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男だけど期間限定でアイドル♀活動してます  作者: ソラ・ルナ
第二部

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19/35

4話.バンド『グローライト』を助けました

 『スターナイツ』メンバーに男バレした翌日の学校。

 二人は姫咲拓都とはちゃんと距離を取ってくれるようで、クラスメイトに話しかけられながらこちらの席に来るような事は無かった。


「どうやら心配事は解決したみたいだな?」


 そう言って僕の机まで来たのは博人だった。


「うん。心配かけたね」

「ま、解決できなくて不安な時は、遠慮なく頼ってくれよなタクト」


 そう笑いながら言ってくれる。

 本当に良い奴なんだよね博人は。


「ヒロー! あーしを放っておいてまーたひっきーに絡みに行ってるしー」

「そう言うなよさっちゃん。俺の大事な親友なんだよー」


 博人に後ろから乗り掛かり、おんぶ状態になっているこの人は、博人の彼女で佐川(さがわ)皐月(さつき)さん。

 僕の事をひっきーと呼ぶこの人は、博人と対を成す陽キャラというかギャルである。

 ただ、ギャルと言っても身持ちが硬く、博人以外のスキンシップは全くない。

 他の男子からその点を言われた時に、


「だって博人以外皆モブにしか見えんし。博人にそんな事で疑われるの嫌だし。あーしは博人一筋なんで」


 と言って、多くの男子を撃沈させた。

 可愛い系の美少女なので、凄く人気が高いんだよね。

 ユリアやユナにも勝らずとも劣らないレベルだ。


「しししっ! わーかってるってば! ヒロはひっきーの事大好きだもんねー!」

「おま、誤解されるような言い方すな!」

「照れるな照れるな! あーしはそういうのに理解あるほうだし! ひっきーならあーしはオケ!」

「あの、さりげなく僕を巻き込まないでくれるかな?」


 この二人は話していると話があちこちに飛ぶので、一応突っ込んではおく。

 あんまり意味ないんだけどね。

 にしても、声に何か違和感を感じる。

 いつもより重いというか、苦しそう? な気が……。


「そだヒロ! 今日の午後のライブの準備、大丈夫だし?」

「ああ、俺は大丈夫だぜ! さっちゃんこそ歌大丈夫だろうな?」

「しし、誰に言ってるし!」


 って考えた傍からすぐに話が変わった。

 それよりも、ライブ?


「今日の午後ライブするの?」

「ああ、本当は昨日話そうと思ってたんだけどさ」


 成程、僕の状態を見て話せなかったんだね。

 本当にごめん。


「ししっ! あーしら『グローライト』も、レオナちゃん達の『スターナイツ』目指してライブ頑張ってるし!」

「おう! 今日はイオンモールの広場で公開させて貰えるんだぜ!」


 あー、以前買い物に行った時に、募集してたのを思い出した。

 そっか、博人達応募したのか。

 博人達『グローライト』のグループは、ボーカルの皐月さん、ドラムの博人、そしてギターとベースの四人だ。

 ベースの人とギターの人は、僕は面識がないので分からないけれど、以前聴いた時の印象は悪くなかった。

 ボーカルの皐月さんに合わせてギターの人も歌ってサポートしたりしていたし、ベースの人は非常にリズムを取るのが上手かった。


 僕達の後から始めたグループだけど、その知名度は上がってきていると思う。

 だからこそ、応募が通ったのだろう。


「タクトも時間があれば見に来てくれよな!」

「ししっ! あーしの歌声で魅了してあげるし!」


 なんて二人仲良さそうに笑う。

 うん、この二人のグループは個人的にも応援しているので、見に行こうと思った。

 丁度今日は水曜日。

 水曜日は星美レオナとして行動する日となっている。

 ユリアやユナと違って、どこの学校に行っている等の情報が全くでない星美レオナは、普段の情報が少しでも出るようにと事務所の方から週一で行動してほしいと依頼されているのだ。

 勿論仕事が入った場合は別だが、幸い今は仕事が入っていない。

 まだ高校生なのもあって、事務所側が仕事を取捨選択してくれているお陰だ。


「うん、遠くからになるだろうけど、見に行くよ」

「ホントか!? よーし、めっちゃ俺頑張るからな!」

「こらヒロー! それ彼女に応援された時に言うやつだしー!」

「いやさっちゃんは一緒にやるじゃん!?」


 なんてまたイチャつきはじめたよ。

 僕には彼女なんて居ないので、少し羨ましい気もするけれど……博人と皐月さんには幸せになって貰いたいので、心は穏やかだ。

 イオンモールで18時からだったかな。

 その時間に合わせて、行ってみるか。



―姫咲拓都と別れた後―



「さっちゃん、大丈夫か?」

「な、何がだし?」

「声。練習沢山したのを俺は知ってる。そのせいで、喉、傷めてるだろ?」

「っ!! やっぱヒロには隠せないね。ん、でもせっかく掴んだチャンスだよ。イオンモールなんて大きなスーパーでバンド出来るなんて、滅多にないし。ここが踏ん張りどころだし」

「さっちゃん……。確かに『グローライト』の知名度を上げるのも大事だけどさ。俺はさっちゃんの方が大切だぜ? 苦しかったら、先方さんには申し訳ないけど、辞めたって……」

