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【現代】ショートショート

二十年後も幸せだよ

作者: 夏灯みかん

「政治家ってのは、何やってんのや」


 休日の朝、ニュースを見ながら、ソファに座った夫が怒ったようにニュースにコメントする。


 次は野球ニュース。夫の応援しているチームが負けたシーン。


「次はウチが勝つからな!」


 画面に一人吠える夫を、対面キッチンの洗い場から眺めながら、私は既視感を感じた。

 ニュースにやたらと独り言で突っ込む、この姿。

 私の父親、親戚、テレビや漫画で見る典型的な――、


「おじさんや」


「なんて?」


「いやね、『おじさん』ってなんでみんな、テレビに独り言で突っ込むん?」


 手を拭きながら隣に座ると、夫は怪訝そうに眉を寄せた。


「俺が『おじさん』ってこと? まだ四十ちょっとやで」


「四十過ぎたら『おじさん』やろ」


 私は首を傾げた。


「だって、ケンくん、昔はニュースに独り言で突っ込んだりしてなかったもん」


「昔って、いつや」


「大学の時とか?」


 夫の健司とは、大学の同級生だった。

 当時を振り返りながら、私はうなずいた。


「いつの話をしとんねん」


 ニュースが音楽情報に変わる。海外の人気男性グループが来日して、スタジオで歌を生披露するらしい。


「あ! これ、優香の好きな”GPS”や! 録画しとこかな」


 まだ寝ている中学生の娘の好きなグループだった。

 録画しといてあげようかと、リモコンをとろうとすると、夫が眉をひそめて私を見ていることに気がついた。


「何て? お前、それじゃ、位置情報やないか」


「そやっけ? したら――”BBS”やっけ?」


「それ、掲示板――」


 夫は吹き出した。


「俺が『おじさん』なら、お前も『おばさん』やんか。『おばさん』て、何で、微妙に物の名前を間違えるんや」


 私はふと思い立って、スマホを開いた。

 ネットの写真アプリを開く。ここには大学時代の写真も入ってる。

 当時はスマホはなかったから、デジカメで撮ったやつ。

 その中に、夫と自撮りした、付き合いたてのころの写真があった。


「うわ、若っ」


 のぞき込んだ夫が、驚いたように言う。私はそんな夫に寄りかかると、スマホで自撮りをした。


 ――カシャ!


「何や急に……」


 夫はびっくりしたように身を引くと、顔を赤くした。

 ――照れた時の顔は、大学生の時のままやんね。

 私は思わず笑ってしまう。


「お母さん、お父さん、朝から何騒いでんの?」


 その時、娘が起きてきて、目を擦りながら私たちを見た。


「優香、”TBC”これから、生出演やて!」


「最終的に、全部違うやんけ……」


 呆れ顔の夫が娘をソファに手招きした。

 私はさっきの自撮り写真をアプリに追加し、昔の自撮り写真に向かって微笑んだ。


 ――ねえ、二十年後も幸せにやってるよ。

 


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