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初めまして、私は勇者の…。【連載版】  作者: 徒然草


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6.アリーとバロウ4

 アリーとバロウのお話です。次で終わる予定です。


「おい! 俺の娘に何を言ったんだ!!」


 アリー達に気づいた男が険しい様子でやって来た。

 

「お、お父さんっ…!!」


 メノアが男を見て泣きながら縋り付いた。バロウ以外は知っているメノアの父親だ。


「メノアどうしたんだ!? それに君達も…。」


 メノアの泣き顔と、メノアの友人であるミラとカレンダのただならぬ様子に困惑している。


「おじさん、あの男がメノアと私達の事を侮辱してきたんです!!」


 カレンダがバロウを睨みつけながらそう言うと、メノアの父親はバロウを睨み付けた。


「確かお前は…アスランの悪口を言いふらした糞餓鬼だな!?」


「はぁ? 誰が糞餓鬼だよ、口悪いおっさんだな。」


 バロウは面倒臭そうにしながらもメノアの父親を睨み返した。


「アスランの悪口だけじゃなくてメノア達の事も悪く言うだなんて、どういうつもりだっ!!」


「…あの男は、私達の事をブスだって言ってきたんです。それに他にも――。」


 ミラはバロウに言われた悪口の全てを説明すると、メノアの父親はより一層バロウを睨み付けた。


「俺の娘に、女の子達になんて事を…どういう教育を受けてきたんだこの糞餓鬼!! お前は想像以上のクソ野郎だな!?」


「どういうも何も、碌な教育を受けてない事は確かだな。」


「っ、この最低野郎が!! 今すぐメノア達に謝れっ!!」


 バロウはやれやれといった様子で片手をヒラヒラと振りながら首を態とらしく左右に振る。そんなバロウに掴みかかろうとしたのかメノアの父親は怒りを露わにしたままバロウに向かって一歩踏み出した。


「彼は私を庇ってくれただけです。」


 だがメノアの父親の歩みを阻むように発せられたアリーの声に、メノアの父親は踏み留まった。


「っ、…え、アリーちゃん?」


 メノアの父親が困惑した様子でアリーを見た。メノア達も、そしてバロウも驚いた様子でアリーを見た。


「…おじさん、私はあなたの娘のメノアさんと、メノアさんの友人であるミラさんとカレンダさん。そしてこの場にはいない村の女の子達から私がアスランの幼馴染というだけで嫉妬されて、今まで嫌がらせを受けたり悪口を言われてきました。知ってましたか?」


「…なんだって?」


 アリーの言葉に驚いた顔をしたメノアの父親は、本当なのかと言うようにメノアを見た。メノアは慌てたように首を振った。


「なっ、ち、違うわ! 私達はそんな事…」


「今さっきも、3人で私に詰め寄ってきて悪口を言ってきたんです。アスランの幼馴染である私の事が気に入らない、私は男に媚を売る女で最低だとね。3人がかりで散々な事を言われました。…そんな時に、彼は私を庇ってくれたんです。」


 アリーは怯えた様子を見せずに淡々と話した。そんなアリーにメノア達は困惑し、ただ呆気にとられた様子で口を挟む事が出来なかった。


「っ、い、いやしかし、コイツが誰かを庇うような奴とは到底思えないっ!! コイツはアスランの事も悪く言う最低な奴だぞ?!」


「ねぇ、彼に悪口を言われて嫌だったよね? メノアさんは泣いてるし、よっぽど傷付いたんだと思う。でもそれは貴女達が私にしてきた事でもあるんだよ。貴女達の前では我慢していたけれど、私は何度も泣かされたんだよ。」


「っ…!」


 メノアの父親を無視してアリーはメノア達を見た。アリーの言葉にメノア達はぐっと言葉を詰まらせるように黙り込むが、アリーに対して反抗心でもあるのかアリーを睨みつけてきた。そんなメノア達の様子に、メノアの父親はアリーの言っている事が本当だと察した様子で気不味そうにアリーを見た。


「それはその…何故、今まで黙っていたんだ?」


 言ってくれれば良かったのにと言いたげなメノアの父親の言葉に、アリーは表情を引き攣らせた。


「村中の女の子に対して私は1人だったんですよ? 今も3人がかりで私に詰め寄ってきたんです。怖くて言える訳ないじゃないですか! 両親に相談した事もありましたが、女子にはよくある事だと言って味方なんかしてくれませんでした。そんな状況で何かを言えるほど私は強くありませんっ…!」


「そ、それはっ…。」


 メノアの父親は苦い顔をした。メノア達も気不味そうにアリーから視線を逸らす。アリーはそんな4人を強い眼差しで見つめ続けた。バロウは何も言わず、無表情で事の成り行きを見届けている。暫く沈黙が続き、誰が何を言うのか分からない状況となった。

 

「…けどアリーちゃん、ソイツはアスランを悪く言ったんだ。」


 沈黙を破ったメノアの父親が発した言葉に、アリーは失望したような顔をした。


「…だから何です? 彼がアスランの悪口を言ったから彼が悪いというのですか?」


「…っ、アリーちゃんはアスランの幼馴染じゃないか!?」


 その言葉に、アリーは不機嫌さを顕にした。


「彼がアスランの悪口を言った事と、私を庇ってくれた事は関係ないでしょう!? アスランと幼馴染だから何だと言うの、どうして私を庇ってくれた人を、アスランの悪口を言っただけで敵視しないといけないのですか!?」


