1話.アイドル活動を続ける事にしました
続きを読みたいと言ってくれる方がいらしたので、第二部書き始めました。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
「それじゃ、また明日ね拓都」
「またね姫咲君っ! ……あのあの、私も拓都君って呼んじゃダメ、かな?」
「え?」
「その、美香ちゃんや家族の方も今後会うだろうし……」
「あ、ああ。そういう事。構わないよ。ただ、クラスの皆が居る時に二人から下の名前で呼ばれると、僕がリアルに死ぬかもしれないので、勘弁して頂けると……」
「? よく分からないけど、私達だけで居る時とレオナちゃんじゃない時は良いって事?」
「うん、その理解で大丈夫」
「分かった! ありがとう、た、拓都君!」
「あ、ああ」
なんか凄く照れるのは何故だろう。
「そうだ拓都、LINEは登録しているかしら?」
「うん、一応」
「なら私達でグループを作っておきましょう。レオナの時は断られたけれど、もう良いでしょう?」
「そう、だね。それじゃ二人が良ければ……」
「勿論良いに決まってるよ! やったぁ!」
「ふふ。これで拓都といつでも連絡が取れるわね」
嬉しそうにする二人に、僕も嬉しくなってしまう。
というか、スマホも使い分けた方が良かった気もする。
僕がこの二人とLINEしてると博人にバレたら……。
「さて、行くわよユリア」
「うんユナちゃん!」
ユナは片手を軽く振って、ユリアは大きく振って、対照的な二人は車へと歩いていく。
見送りはしなくて良いと言われたので、玄関へと戻ると美香がぐてっとなっていた。
「どうしたんだ美香」
「どうしたって……お兄ちゃんはホント体力馬鹿で羨ましいよ……」
そりゃ、アイドルは体力勝負だぞ。
歌って踊って辛い顔を決して見せちゃいけない。
僕というか私は笑わないけど、ユリアは元気いっぱいに常に笑っているし、ユナだって表情を崩した事はない。
練習では凄い汗をかくけど、本番では汗をかかないように工夫している。
本番前に温冷シャワーを繰り返し浴びるだったり、首の裏は体感的に冷えを感じやすいから、ひんやりグッズを首裏に当てたり。
これは、汗は冷たいというサインを脳に届けることで軽減できるからだ。
後は短時間であれば、紐で胸の上あたりを圧迫するようにぎゅっと縛ると、汗を大分減らす事が出来る。
窮屈だけどね。
でもそれくらい、アイドルは見栄えが大事だから。
美は作るものだからね。
なんて、全部姉さんの受け売りだけど。
「とりあえず、姉さんに連絡送っておかないとな。父さん母さんが帰ってくるかもしれないし」
「そうだねー。私はお風呂先に入って良いかなお兄ちゃん。汗かいちゃって」
「踊ったのは僕達で見ていただけの美香がなんで汗かいてるの」
「う、うるさいな。見てて熱くなっちゃったんだから、仕方ないじゃない! あの遠くからしか見れない『スターナイツ』の歌と踊りを目の前で見れたんだよ!? ファンに殺されても文句言えない贅沢なんだよ!?」
それを『スターナイツ』のメンバーである僕に言うのもどうかなと思うのだけども。
「分かった分かった。父さんと母さんは分からないけど、少なくとも姉さんは帰ってくるだろうし、お湯の温度は一定になるようにしておいて」
「後でおいだきすれば良いんじゃない? 電気代かかるよ?」
「姉さんはそのおいだきの時間を待たずに入ろうとするから……」
「あー……」
理解に至ったのか、美香も呆れた表情をする。
あの姉さんは、本当に家だとだらしないので。
美香はお風呂場へと向かったので、僕はスマホをつけてLINEを起動する。
すると、早速通知が来た。
"今日はお疲れ様でした拓都君! 拓都君も私の事は響って呼んでね!"
"お疲れ様。今日はとても良い一日だったわ"
二人がそんなメッセージを送ってくれていた。
僕も忘れないうちにメッセージを送っておこう。
"了解だよ響。学校では明野さんって呼ぶけどね。こちらこそ、今日はありがとう。二人が僕を受け入れてくれて、嬉しかった。また明日、学校で"
よし、送信と。
後は姉さんに今日の事を報告しておいてっと。
うわっ、凄い速さで返信が届いた。
"連絡ありがとう拓都。心配していたけれど、最良の結果になって良かったわ。これでレオナちゃんは逃げられなくなったものね♪"
……言われてみればそうだ。
一年という期間限定のはずだったのに。
僕が返事を送る前に、怒涛のラッシュで畳みかけてくる姉さん。
"まさかユリアちゃんとユナちゃんが認めてくれたのに、辞めるなんて言わないわよねぇ? そんな薄情な事、拓都がするわけないもんね! お姉ちゃん分かってるから!"
くっ、この姉はっ! 僕が返事をする前に有無を言わせぬメッセージを!
"ふふ、冗談はさておき。もう少しの間、レオナちゃんとして目指してみる気はある? あのユナちゃんが言うように、拓都としてデビューしたって良いとも最近は思ってるけど"
姉さんの言葉に、僕は少し考える。
だけど、答えはやはり決まっていた。
僕は、ユリアとユナと一緒に歌って踊るのが好きだから。
"やるよ、姉さん。少なくとも二人が諦めない内から、僕が辞めるなんて事はしない"
"そう。拓都ならそう言うと思ってた。それじゃ、お姉ちゃんも仕事片付けて帰るから、美味しいご飯作って待っててね! お父さんとお母さんは、このまま仕事で帰らないから、私達三人分で良いからねー"
姉さん、父さんと母さんに押し付けたな。
あの二人は姉さんに激甘だからなぁ……。
まぁだからと言って、僕達に冷たいわけじゃないけれど。
「お兄ちゃーん! タオルがなーい!?」
あ! そういえば洗濯しようと思ってそのままにしてた!
「ちょっと待ってろー! 新しいの開けるからー!」
「はーい! 扉の所に置いててねー!」
それから姉さんが帰ってくるまでの間に料理をして、軽く掃除をして、ようやくゆっくりテレビを見れるかって時に姉さんが帰ってきて、今日の事を話しながら夕食を終えるのだった。
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