11話.姉さんも相変わらずでした
本日2話目です。
「よし、出来上がりっと。美香、テーブルに並べてくれるか?」
「はいはーい!」
午後8時、ちょっと遅めの夕食だ。
夕食のベストタイムは18時から19時と言われている。
人間の体には1日のリズムを作り出す体内時計が備わっていて、心や体が活発な時間や休息する時間が決まっているからね。
体内時計はズレやすいし、その乱れが肥満や生活習慣病、不眠などさまざまな体の不調に繋がってしまう。
僕だけじゃなく、妹の体調管理も預かる身としては、食事の時間は気をつけたい所なのだけど……
「ぷはぁっ! やっぱり家に帰って飲むビールは最高ねっ!」
姉さんを待っていたら、遅くなってしまったのだ。
とはいえ、姉さんは僕達の為に色々と仕事をしてくれているので、この程度の事で愚痴を言ったりはしない。
「姉さん、明日も仕事なんだから飲み過ぎはダメだからね」
「わーかってるぅ! あ、レオナちゃんがお酌してくれたらこの一本で終わらせるわよぉ!」
「どうぞ酔い潰れてください」
「あぁん! 弟が冷たいよぉ美香ちゃぁん」
「はいはいお姉ちゃん。まだ対して酔ってないくせに、酔っ払ってる振りしないの」
「わぁん、そんな娘に育てた覚えはないぞぉ!」
「まぁお姉ちゃんの年齢なら、子供が居ても不思議じゃないけど」
「……」
「姉さん、いきなり素面になって黙るの止めてくれる? 心臓に悪いから」
「うぐっ……だって仕方ないじゃない。仕事が今楽しいんだもの」
「そう言って結婚適齢期を過ぎて行った女性が沢山居るんだよお姉ちゃん……」
ワイドショーでもこの間取り上げられていたなそういえば。
働き方改革とかで、女性の社会進出は目覚ましい。
管理職も女性が多くなってきているし。
夫婦共働きや、独身で仕事を生きがいにしてる女性も増えているとか。
「良いもん。私が行き遅れたら拓都に貰ってもらうから」
「え、嫌です」
「滅茶苦茶素で私からのプロポーズを拒否したよこの弟!」
「姉さんの言うように、そもそも弟なんだってば」
「性別の垣根なんてっ!」
「性別じゃなくて家族なの! 血が繋がってるの! いや待ってそもそも性別は男女で合ってるから!」
「お兄ちゃん、お姉ちゃんの戯言に付き合ってたらご飯が遅くなるよ……」
「ざれごと!?」
「そうだね。さ、食べようか」
「弟と妹が冷たい件について」
「「いただきます」」
「無視!?」
姉さん、仕事とプライベートのオンオフが凄くて、プライべートだとすっごいだらしない欠点がある。
仕事時はテキパキと指示を出して、それはもうカッコイイのだけれど。
「むぅー、相変わらず拓都のご飯美味しい。あ、テレビつけるからリモコン貸して美香ちゃん」
「はいお姉ちゃん」
「ありがと♪」
自分で取れる距離にありながら、妹を動かす姉である。
まったく、我が姉ながら仕方のない。
『それではっ! 今日の音楽ランキングの発表ですっ!』
テンションの高い司会が、音楽ヒットチャートの順位を発表するようだ。
10位から順に発表されていく。
「お、やっぱり2位はグレイ君かぁ。あの人ソロなのに凄いよね」
「歌ってるのはねー。バンドで音楽の仲間はいるじゃない」
「それはそうなんだけど。あ、1位の紹介だっ!」
『そして1位はっ! 皆さんもうお判りでしょう! 『スターナイツ』の【starlight】ですっ!』
「やっぱりスターナイツだよお兄ちゃん! おめでとー!」
「今の僕はレオナじゃないぞ美香」
「んもう、分かってるよぅ。でもおめでたいんだから、良いじゃない!」
「それならレオナにしちゃえば良いのよ美香ちゃん」
「それだっ!」
「いや、それだじゃないからな美香! 姉さんも何言ってんだ!」
「よいではないかー、よいではないかー!」
「お代官様か!」
「美香ちゃん、やるわよ!」
「うんお姉ちゃん!」
「やーめーろー!! 良い大人がこんな事して恥ずかしくないのかー!?」
「レオナちゃんの為なら、私は心を鬼にするわ!」
「この姉はー!!」
こうして僕は、また着せ替え人形よろしく、星美レオナの姿にされ、両端から二人に抱きしめられ……もとい拘束されてしまうのだった。
「そうだレオナちゃん、ユリアちゃんにバレたみたいだけど、ユナちゃんにはまだバレてないのよね?」
急に真面目な事を言い出す姉さんに驚きながらも、私は返事をする。
「うん。ごめん姉さん。もう少し気をつけるべきだった。学校の件もそうだけど」
「学校の件は、レオナちゃんの不注意もあるけど、SNSに勝手に上げた人が一番悪いわ。ちゃんと制裁はしておいたから気にしなくて良いわよ」
制裁って。一体何をしたのか……。
「それで、ユナちゃんにはどうするの? あの子はレオナちゃんの事をライバル視してるし、仲間とも認めているけれど……ユリアちゃん程簡単にはいかないと思うわよ」
ユナは『スターナイツ』に来た理由がユリアとは大分異なる。
元々、ユナは一人で活動を行っていた。
それが私の歌と踊りを見て、勝負を仕掛けてくるようになった。
まだ私が路上で披露していた時の事だ。
お読み頂きありがとうございます。
お姉さんのカッコイイ所から書くつもりが、ダメな所からいってしまいました。
そしてお姉さん、まだ名前が出ていない事実。
ではでは、次話もお楽しみ頂けたら嬉しいです。
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