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4話

その日は朝から大騒ぎだった。ベッドで絶叫した後、一通り身体チェックをして、途方にくれて母に泣きついた。病院に行ったら女の子ですねと医者からお墨付きをもらった。

「お袋、俺、どうしよう」

車の中で泣きじゃくる俺に、お袋は言った。

「お母さんだって動揺してるわよ! とりあえず転校した方がいいわね。変に騒がれても嫌でしょう。決まるまでお休みね」

「嫌だー! 女なんて、男に戻りたい! 夢だ。これは悪い夢なんだ」

「そう言ってもね、診断書まで出てるしね。こんなことってあるのね」

だって、俺は千春を女みたいだってずっと馬鹿にしてきた。泣いてばかりいるって殴った。それがどうだ。

毎日の筋トレで程よく鍛えられた筋肉は脂肪に変わり、バックミラーには目を真っ赤に腫らした女が映っている。

特大ブーメランが自分に返ってきている状態だ。

もし千春にばれたら。

考えただけで恐ろしい。

「おいお袋、なんで鼻歌なんか歌ってるんだよ」

「息子もいいけど娘が欲しかったのよねえ。お母さん的にはちょっと楽しみもあるっていうか。あ、言っておくけど前のあんたを否定してるわけじゃないわよ」

「なんの慰めにもならない」

「学校どうしようかしら。家から通うならあんまり遠いと通学大変よね」

「家から通うって、女子の制服を来て家を出るってことか?」

「そうなるわね」

「俺、一人暮らししたい」

お袋がはあ、と露骨な溜め息を吐く。

「家賃は? 生活費は? 家事は? 無理でしょ」

その後お袋との押し問答が続いた。

いっそ今まで通りの姿で変わらず通うことも提案したが、声が高い、体型が全然違うと却下された。

実家から通うと絶対に不審に思われる。

結果。


「これからよろしくねえまこちゃん。おばあちゃん嬉しいわあ。賑やかになるわね」

「よろしくばあちゃん。俺手伝いとかめっちゃやるから何でも言って」

一人暮らしの祖母の家に転がり込むことになった。

実家から一時間くらいだし両親も安心している。

昔から俺に優しいし、ご飯も美味しいし、俺としては最高だ。

「それにしても、本当に女の子になっちゃったのね」

「うん」

ばあちゃんは俺の頭のてっぺんから爪先までゆっくり顔を動かして眺めた後、言った。

「まこちゃんだめよ。そんなに足開いちゃ。女の子らしくしないと」

「でもばあちゃん、俺は男だよ」

「今は違うでしょお。せっかくかわいくなったんだから。俺とか言っちゃだめよ」

そうだ。ばあちゃんは昔から男らしさとか女らしさとか結構うるさく言う方だった。昔の人だから考え方ちょっと古いんだよな。ばあちゃんは何かにつけて男の子らしくていいね、とか、いっぱい外で遊ぶのよ、とか言ってたっけ。子供の頃の俺はばあちゃんの教えに染まりきってたのかも。

「じゃあこれから気を付けるよ」

多分無理だけど。


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