「なっ、ア、アリーちゃん!? 君はどうしてしまったんだ!!」

 

 アリーの言葉にメノアの父親は信じられないとばかりに目を見開いた。 


「っ、まさかソイツに変な事でも吹き込まれたのか!?」


「…はぁ!?」


 何故かバロウのせいにされそうになり、バロウは思わず不機嫌な声を出した。バロウを睨みつけるメノアの父親にバロウは嫌味でも言おうとしたが、


「さっきおじさんは彼に、どういう教育を受けてきたのかと怒鳴ってましたよね? その言葉をそのままお返しします。一体どういう教育をしたらメノアさんみたいな性格の悪い女に育てられるのですか?」

 

「っ〜、な、なんだと!!?」


 バロウが何かを言う前にアリーが発した言葉により、メノアの父親はバロウへの怒りよりも強い怒りをアリーに向けた。メノアはアリーの暴言に怒りよりも、何故かショックを受けたように目を見開いていた。


「さっき私がメノアさん達に悪口を言われていたと知りましたよね。それなのにメノアさんに謝罪をさせず、注意もせずに棚に上げて彼を攻撃するだけだった。彼の言い方は確かに酷かったかもしれないけれど、メノアさんだって変わりませんよね? 悪口に男も女も関係ないと思います。」


「っ、そ、それは…。」


 アリーの反論にメノアの父親はたじろいだ。メノア達は何処か不安そうにアリー達のやり取りを見ている。


「おじさんがそんな態度だから、メノアさんの教育に悪影響を与えてアスランに振り向いて貰えない性格になったんですよ。嫉妬心から集団で1人を虐める女の子をアスランが好きになるとは思えませんもの。」


「っ〜……。」


「っ、メノアッ!!」


 性格の悪い女をアスランが好きになる筈がないというアリーの言葉と、メノアの外見と内面とを侮辱し、アスランには女がいるというバロウの言葉にストレスを蓄積させたのか、メノアは顔色を悪くしてふらついた。ミラとカレンダは慌ててメノアの身体を支えたが、ミラとカレンダの顔色も良くない。メノアに向けられた言葉は少なからず自分達への言葉でもあるのだと分かっているのかもしれない。


「メ、メノア大丈夫かっ!!?」


 メノアの父親は(メノア)を心配して駆け寄った。俯くメノアに3人は声をかけ続けていて、アリー達に振り向く様子が見られなかった。


「…、行きましょう。」


「…。」


 その隙にアリーはバロウの腕を掴むとその場を走り去る。バロウは抵抗せずにアリーの後ろ姿を見ながら走り続けた…。




◇◆◇




「っ、…おい。」


「はぁ、はぁ…ごめんなさい、巻き込んでしまって。」


 市場から離れるとバロウがアリーに声をかけた。アリーは息を切らせているがバロウは息一つ乱していない。アリーはバロウから手を離すと頭を下げた。


「別にそれはどうでも良い。ただな、俺は別にお前を庇った訳じゃないんだが…。」


 バロウが自身の頭をくしゃり、とかきながらアリーから目線を外して言った。アリーはバロウの言葉に少し固まったが苦笑した。


「そう…ですか。それならごめんなさい、貴方を利用した事になりますね。」


「…利用?」


「はい。貴方が来てくれて、声をかけてくれたお陰であいつらに言い返すきっかけを貰えました。私を庇ってくれた人を庇う為に言い返すんだって思ったら、何だか言いやすくて…。」


 アリーはポカンとした顔をするバロウに改めて向き合った。


「貴方には不本意だったかもしれませんが、助けてくれて、本当に有難うございました。」


 バロウのお陰で、アリーは今まで言えなかった不満をぶちまける事が出来た。それにバロウがメノア達に言ってくれた悪口にアリーはスカッとしたしとても嬉しかった。今後の村での過ごし方に不安がないと言えば嘘になるけれど、今はただアリーを清々しい気持ちに変えてくれたバロウに感謝したかった。


「っ…ぷっ、あっははは!! お前、俺以上に性格が悪いかもなぁ!!」


「っ!? えぇ、そ、そうですか!?」


 急に機嫌良さそうに大笑いをしたバロウに、アリーは驚きながらも流石にそれはないと言いたげに声を出した。


「会って間もないけどよ。お前があんなにも口が回るとは思わなかったぜ。あのブサイクを言葉で倒すなんて強すぎんだろ!」


「え…そ、それは私の言葉だけではないのでは?」


「いやいや、殆どお前の仕業だよ。くくくっ、あーあ、おかしいったらないぜ! こんな女が勇者の幼馴染、いや下僕だなんてあり得ねぇよ。」


 アスランは楽しそうな顔で笑うと機嫌良さそうにアリーを見た。


「お前は、勇者の()下僕だ。」


 バロウの言葉にアリーは目を見開いた。アスランの幼馴染、アスランの下僕、望んでいないアスランとの繋がりが過去になったような、解放されたような気分になった。



 虐めの主犯格ともいえるメノアが弱すぎだと思われたかもしれません 笑 そしてアリーの覚醒ぶりは無理矢理感もあると思いますが小説ですのでお見逃し下さい。次でアリーとバロウの出会い話は完結予定です。いつ更新出来るか分かりませんがお待ちいただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
アリーとバロウのお話面白かったです(後1話あるっぽいけど 自分の娘であるメノアが、アリーをいじめていたというのをなんとなく分かったというのに 親としても謝る事ができてない時点でお察しですよね… 自分の…
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