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男だけど期間限定でアイドル♀活動してます  作者: ソラ・ルナ
第二部

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16/35

1話.アイドル活動を続ける事にしました

続きを読みたいと言ってくれる方がいらしたので、第二部書き始めました。

楽しんで頂けたら嬉しいです。

「それじゃ、また明日ね拓都」

「またね姫咲君っ! ……あのあの、私も拓都君って呼んじゃダメ、かな?」

「え?」

「その、美香ちゃんや家族の方も今後会うだろうし……」

「あ、ああ。そういう事。構わないよ。ただ、クラスの皆が居る時に二人から下の名前で呼ばれると、僕がリアルに死ぬかもしれないので、勘弁して頂けると……」

「? よく分からないけど、私達だけで居る時とレオナちゃんじゃない時は良いって事?」

「うん、その理解で大丈夫」

「分かった! ありがとう、た、拓都君!」

「あ、ああ」


 なんか凄く照れるのは何故だろう。


「そうだ拓都、LINEは登録しているかしら?」

「うん、一応」

「なら私達でグループを作っておきましょう。レオナの時は断られたけれど、もう良いでしょう?」

「そう、だね。それじゃ二人が良ければ……」

「勿論良いに決まってるよ! やったぁ!」

「ふふ。これで拓都といつでも連絡が取れるわね」


 嬉しそうにする二人に、僕も嬉しくなってしまう。

 というか、スマホも使い分けた方が良かった気もする。

 僕がこの二人とLINEしてると博人にバレたら……。


「さて、行くわよユリア」

「うんユナちゃん!」


 ユナは片手を軽く振って、ユリアは大きく振って、対照的な二人は車へと歩いていく。

 見送りはしなくて良いと言われたので、玄関へと戻ると美香がぐてっとなっていた。


「どうしたんだ美香」

「どうしたって……お兄ちゃんはホント体力馬鹿で羨ましいよ……」


 そりゃ、アイドルは体力勝負だぞ。

 歌って踊って辛い顔を決して見せちゃいけない。

 僕というか私は笑わないけど、ユリアは元気いっぱいに常に笑っているし、ユナだって表情を崩した事はない。

 練習では凄い汗をかくけど、本番では汗をかかないように工夫している。

 本番前に温冷シャワーを繰り返し浴びるだったり、首の裏は体感的に冷えを感じやすいから、ひんやりグッズを首裏に当てたり。

 これは、汗は冷たいというサインを脳に届けることで軽減できるからだ。


 後は短時間であれば、紐で胸の上あたりを圧迫するようにぎゅっと縛ると、汗を大分減らす事が出来る。

 窮屈だけどね。

 でもそれくらい、アイドルは見栄えが大事だから。

 美は作るものだからね。

 なんて、全部姉さんの受け売りだけど。


「とりあえず、姉さんに連絡送っておかないとな。父さん母さんが帰ってくるかもしれないし」

「そうだねー。私はお風呂先に入って良いかなお兄ちゃん。汗かいちゃって」

「踊ったのは僕達で見ていただけの美香がなんで汗かいてるの」

「う、うるさいな。見てて熱くなっちゃったんだから、仕方ないじゃない! あの遠くからしか見れない『スターナイツ』の歌と踊りを目の前で見れたんだよ!? ファンに殺されても文句言えない贅沢なんだよ!?」


 それを『スターナイツ』のメンバーである僕に言うのもどうかなと思うのだけども。


「分かった分かった。父さんと母さんは分からないけど、少なくとも姉さんは帰ってくるだろうし、お湯の温度は一定になるようにしておいて」

「後でおいだきすれば良いんじゃない? 電気代かかるよ?」

「姉さんはそのおいだきの時間を待たずに入ろうとするから……」

「あー……」


 理解に至ったのか、美香も呆れた表情をする。

 あの姉さんは、本当に家だとだらしないので。


 美香はお風呂場へと向かったので、僕はスマホをつけてLINEを起動する。

 すると、早速通知が来た。


"今日はお疲れ様でした拓都君! 拓都君も私の事は響って呼んでね!"

"お疲れ様。今日はとても良い一日だったわ"


 二人がそんなメッセージを送ってくれていた。

 僕も忘れないうちにメッセージを送っておこう。


"了解だよ響。学校では明野さんって呼ぶけどね。こちらこそ、今日はありがとう。二人が僕を受け入れてくれて、嬉しかった。また明日、学校で"


 よし、送信と。

 後は姉さんに今日の事を報告しておいてっと。

 うわっ、凄い速さで返信が届いた。


"連絡ありがとう拓都。心配していたけれど、最良の結果になって良かったわ。これでレオナちゃんは逃げられなくなったものね♪"


 ……言われてみればそうだ。

 一年という期間限定のはずだったのに。

 僕が返事を送る前に、怒涛のラッシュで畳みかけてくる姉さん。


"まさかユリアちゃんとユナちゃんが認めてくれたのに、辞めるなんて言わないわよねぇ? そんな薄情な事、拓都がするわけないもんね! お姉ちゃん分かってるから!"


 くっ、この姉はっ! 僕が返事をする前に有無を言わせぬメッセージを!


"ふふ、冗談はさておき。もう少しの間、レオナちゃんとして目指してみる気はある? あのユナちゃんが言うように、拓都としてデビューしたって良いとも最近は思ってるけど"


 姉さんの言葉に、僕は少し考える。

 だけど、答えはやはり決まっていた。

 僕は、ユリアとユナと一緒に歌って踊るのが好きだから。


"やるよ、姉さん。少なくとも二人が諦めない内から、僕が辞めるなんて事はしない"

"そう。拓都ならそう言うと思ってた。それじゃ、お姉ちゃんも仕事片付けて帰るから、美味しいご飯作って待っててね! お父さんとお母さんは、このまま仕事で帰らないから、私達三人分で良いからねー"


 姉さん、父さんと母さんに押し付けたな。

 あの二人は姉さんに激甘だからなぁ……。

 まぁだからと言って、僕達に冷たいわけじゃないけれど。


「お兄ちゃーん! タオルがなーい!?」


 あ! そういえば洗濯しようと思ってそのままにしてた!


「ちょっと待ってろー! 新しいの開けるからー!」

「はーい! 扉の所に置いててねー!」


 それから姉さんが帰ってくるまでの間に料理をして、軽く掃除をして、ようやくゆっくりテレビを見れるかって時に姉さんが帰ってきて、今日の事を話しながら夕食を終えるのだった。

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