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初めまして、私は勇者の…。【連載版】  作者: 徒然草


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3.アリーとバロウ1

 アリーとバロウの出会いの話です。


 アスランが勇者として旅に出てからおよそ2年が経過した。アスランが今どうしているのか、魔王との勢力差がどのくらいあるのか等、この村には全く情報が流れてこない。アリーはアスランがいなくなった後、アスランに無理やり連れ回される事はなくなっただけ楽になったがそれだけだった。


「アリー、アスランがいなくなって寂しいだろうがお前もアスランを見習って人助けに向かったらどうだ?」


 アリーの父親はアリーが家で過ごしているとそう言ってくるので、アリーは用事がなくても外に出るようになっていた。


「あ、アリーがいるわよ。」

「アスランが居ないと何もしないのね。」

「やっぱりアスランに媚を売っていただけなのよ。嫌な娘よね。」


 人目につく場所に行けばアスランに好意を持つ女子達に嫌みを言われたり、悪意のある態度を取られた。彼女達は誰一人としてアリーとまともに話した事なんてない癖に、と内心思うが反論したって余計に悪い状況にアリーが追いやられるだけだと思い、アリーは何も言い返せずに黙っていた。そんな訳で、人気のない場所で何もせずに過ごすのが一番平穏に終わるのであった。だが、それも毎日という訳ではなかった。


「アリー、レコさんの様子を見に行ってあげて頂戴。」


 アリーの母親は週に3回くらいレコの様子を見に行くように言ってきた。レコはアスランの祖母だ。アスランの両親はアスランが赤ん坊の時に病気で亡くなったらしく、アリーも見た事がない。


「アリーちゃん、何時も有難うね。」


 レコはアリーが行くといつも嬉しそうに笑って迎えた。レコの家に行った日は、アリーはレコの家事の手伝いをして、掃除をして、お茶を飲みながらレコの話を聞いて1日を過ごす。


「アスランが早く無事に帰ってきてくれるといいんだけどね。あの子、元気かしら?」


 レコにとってはたった一人の家族、大切な孫だから心配するのは当然の事だ。アリーはアスランの事は嫌いだが、レコの事は嫌いではなかった。


「アスランが帰ってきたら、アリーちゃんもまた一緒に遊んであげてね。」


 でも、毎回帰り際にレコから言われるこの言葉は嫌いだった。アリーはただ曖昧に笑い、頷かなかった。誰にも心を開けないそんな毎日を過ごし、アスランと魔王の決着がつくまでこんな日常が続くのだとアリーは思っていた。



◇◆◇



「巫山戯るんじゃないよっ!!」


 しかしある日、アリーは両親に買い物を頼まれて店に行くと怒鳴り声が聞こえてきた。アリーが声のする方向へ見に行ってみると何人もの村の人が集まっていた。


「アスランを悪く言うなんて、一体何様なんだい!?」

「下らない事を言うな!! アスランは勇者として旅に出る前からとっても優しい良い子だったんだ!!」

「そうよそうよ!!」


 村の人達の視線は、見かけない男に集まっていた。


「…おいおい、俺がアスランに酷い目に遭わされたのは本当だぜ?」


 男は苦笑いしながらそう言った。しかし、


「それはお前が悪い事をしたんだろう!? アスランは理由もなくそんな事はしないっ!!」

「そうよそうよ、出鱈目を言わないで頂戴!!」


 男の主張を聞く事なく、周りの熱は高まりアスランの味方をする声が大きくなった。


「…ちっ、あー、はいはいそうかよ! 勇者アスランの崇拝者共とはまともに話せそうにねぇなっ!!」


 男は村の人達を睨みつけるとそのまま背を向けて歩きだした。村の人達は男の背中に向かって暴言を吐き続けていた。


「……。」


 アリーは何も言わず、けれど胸の中で何かを期待するように遠くなる男の背を見つめた。そして釣られるように、男の後をついて行った。




◆◇◆



「…おい、何時までついてくるんだよ!!」


「っ…!」


 男はアリーに背を向けたまま声を張り上げた。いつの間にか、アリーが普段過ごしている人気のない場所を歩いていた。アリーは男とだいぶ離れて歩いていたつもりだったがバレていたようだ。男は鬱陶しそうな表情をして振り返り、アリーを見た。


「っ…あ、あの…。」


 睨まれているような表情に、アリーは萎縮してしまった。何を言えば良いのか、どうしたら良いのか分からずに立ち尽くす。すると男がアリーに近づいてきた。


「…さっきの、俺と勇者の崇拝者共とのやり取り見てたんだろ? それで、態々俺に文句でも言いに来たのか?」


 男はアリーを嘲笑うように、馬鹿にするような口調で話す。


「ぷっ、お前みたいな女がたった1人で文句を言いにくるなんて無謀すぎるだろう! 度胸があるんだか馬鹿なんだが知らねぇが、俺は今機嫌が悪いんだよ。だから速く消えろよ。」


 男はアリーに冷たく言い放つとその場を離れようとした。


「…あ、あの…貴方は、アスランの事が嫌いなの?」


「……はぁ?」


 気づけばアリーは声を震わせながらもそう言っていた。男はアリーの質問に間をあけた後、何を言っているんだとばかりに呆れた声を出した。


「さっきのやり取り見てたんだよな? あれを見てアスランが嫌いじゃないなんてあり得ないだろう。大嫌いに決まってんだろう! なんだお前、態々そんな事を確認しに来たのかよ?」


 男の言葉に、アリーは期待していた何かがさらに大きくなるのを感じた。


「…私も。」


 アリーは男の目をしっかりと見た。


「私も、アスランの事が大っ嫌い。」


 アリーの言葉に男は驚いた顔をした後、すぐに面白そうに少しだけ笑った。


「…詳しい話、聞かせろよ。」


 期待していた何かは、アリーと同じようにアスランを嫌う人に逢えた事への喜びなのだと、アリーは思った。

 


 アスランが旅に出て約2年後の話です。今回はアリーとバロウの出会いの話でした。男というのはバロウの事ですが名前が出てきませんでした 笑 暫くアリーとバロウのやり取りが続きます。

 ここまで読んで下さり有難うございました!

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― 新着の感想 ―
ひとつだけめっちゃ気になるんだけど、アリーパパお前人助けしてるんだろうな……? たとえ本人が人助けしてたとしても他人に強制するものじゃないし、自分では何もやってないならアスランを超えるクズオブクズ認定…
短編もとても面白かったので連載されてて嬉しいです アリーが両親も見放した理由がよくわかります 勇者がなぜ、アリーを探し続けているのかよくわかりませんが、「良いことをしていると信じてる自分が否定されるこ…
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