18話.明日は文化祭です
今話は少し短いです。
クラスの皆に踊りの動画を公開してから、日が過ぎるのはあっという間だった。
世間では私立鶴見川高等学校の文化祭が話題になっている。
なんせこの文化祭、外部からの入場数をチケットで制限しているのだ。
それを『スターナイツ』が参加するとなって、チケットの価値が爆発的に上がってしまった。
もはやプレミアものの価値がつき、その値段は一枚数十万円で取引される事もあるのだとか。
それでも売らないという人の方が多く、日に日に値段が高まっていった。
流石にこれ以上は暴動や、人から略奪しようとする者が出る可能性もある為、学校側で対策を取る事にした。
学校側は初期の購入者を全員リストで管理している。
これは毎年の事なので、きちんとファイルに収めてあるそうだ。
それを利用し、校門でチケットと購入者の照らし合わせをする事を公表した。
お札と同じように、文化祭のチケットにも番号が振ってあり、それを誰にどの番号を売ったかきちんと管理してあるらしい。
それを『スターナイツ』が動画で公表した途端、騒ぎは嘘のように静かになった。
なんせチケットを他の人から売ってもらっても、入れないからね。
で、学校側はそれに対して、チケットを他の方から購入した人はこの日(動画の翌日だったよ)に持ってきて貰えば、対応すると。
それ以降はただの紙切れになると公表した。
また、その持ってきたチケットと購入者を照らし合わせ、次回以降の購入を禁止するとも。
ただそれだと、転売した人は痛くも痒くもないだろうから。
『今回文化祭に来てくれた人は、時間の許す限り私と握手をしていこう。わざわざ来てくれたんだからな。ちなみに私がそんな事をするのは初めてだからな』
そう動画でレオナが言った。
これにはチケットの付加価値が滅茶苦茶について、転売した人が買い戻そうとしたらしいけど、全員が断られて泣いているのをSNSで知った。
まぁ当日、僕は死ぬほど辛いだろうけど……僕は転売とかする人嫌いなので。
その人達に少しでも後悔させる事が出来るのなら、その苦労も報われると思ってる。
ユリアやユナには驚かれたけど、理由を話したら呆れ顔で納得してくれた。
そんな事もありながら、文化祭の日は近づいていった。
クラスの皆は完璧に踊りを覚えたし、当日の予行演習も何度も繰り返している。
動画の件もあって学校側も協力的で、体育館は全開放して扉を取り外し、外からでも見えるようにしてくれた。
少しでも多くの人が見れるように、モニターもすでに設置済みだ。
運動場でも見る事が出来るように、バスケットゴールの場所にモニターを引っ付けた台を設置して、中に入れなかった人も見れるように準備は出来ている。
多くの人が楽しめるように、皆が力を合わせて行う文化祭。
僕は二年生だから、来年もあるけれど……三年生の人達は今年で最後の文化祭になる。
受験を控えた先輩達が、一時でもそれを忘れて楽しめる時間にしてあげたいと思う。
そして博人や皐月さんをはじめ、クラスメイトの皆と記憶に残る文化祭にしたい。
レオナとしてだけでなく、僕としても認めてくれたユリアとユナの為にも、レオナとしての力を出し切ろうと思う。
「お兄ちゃーん! お風呂あがったよー!」
「分かったー!」
美香の声が聞こえたので、返事をする。
さて、お風呂に入って、明日の文化祭に備えるとしよう。
皆が最高の一日だと思えるように。




