第46話:車椅子少女は異世界でドラゴンに乗って飛び回るようです・1
【4/2 20:29】
小百合からdiscordで個人チャットが届いたのは五分前だ。文面は以下の通り。
「小百合です。厚かましいようですが、そちらがまだ二人以下であれば今から合流できませんか? 返信をお待ちしています」
そして穏乃からの個人チャットが三分前。
「暇でしょ? ちょっと話したいんだけど」
二通のメッセージを見て、理李は夜の更衣室で頭を抱えた。
「どうしてこうなった……」
概ね期待していた展開ではある。花梨と理李が潜伏している間に他で戦いが進み、一人余ったものが共闘を申し出てくる展開は。
だが、こうも同時に来てしまうとは思わなかった。二人受け入れると四人で溢れてしまう。一人は切らざるを得ないが、それは選ばなかった方とはただちに敵対するということでもある。ずっとネットカフェにいたせいで状況がわからず、どちらが有望かを見極める判断材料が少ない。
厄介なことに、どちらも口を揃えて通話ではなく直接会って話したいという。今後組むことを視野に入れているのだからその気持ちはよくわかるが、会うときに警戒すべきは二人がバッティングすることだ。
小百合と穏乃がお互いに仇である可能性は決して低くない。新たな仲間を探すということは相方が交戦の末に離脱したと考えるのが妥当で、しかもそのタイミングが一致しているということは二人の勢力がぶつかっていたとしてもおかしくない。因縁やら怨嗟やらで出会った瞬間に戦いが始まってしまったらこちらも合流するどころではなくなる。
とはいえ交渉を先送りにして様子見する時間はもう残っていない。明日はもう期日の三日目だ。
「どうすっかなあー……」
ぼやきながら服を脱いでシャワールームに入る。
伸びた髪を鋏で適当に切る。年頃の女子高生が鋏でセルフカットというのもどうかと思わないではないが、髪は普段よりも潤って綺麗にまとまっているような気もする。これも女神のバフのおかげかどうか、AAを呼んで質問してみようかと一瞬思ってからやめた。この狭い個室に二人も入るとぎゅうぎゅうになってしまう。
切った髪は排水が詰まらないようにビニール袋に詰めてゴミ箱に放り投げた。
「……」
小百合と穏乃とはなるべく早く会いたいところだが、日が昇って明るくなってからの方がいいだろう。人通りも多い場所を選んだ方がいい。戦力で劣るこちらとしてはなるべく人目がある場所の方が安心できる。
悩んだ末、小百合には朝八時に駅前のマクドナルド、穏乃には朝十時に商店街のミスタードーナツを指定することにした。会ったあとどうするか、特に二人を会わせてもよいかどうかはその場で話を聞いて考えよう。
シャワールームからカップルシートの個室に戻ると、花梨は相変わらずうつ伏せでダウンしている。
それも無理からぬことだとは思う。花梨の願いは姫裏と幸せに暮らすことで、それが蘇生後の翻意によって全く果たされなくなってしまったのだから。いまや花梨が異世界転移する意味があるかどうかは怪しい。
ただ、それならそれで花梨を安全にリタイアさせるという選択肢がある。姫裏が味方していない以上『蘇生』は脅威度の高い能力ではないし、見るからに戦意を喪失している花梨を見れば、他の人たちも殺さずに拘束しておくくらいで良いと考えてくれるかもしれない。
理李としては別にそれでも構わない。花梨が殺される事態は絶対に止めるつもりだし、もちろん可能なら一緒に転移したいと思ってはいる。とはいえ、本人のやる気が薄いのに無理に強いることもないだろう。
余力があれば、明日はそんな方向で花梨のリタイアも提案してみよう。
「はあ」
理李も花梨と並んで狭い革張りの床に横になり、薄い毛布を身体にかけた。かなり悪い住環境での二泊目だが、理李の口元は僅かに緩む。
家出して二人で雑な場所に雑に泊まっているという状況は割と友達っぽい気がするから。




