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初めまして、私は勇者の…。【連載版】  作者: 徒然草


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9.リリアンの憂鬱2

 リリアン編の続きです。


 レコを病院へ連れて行き、ベッドに寝かせたまま医師は診察をした。アリーの父親の話では、レコはいきなりふらついて倒れたそうだ。付き添った者達は心配そうにレコを見ているが、特に孫であるアスランは落ち着かない様子で不安そうにレコを見ていた。


「…病気ではないと思います。恐らく、年齢による過労ではないかと。」


 病気ではないという言葉にリリアン達はホッとしたような気持ちになったが、アリーの父親は何とも言えない顔をした。


「過労でいきなり意識を失う事があるのですか?」


「…稀にですがありますよ。体力面の問題だけではなくて、例えばレコさんは倒れる直前に何か強いストレスを感じたとか…何か身に覚えはありませんか?」


「っ!」


 アリーの父親はハッとしたような顔をした。


「お、おじさん…何か知っているんですか?!」


 アスランが不安そうな様子で聞くと、アリーの父親は気不味そうな顔をした。


「…今日、アリーが帰ってきたんだ。」


 アスラン達の表情が強張る。レコの事で忘れていたがアリーの後を追おうとしていたのだった。アリーの父親はアリーがアスランの悪口を言う男…バロウを庇い、メノア達に悪口を言った事。そして、自分にナイフを突きつけて3年前に村を出て行った事を話した。村を出た事は知っていたが、まさか父親にナイフを向けるなんて事までしていたとは知らず、アスラン達は絶句した。


「アリーは俺達に謝罪するどころか、碌でもない男と結婚するだなんて巫山戯た事を抜かしてきた。その時偶々なんだが、レコさんが我が家に遊びに来ていてな…。」


 アスラン達の表情が強張った。まさか、アリーはレコに何かをしたのではないか、という緊張が走った。


「レコさんはアリーが来てくれて喜んでいた。でもアリーはレコさんをまともに相手にせずに立ち去ったんだ。それでその後すぐに倒れてしまって…。」


 アリーが何かをした訳ではないが、アリーの態度にレコが傷付いた…とアリーの父親は言いたいのだろう。アスランは悲しそうな顔をしたが、リリアン、ダン、ブルーノの3人は相手にされない事は倒れるほどのショックを与えるのか、と口には出さないが疑問に思っていた。


「アリーの奴…人の悪口を言って、両親に反抗するだけじゃなくてレコさんの世話を放棄して村から出て行きやがった。レコさんはアリーを可愛がってくれていたのに、どうしてあんな娘になってしまったのか。本当にすまない、アスラン。」


 アリーの父親はそう言って頭を下げた。しかしアスランは気不味そうな、悲しそうな顔をして首を振った。


「おじさん、アリーは悪くありません。悪いのは、アリーに甘えきっていた僕です。だからアリーを悪く言わないで下さい。」


「良いんだアスラン、気を遣わないでくれ。アリーの事を幼馴染として大切に思ってくれているんだと思うが、今回の事は全部アリーの責任だ。親として恥ずかしいよ。アスランは昔から人の事を常に思いやれる素晴らしい人格だというに、何故アリーはあんな風になってしまったのか…。」


「っ…。」


 アリーの父親の言葉にアスランは表情は固まった。リリアン達も渋い顔をする。アリーの父親の言葉に同意したからじゃない。アリーが両親をどうでも良い、と言った理由の片鱗を見たような気がしたからだ。


「っ、おじさんお願いします。アリーを悪く言わないで下さいっ! アリーは…」


「んっ…、ここは…?」


 アスランがアリーを庇おうとした時、レコが目を覚ました。


「っ、ば、婆ちゃんっ!?」


「レコさんっ!?」


「…え、あ、あぁ、アスランなの…?」


 レコは驚いた後、みるみる瞳を潤ませ嬉しそうに微笑む。アスランがレコに抱きつくとレコはアスランの頭を撫でた。


「…ほ、本当に良かったよレコさん。」


 アリーの父親も安心したように微笑む。レコはアスラン達から現状に至るまでの経緯を聞くと、アスランと再会出来た喜びの表情から、徐々に暗い表情になったいった。


「…あのねアスラン。アリーちゃんがさっき帰ってきたのよ。」


「…うん。」


 アスランは続きを促すようにレコに頷いた。


「私、アスランが旅に出てから何時も心配だったわ。アスランは無事だろうか、何時帰ってくるのだろうかと気が気じゃなかった。そんな時に何時もアリーちゃんが私の様子を見に来てくれたのよ。私にとってアリーちゃんはアスランと同じように、孫みたいな存在で大切だわ。」


