10話.妹は相変わらずでした
ユリアとの話は終わり、家に帰ってきた。
名残惜しそうなユリアだったけど、レオナじゃない僕がこのマンションに居る所を誰かに見られても困る。
そんなわけで、足早に家へと帰ったのだ。
「ただいまー」
"---ドタドタドタッ!"
僕が玄関で帰宅の声を掛けた直後、2階から物音が聞こえた。
これはあれだな、また僕の部屋で漫画を読んでいたな。
2階へと上がり、自分の部屋の扉を開ける。
「美香、いつも言ってるけど、部屋に勝手に入ったらダメだぞ?」
「お、お兄ちゃんお帰り! 今日は速いんだね!?」
まぁ何回言っても入ってくるので、最近は諦めている。
「ああ、マネージャーさんから用事で遅れるって聞いたのかな? そんなに時間掛からなかったんだ」
「そ、そうだったんだね。あんまりにも速かったから、驚いちゃったよ、あはは!」
「そっか。それにしても、漫画はあんまり巻数ないし、もう全部読んじゃったんじゃないか?」
「あ、あはは。えっと、面白い漫画は何度読み返しても面白いじゃない!?」
「んー、確かにそれもそうか」
鞄を机に置いて、制服から着替える。
美香が居るけど、もう慣れたものだったりする。
何故か美香はガン見してくるんだけど、それも慣れたものだ。
今日はベッドを占領されているし、布団がぐちゃぐちゃになってる。
「美香、僕の布団を使うのは良いけど、あんまり汚さないでね」
そのうち寝転がってお菓子を食べ始めたら、食べカスを掃除するのは僕なんだから。
釘を刺しておかないと。
「え!? う、嘘!? 私、お兄ちゃんの布団汚しちゃってた……!? も、もしかして、全部バレて……!?」
途端に挙動不審になる美香。
一体どうしたんだ?
「えっと、お菓子とか食べたら食べカスが落ちるしさ。気を付けてくれるなら、別に食べても良いけど……」
「~~~っ! そ、そういうこと! 食べるわけないじゃない! 少なくともベッドで寝転びながら食べたりしないよ!」
「そ、そっか? それなら良いんだけど」
美香は少し怒ったように声を荒げた。
そして自分の胸元に手を添えて、何やら大きく溜息を吐いた。
うーん、何か気に障ったんだろうか。
そりゃまぁ、勝手に汚すと決めつけられたら腹も立つか。
ここは話の流れを変えよう。
「そうだ美香。僕がレオナだってユリアにバレちゃった」
「そっか、ユリアさんにバレちゃったんだ。……。なんて?」
「だから、僕がレオナなの、ユリアにバレちゃった」
「どういう事ー!?」
その日一番の大声が、家に鳴り響いた。
それから美香が落ち着いたのを見計らって、今日学校であった事の話をした。
「成程、流石ユリアさん。お姉ちゃんの癖や動きで見破るなんて、強敵だね……」
「うん? 今なんて?」
「ううん、こっちの話。ねぇお兄ちゃん、実は私達血が繋がってないとかないかな?」
「ぶふっ!」
突然何を言いだすんだこのマイシスターは。
「あるわけないだろ。美香と姉さんは髪を黒色にしたら、母さんそっくりなの知ってるだろ」
「そうなんだけど……お兄ちゃんは黒髪でお母さんの血をしっかり継いでるもんね……くっそう」
「今なんて?」
「なんでもないよ☆」
凄く良い笑顔でそう言うけれど、聞き間違いじゃなければ、くっそうって聞こえたような。
いやいや、品性高潔なマイシスターがそんな事言うわけが無い。
色々あって疲れてるんだな僕。
「これから姉さんと事務所にも伝えておかないとな」
「あ、お姉ちゃんなら今日夜帰ってくるって」
「え”」
「あはは、相変わらずお兄ちゃんはお姉ちゃん苦手だよね」
「そりゃね……姉さんは事あるごとにレオナで居させようとするし……」
「私が言っても聞いてくれないのに、お姉ちゃんだと聞くなんてぇ」
「アレは言う事を聞いているんじゃなくて、無理やりさせてるんだよ……」
姉さんは鍛えてる僕よりも力が強い。
強くて奇麗で頭も良く行動力の塊。
現実世界で異世界に飛ばされた勇者みたいな力を持ってる理不尽な人間なのだ。
「まぁ、お姉ちゃんも本気で嫌がる事はしないから」
「本気で僕は嫌がってるよ?」
「……お兄ちゃん以外には」
「oh……ジーザス……」
「お兄ちゃんキリスト教だっけ?」
「いや違うけど」
うん、ユリアにレオナとバレても、妹はいつも通りでした。
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これもひとえに皆さんのお陰です、ありがとうございます!
皆さんが読んでくれていると思うと嬉しくて、続きを書くモチベを貰っています、本当にありがとうございます。
評価もじわじわと上がっていて、感激しています。
次話もお楽しみ頂けたら嬉しいです。




