(汗
ではまた次回、お会いしましょう!