有害な硬貨
日本の、ある大都市。
平日の日中で、あまり人がいない公園。
かなり広く、飲料の自販機がある。
その公園にはホームレスが数人。
身なりのいい、若い女性が、中年男性のホームレスに声をかけた。
「1万円あげるから、私の言うことを聞いて」
彼は狂喜して、「何ですか?」
「この10円玉を、自販機のコイン受取口に置いてほしいの」
それから約30分後。
公園に入って来た、予備校生の男子。
自販機から飲料を買った。
千円札を入れ、おつりの硬貨を取ったが、毎日の勉強で疲れていたのか、金額には注意していなかった。
10円多かった。
彼は学校で授業を受け、帰りにコンビニで買い物を。
あの10円硬貨も支払いに使った。
このお金。
有害という意味は、病原体ではなく、別の物質で汚染されていて、健康にきわめて深刻な影響を及ぼすところにある。
コンビニのレジに入れられた10円玉。
交代した店員さんが扱い、釣り銭の一部として客に渡された。
その客は後日に、公園からかなり離れた出先の自販機で、その硬貨を使った。
それからどうなった?
くだんの10円玉は、海外にある。
来日した旅行客が、上述の自販機を利用。
受け取った釣り銭の中に、あの10円硬貨が。
その人は、日本の硬貨を、旅行の記念に持ち帰った。
硬貨自体はどこの国にもあり、サイズはほぼ同じ。
ただし、図柄や、お金の単位は、国により異なる。
帰国した人は、「これは日本の硬貨だ」と、家族や周りの人たちに見せたが、後日に、本人や見た人たちには、深刻な問題が。
さて、話を最初に戻し、女性から破格の報酬でいとも簡単な仕事を依頼されたホームレスや、予備校生、コンビニの店員さん等はどうなった?
書かないほうが無難。
硬貨を汚染している有害物質の出自についても、省略するのが適切。
あの女性についても、不明ということにする。