33.アリーとバロウと…2[完結]
アリーとバロウのその後のお話です。これで完結します!
「可愛いなぁ〜、マロンちゃん…。」
アリーの家に遊びに来たサラは、マロンの頬を人差し指で優しくつついた。ぷくぷくとした赤ん坊の頬を触りたくなる気持ちはアリーも良く分かる。
「うぅ~…。」
「あ、ごめんねマロンちゃん。触り過ぎちゃったかな?」
マロンの口がへの字になり、サラは指を引っ込めた。
「多分、お腹が空いてきちゃったのね。」
アリーはそう言うとマロンを抱えて立ち上がった。
「ごめんねサラ、母乳飲ませてくる。」
同性同士ではあるが、他人に素肌を晒すのが苦手なアリーは申し訳なさそうにサラに謝る。
「いってらっしゃい!」
サラは全く気にした様子を見せずに手を振った。
「本当に、サラは優しいな…。」
別室でマロンに母乳を飲ませながら、アリーは改めてサラの友人になれた事に感謝する。勿論、サラだけじゃなくてマスターにも感謝しているし、その他にもアリーを気にかけてくれる人達は何人か居る。
そして何より、バロウと出逢えた事がアリーにとっての幸福だと断言出来た。
バロウに逢わず、あの村にずっと居たら…と考えると恐ろしいとすら思えてしまう。誰にも心を開けず、怖くて言い返す事も出来ないまま、アスランの下僕として生活していくなんて、想像するだけでも耐えられない。
「…。」
アスランはリリアンが予想していた通り、アンジェリカ王女によって村を離れた。そして数ヶ月前に王女と結婚した事が発表された。この時点でアリーとの条件は破られ、アスランと仲直りする必要は完全になくなった。発表を聞いた時、アリーは喜びよりも安堵した事を覚えている。
王家の人達がどんな人柄で、平民の生活や価値観と何が違うのかはアリーには分からない。勇者とはいえアリーと同じく平民だったアスランが王家と今後どう付き合っていくのだろうか、と心配ではなくて疑問に思って考える事はあった。
それにレコの事はどうしたのだろうか。アスランと共に城に行ったのか、村に残ったのだろうか…と、アリーはレコについては少し心配していた。
「ケプッ!」
「よしよし…。」
空腹が満たされた様子のマロンの背中を優しくポンポンと叩くと、マロンはゲップをした。
アスランとレコの事を時々思い浮かべていたアリーだが、マロンが生まれてからは慣れない子育てで頭が一杯になり、アスランとレコの事なんて全く考えていなかった事に今気がついた…。もう完全に、アスラン達の事はアリーにとって過去でしかなくなったのだろう…。
「…まぁ、アスランなら何とかするでしょうね。」
魔王を倒した勇者様だし、人助けが大好きなアスランが私利私欲の為だけに大勢の人を巻き込むような真似はしない筈だ。少数の人間が下僕扱いされる可能性がないとは言い切れないが…。
「まぁ、もう私には関係ないものね。」
「う?」
「ふふっ…。」
アリーの独り言に反応したマロンに、アリーは笑った。
◆◇◆
「お帰りなさい、バロウ。」
「あぁ、ただいま。」
サラが帰ってから数時間後、仕事を終えたバロウが帰ってきた。
「あーうぅ…。」
アリーが赤ん坊を抱きかかえながらバロウを迎えた。
「ほらマロン、パパが帰ってきたよ。」
「うぅー!」
マロンがバロウを見ると手を伸ばした。
「…おう。」
バロウはマロンの手に人差し指を差し出すと、マロンはバロウの指を握る。バロウの表情が優しくなった事に、バロウ本人は気付いていないようだ。
2人の様子を微笑ましく見ていると、マロンのお尻に違和感を感じた。
「あ、オムツ替えないと…。」
「俺がやる。オムツ持ってきてくれるか?」
アリーがオムツの準備をしようとする前に、バロウがそう言ってマロンを抱いてくれた。
「うん、有難う!」
アリーはお礼を言ってオムツを取りに行く。オムツを持ってバロウとマロンの所に行くと、バロウはマロンのお尻を拭いていた。
「あ~、臭いなやっぱり。慣れねぇわ…。」
バロウはげんなりとした顔をしている。バロウはマロンが泣くと五月蝿いと言うし嫌そうな顔をする。けれどマロンを抱き上げてあやしてくれる。今も文句を言いつつオムツを替えてくれる…アリーの夫としても、マロンの父親としても何も文句が無かった。
「臭いよね、本当に。早く成長してトイレに行けるようになって欲しいよ。」
「…だよなぁ。」
それにアリー自身もマロンへの愛おしさだけでなく、子育ての大変さからマロンの事を憎らしく思う事も多々ある。そんな時にバロウの言葉を聞くと、同じ事を思っていると確認出来て安心出来た。
両親との決別、村から出た事、バロウとの結婚、マロンを産んだ事。現時点でアリーは今までの自分の選択に後悔はない。今後の生活がどうなっていくのかは分からないが、少なくともアスランが関係する事はもう無い。アスランのせいではない人生をこの先も生きていくのだ。
「バロウ、ご飯食べる?」
「あぁ。」
「うぅ~…。」
食事の準備をしようとしたアリーを、マロンの唸り声が呼び止めた。
「…ったく、まずはコイツの飯が先だな。」
「あははっ!」
呆れた声を出しながらも、マロンに自分の指を吸わせるバロウにアリーは笑ってしまった。
これで完結となります! 最後まで読んで下さり本当に有難うございました。
アリーの両親とレコのその後は深く考えておりませんが、アリーの両親は互いに思う事があり離婚して、アリーの母親はアリーと和解する事になるかもしれませんが、アリーの父親は自分の非を認められずアリーと分かり合えぬまま1人で過ごしていくかもしれません(名前すら無かった2人でした)笑 レコは好待遇出迎えられますが、アスランの事を心配したまま寿命を迎えると思います…可哀想かもしれません(-_-;)
まさかここまで長引くとは思っておりませんでした。この話は元々短編だけで細かい人物設定とかは考えていなかったのですが、なんやかんやで30話以上続き、一番長く書いた連載作品となりました。感想や閲覧数を見て何時も嬉しく思いながら書く事が出来ました。作者は思い付いた事を衝動に任せて書いており、読み難さやツッコミどころも多いと思いますが、それでも読んで下さる皆様に心から感謝しております。
改めまして、最後までこの作品を読んで下さり本当に有難うございました!




