表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『春、夜』

作者: 天斗海 草月

今日の日付は3月31日だ。


そして今の時刻は23時48分26秒。


俺は中学3年生、卒業式は終わった。


あと数分で俺は高校生になる。


行く高校は決まっている、とある公立の学校、結構良いところだ。


中学の先生からは、3月31日の24時までは中学生なんだから、気を抜くなよ。


とか言われた。


中学生生活、それは楽しかったとも。


最高だった。


それが、あとちょっとで終わるんだ。


俺は今、学校のに向かっている。


ある奴と会うためだ。


なんというか、彼女といえば分かりやすいかもしれない。


俺の彼女。


今から、会いに行く。


高校は別、だからこれからはもう殆ど会えない。


せめて最後の日ぐらい、思い出を作りたかった。


校門が見えてくる。


そこに彼女は居た。


制服を着て、1人で立っている。


「おぉい」


大声で呼んでみる。


気づいてくれたようだ。


俺は彼女の元へ近づく。


「ねぇ、今日も良い夜だね」


「おう、最後に相応しい感じの夜だ」


「これで、私達も別々になるんだよね」


「まぁな、でもまた会えないわけじゃない、会おうと思ったらいつでも会えるさ」


俺は彼女の額をさわる。


眼が少し赤いのは気にしないでやろう。


時計を見る、時間を確認する。


「あと3分で俺達の中学生生活も終わりだ」


「そっか……あと少しか……」


俺は何を言わず彼女に抱きつく。



季節は春、校庭の桜は少し咲いている。


身体に触れていく風。


心地よい。


心も、身体も温かい。



心の中で思う。


あぁ、あと1分だ。


今までのことを思い出す。


笑ったこと、泣いたこと、怒ったこと……。


なんて楽しい日々だったのだろうか。


思い出すのは一瞬。


そして現実に引き戻される。


あと34秒。


あと33秒。


あと32秒。



「知ってるか」


「何??」


「春、それは終わりの季節である。夜、それは1日の終わりである」


「今の状況にぴったり」


「その通りだな」


「ずっと、ずっと、大好きだよ」


「俺もだ、いつまでも、大好きだ」


あと8秒。


「カウントダウン、してくれ」


「5」


『4』


『3』


『2』


『1』


『0』


俺はゆっくりと彼女から離れる。


12時6秒。


12時7秒。


12時8秒。






















そして、俺は言う。








































彼女に、大きな声で。


























































「俺と、付き合ってください」


そして彼女は言う。


「もちろん、喜んで」



俺達は手をつないで、学校から離れていった。


「遠距離になるけど、本当によかったのか??」


「何度も言わせないの」


「んー、まぁ、いっか」


「そうそう、好きであれば別にいいの」


「そうだな」


「ねぇねぇ、さっき、春と夜の話したじゃん」


「あーと、春、それは終わりの季節である。夜、それは1日の終わりである、だっけ??」


「それ、実は続きがあるのよねー」


「え、本当かよ」


「知りたい??」


「是非とも」


「春、それは始まりの季節である。夜、それは1日の始まりでもある。」


「対句かよ」


「そんな感じなんじゃないの??」


「でも、良い言葉だ」


「そうね」


「これからも、ずっと一緒に居れる」


「ずっとは無理かもねー」


「……そんなこと言うなよ」


「もちろん嘘だけどね」






そんな話をしながら、俺達は帰っていった。




今日の日付は4月1日だ。


そして今の時刻は0時13分49秒。


俺は今、高校1年生。


そして、彼女居ます。






そうだ、忘れないでおこう、この言葉を。





春、それは始まりの季節であり、終わりの季節でもある。


夜、それは1日の終わりであり、1日の始まりでもある。


終わりは、1つの始まり。





良い言葉だな。


昔書いた奴って、やっぱり今見返してみると怖い。かなり怖い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 全部ですね! 特にラストが良かったと思います。 [気になる点] 短小説と云っても、もう少し長い方が、と思います。 あ、あくまで自身の意見なので、お気になさらず。 [一言] 小説と云うか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