「それは絶対ダメだし! ゲホッゴホッ!」

「さっちゃんっ!」

「それは、ダメだし。せっかく、今まで頑張って来たんじゃん。それがあーしのせいで潰れるなんて、あーしがあーしを許せないし……。だからお願い、一緒にがんばろっ」

「……分かった。時間まで、せめてのど飴でも舐めておくんだぞ」

「ん! だからヒロ好きだし!」

「はは。頑張り屋な子を彼女にもった彼氏は、応援したくなるんだよ」



 授業が終わり、放課後になった。

 博人と皐月さんは、一足先に向かったのだろう。

 僕も一旦家に帰って、美香のご飯を用意しておいてから向かうとしようかな。


「あっ、姫咲君!」

「ん? ああ、明野さん。どうかしたの?」


 努めて平静を装って返事をする。

 学校では距離感を間違っちゃいけない。


「あのあの、ダンスの練習の件なんだけどっ……!」


 成程。一緒に居ても大丈夫なように、周知する作戦か。


「今日はちょっと用事があって。また今度でも大丈夫かな?」

「あ……。うん、大丈夫! それじゃ、時間がある時にお願いしますっ!」

「うん。ごめんね」


 そう言って席を立ち、家へと帰る。

 周りのクラスメイトが「姫咲、明野さんと一緒に居られる時間より大切な約束があんのか!?」なんて言ってるのが聞こえてきたけれど。

 まぁ、そうとも言えるので何も言うまい。


 そうして家に着いたので、早速冷蔵庫から……あっー!

 そういえば火曜日にスーパー寄れなかったので、食材がっ……ないっ!

 いやない事はないのだけど、これでは一人前ぐらいしか作れない。

 仕方ない……美香の分を作っておいて、僕はバンドを見た後の帰りで何か買うとしよう。

 丁度行き先がスーパーだし。

 そう思って料理を簡単に作り置きしておく。

 出かけてくるから、これ全部食べて良いからね、とメモ用紙を残してから、星美レオナに成りに行く。


 メイクをして、女物の服に着替えて。

 完成だ。

 後はっと。


「もしもし。後藤さん、いつもすみません。はい、そうです。今回はイオンモールまで。はい、お願いします」


 これでよしっと。

 うちの門から庭、玄関へと通る道があり、そこに専用のスペースがある。

 ここを使う事で、私は誰にも住所がバレていないというわけだ。

 待つ事少し、後藤さんが来てくれたので、移動を開始する。


 時間は17時半。少しゆっくりし過ぎたかもしれない。

 博人達の所に着くころには、丁度良い時間になるだろう。


 それからイオンモールの広場に着いたのは18時5分。

 普通なら始まっているであろう音楽が、聞こえてこない。

 もしかして何かあったのか?

 騒ぎになったら困るので、今は帽子を深く被って顔が見えないようにしているし、近づいてみる。


「ゲホッゴホッ……! うぅ、皆、ホントごめんし……」

「さっちゃん、無理するな! 良いんだ、止めなかった俺の責任だっ……」


 舞台の上で、涙を流しながら座り込んでしまっている皐月さん。

 あの時感じた声の違和感。そういう事か。

 普段明るい、泣いた所なんて見た事のない皐月さん。

 辛くても、辛い表情なんてした事のない博人が、本気で苦しい表情をしている。

 ……僕は、頭に被っていた帽子を投げ捨て、後先考えずに舞台へと上がる事にした。


「お、おいっ! アレッ!!」

「星美レオナ!?」

「嘘ッ!?」

「「「「「ワァァァァァッ!!」」」」」


 僕は、私は二人を真っすぐ見つめる。


「え、あ……、う、うそ……レオナちゃんが、目の前にいるし……」

「……私達の歌は、演奏できるか?」

「「「「!!」」」」


 私の言葉に、博人とギター、ベースの人が頷く。


「よし、なら『starlight』の演奏を頼む。私が歌い、踊る。バンド名は『グローライト』だったな?」

「「「「!!」」」」


 全員が同時に頷く。

 後は最後に聞いておかないと。


「踊れるか?」

「!?」

「声は出さなくても良い。何もしないのは辛いだろ? 私が合わせてやる。踊れるなら、手を取れ」


 あくまでクールに、手を差し出す。

 その手を躊躇いがちに、でもしっかりと握った皐月さんの目は、しっかりと私を見ていた。


「OK。『グローライト』ready!」


 私の合図で、演奏が始まる。

 音楽こそ『グローライト』の物ではなく、皆が聴きなれた『スターナイツ』の曲だけど。

 私はギター、ベース、そしてドラムの博人を視線で合図しながら、リズムを合わせていく。


「す、凄いし……レオナちゃん、ううん。レオナ様、一瞬で皆のリズムを支配したし……!」

「お前も良い踊りをしている。ステップを上げていくぞ、ついてこれるか……!」

「!! 歌を歌いながら、ホント凄いし……ゴホッ……あーしも、負けてられないし……!」


 声は相変わらず苦しそうだけれど、その踊りは私にちゃんとついてきている。

 必死に練習しただけでは、こうはならない。

 やはり皐月さんには才能もあると思う。


「「「「「ワァァァァァァッ!!」」」」」


 歌と踊りが終わり、今回は速くの終了となったが、一応上手く助けられただろうか。

 帰り際の二人の視線が照れくさかったけど、私は無言でその場を去った。

 夕食はもう食材を買う余裕なんて無かったので、後藤さんに買ってもらった。


 その後、SNSでは『イオンモールに星美レオナ現る!』

 という題名で、またバズっていたのだそうで。

 家に帰ると、興奮しているのが分かる博人からのメッセージが届いていた。


『俺、星美レオナのファンになったわ! もうめっちゃカッコイイのな! 世間の皆が騒いでる理由が俺にもようやく分かったよ!』


 この、親友から女装姿を推された僕の気持ち、分かる人居る?

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