第55話:根暗陰キャは異世界で友達を増やしたいようです・2
閑散とした山近くの地域にはチェーン店も少ない。四人は国道沿いの寂れた中華屋に入ることにした。
外から見ると幽霊屋敷のようだったが、入ってみると古民家を改装した店内はかなり広い。お昼時を過ぎているせいか客はおらず、ウッドデッキのように張り出した奥の座敷に案内された。小さな川が近くに見えて景色が良い。
一人で店を切り盛りしている初老の女性は孫のように若いグループが来たことをいたく喜び、いくらでもここにいていいと判を押してくれた。定食や餃子を食べたあとはデザートをサービスと称して運んでくる至れり尽くせりの待遇だ。
全員が食事を食べ終わる頃には、作戦会議も終わってだらっとした空気が流れていた。切華と撫子を倒すといっても、今から街を走り回って探すわけでもないし急ぐ必要はあまりない。
花梨は川を眺めながら大きく伸びをした。
「いいお店だね。また皆と来たいな……」
「それはまあ、これが最後なんじゃないか」
「まあね。私からしたら、もうどうなっても結果はそれほど変わらないのかも」
「そうだな。私が無事に転移すればそれで二度と会えなくなるわけだし、負けて死んでも最期の別れなのは同じことだ」
「皆で一度来たかったな。お姉ちゃんも、月夜ちゃんも、灯さんも、あのときパーティー会場にいた皆で。あのときは皆で一緒に楽しく暮らす世界もあると思ってたのにな。どうしてこうなっちゃうかなー」
「席には限りがあるからだよ。こういうことはきっといつでもどこでもあるんだ、受験とか運動会とか。誰にでも絶対に譲れないものがあって、パイが限られていれば争奪戦になる。私たちにはたまたまチート能力があったから殺し合いになっただけだ」
「別に誰かが悪いわけじゃないんだ、もちろん女神様やAAも含めてさ。憎み合ってなくても戦うしかないことはあるよ。でもそれって逆に言えば、殺し合ってるけどそんなに悪い状態じゃないってことでもあるんだ。幸せになるために頑張ってるだけみたいな、なんかそういうポジティブな感じを忘れないようにしたい」
霰が小百合の膝の上に転がって寝息を立て始めた。
少し前から思っていたが、霰は年齢不相応に肝が据わっている。さっきも激辛麻婆春雨を全く動じずに口に運んでいたし、作戦会議中も基本的には黙っているのに要所要所では的確なツッコミを入れてくる。
将来はきっと大物の美人になるだろうし、それが見られないのはやはり惜しい。
「その気持ちはわからないでもないが、結局殺し合うしかないのは変わらない。もう作戦も立て終わったし、あとは場所と時間を決めよう。向こうも転移するためにはこちらの人数を減らさないといけないんだ。お互いどこかで会って戦うことには同意するはずだ」
「それなんだけど、やっぱりちゃんと話したい。殺し合う二人と、殺し合う前に」
「今更話し合いで決められるわけないだろう。いくら話し合ったところで、最後には裏切って殺して転移するさ。私たちにとっての異世界転移の重みはお前だって知っているはずだ」
「別に話し合いで決めようって言ってるわけじゃないよ。話したあとは殺し合うことになると思う。でも、殺し合う前に話す時間があってもいい。私は切華ちゃんのことを誤解してるかもしれないし、理李ちゃんだってさっきまで正直に話してないことがあったよね。消化不良なままで殺し合うのはよくないと思う」
「無駄な時間だ。これから殺す相手のことを理解してどうする」
「殺すから大事なんだよ。相手を殺したら、後に残るのは相手じゃなくて相手と話した自分の記憶なんだから」
「仲間でもないやつの記憶を正しく保つことに何の意味がある?」
「私たちは殺し合うタイプの仲間だったんだと思う。同じ日に同じように自殺して異世界転移に憧れた似た者同士でさ」
「言葉遊びだろ、そんなもん。百歩譲って皆そう思っていたとしても、顔を合わせた瞬間に相手を殺さないといけない。結局そこを動かす方法はない」
そのとき、全員のスマートフォンとSwitchに通知音が響いた。一瞬顔を見合わせてから通知を開くと、discordには残りの生存者が全員加入する新しいサーバーが建てられていた。
サーバー主は撫子だ。サーバー名は「BBQ親交会@河川敷」、そしてメインチャンネルには「一時休戦契約.pdf」というファイルがピン留めされている。
あまりにも不可解な全体メッセ―ジに再び顔を見合わせる。