「有難うなレコさん、あんな娘を…。」


 アリーの父親は、まるで出来の悪い娘を大切に思っていてくれた事に感謝しているような、そんな雰囲気で感謝した。


「でも、アリーちゃんが村を出て行ったあの日、アリーちゃんは…。」


 レコはアスランに気不味そうな目線を送った。まるで言いにくい事があるかのように。アスランは嫌な想像をしつつも覚悟を決めたようにレコの手を握った。


「婆ちゃん大丈夫。何があったんだ?」


「っ…、アリーちゃんは、アスランの事が大嫌いだって、言ったの。私、本当に驚いてしまって、何も言えなかったわ。」


 アスランは予想していた、けれど知りたくなかった事に暗い顔をした。リリアン達はアスランを心配そうに見つめた。アリーの父親はアリーへの怒りでキツイ顔をした。


「それから本当にアリーちゃんが村を出て行ったと知って、とても悲しかった。それから何もしないでいる時間が本当に辛くて、家事や仕事に没頭するようになってしまったの。でもアスラン、貴方が魔王を無事に倒したと知らせがあって、本当に嬉しくてアリーちゃんのお父さんの家にお邪魔して喜びあっていたの。そしてその時、アリーちゃんにも会えて本当に嬉しかったわ! アスランとアリーちゃんが戻ってくると期待したの。でもアリーちゃんは私に会えてもあまり嬉しそうじゃなくて、頭を下げてそのまま行ってしまって…悲しかったわ。」


 レコは高齢であり身体が丈夫という訳ではない。アリーがいなくなってから疲労を蓄積させていたのだろう。そしてアスランと同じくらい大切だと思っていた存在から冷たくされたと感じて意識を失ってしまった、そういう事なのだろうとアスラン達は納得した。


「本当にすまないレコさん。全部アリーのせいだ!」


 アリーの父親は表情を歪ませてレコに謝罪する。しかし、レコは首を振った。


「いいえ、アリーちゃんは関係ないわ。私が倒れたのは私の体調管理の問題です。本当に迷惑をかけてごめんなさい。」


「いいや、全部あいつ(アリー)のせいだ!」


 レコがアリーの父親に謝罪するが、アリーの父親はレコは悪くない、アリーが悪いと主張するだけだった。何処となく気不味い空気の中、アリーの父親にダンが口を開いた。


「なぁ、アリーの親父さんはレコさんの様子を見に行かなかったのか?」


「…え?」


「アリーがいなくなってからの話だよ。いや、アリーが居た時もだけどさ、アリー以外の親父さんや村の誰かはレコさんの家に行かなかったのか気になってさ。どうなんだ?」


「……。」


 アリーの父親は目を見開いた後、黙り込んだ。そして気不味そうに口を開いた。


「…俺は行ってない。レコさんが遊びに来てくれた時しか会ってない。それは、アリーの役目だったからな。」


「…婆ちゃん、アリー以外の誰かが様子を見に来てくれた事はあるの?」


 アスランの質問に、レコは笑いながら否定した。


「いいえ、家に来てくれたのはアリーちゃんだけだったわ。」


 その場が沈黙に包まれる。アリーの父親は何とも言えない顔をした。先ほどまでアリーが悪いとばかり言っていたが、そうではないと思い始めたのだろう。もし誰かがレコを気にかけて家に行っていれば、レコの過労を軽減できたかもしれない。アスラン達は思わずアリーの父親に目線を送ってしまう。


「でも仕方ないわ、皆さん忙しいもの。それに態々こんなお婆ちゃんのところに遊びに来る理由なんてないわ。悪いのは私よ。」


 レコは困ったような顔をして笑う。アリーの父親は気不味そうにアスラン達から目線をそらした。アスラン達も同じくらい気不味そうになった。アリーの父親だけが悪い訳では無い。それにそもそもレコの身内はアスランだけで他の村人は他人なのだ。他人の世話をするのは義務ではないのだから村の誰が悪いという話ではないのかもしれない。けれどアリーは、本心はどうであれレコの様子を見に行ってくれていた。その行いは、心から感謝しなくてはならない事だった。でもきっと、アリーの父親は当たり前の事のように扱い、アリーを褒める事も感謝をする事もなかったのだろう。


「…。」


 誰も何も言わないが、アスランはアリーの気持ちを考えて、どうすれば良いのかを考えているのだろう。そんなアスランを見て、リリアンはどうやってアスランを慰めれば良いのか、力になってあげられるのかを考える。しかし良い案は思い浮かばず、心配そうにアスランを見つめる事しか出来なかった。


 


 ブルーノ、存在感薄すぎてごめんなさいといった感じです。この話ではアリーの父親はアスランよりも嫌われるかもしれませんね 笑

 誤字脱字報告何時も有難うございます! そしてここまで読んで下さり有難うございました! もし宜しければ評価して頂けると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
ふと思ったんだが、対魔王戦争での勲功第一等の勇者様は、褒章を断ってないよな・・・? これやられると、頑張って戦功を詰んだ連中は、恩賞を貰えないか通常より低い恩賞しか出ないぞ・・・ なんせ、国家滅亡レベ…
アスランは気づいていなかった上にバカだが、実際魔王退治に行ってたからばあちゃんの面倒は見られなかった。 アリーに丸投げ、ていう身勝手な新たな罪も出てくるが。 親父はいま指摘されてるみたいに娘のアリに…
興味深く読ませていただいています。 今回も村人の異常性が察せられるお話しでしたね。 勇者には軽い魅了魔法のようなものがあるのでしょうか? アスランにキャーキャー言ってる若い娘たちばかりか、村の中高年…
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