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ちょっと奇妙な詩集達

異世界風中世の街角詩集

作者: 丸井竹

『鍛冶屋の犬』


足を止め、犬をどけろと客が言う

熱した鉄を叩きつつ

骨をやれと鍛冶屋言う


犬はのんびり前足に

顔を横たえ舌を出す




『処刑台』


ロープ掛け、しっかり結んで下見れば

餌が欲しいと犬が来る


血を拭いて肉を下ろせば豚も来る


首切り台か首吊り台

意見が分かれ休業中





『冬』


軒下に 伸びた氷柱を窓越しに

刺繍の針をふと休め

馬車の車輪がはまり込む

ぬかるむ道に目をやれば

白い息吐き 物売りが行く




『暖炉前』


濡れネズミ

薪を砕いて皿にして

山羊のミルクと黒パンを

暖炉の前に置いてやる


揺れる炎の熱受けて

毛並みを整え

手を合わせ

食事を始める冬の朝




『城の屋根』


苔むした

お城の屋根のその上に

ひばりが小さな巣をつくり


腹が空いたと雛が鳴く

その巣の外をにょろにょろと

ミミズが一匹逃げていく




『蜘蛛の巣』


巣を張って 闇に潜んで獲物待つ

高らかに ラッパが鳴って

兵士来て 蜘蛛の巣払い鎧着る


蜘蛛は鎧の隙間から

糸を吐き出し上に逃げ

兜の蜘蛛と鉢合わせ


戦い終わり蜘蛛の巣は

脱ぎ捨てられた鎧の中

勝者は悠々獲物待つ




『英雄』


英雄が出たと聞いては酒飲んで

英雄が帰って来ればまた飲んで

英雄が死んだと知ればまた酒場


英雄候補はリスト順




『冬の農夫』


仕事なく酒場に行って飲んだくれ

金がなくなり娼館へ

出稼ぎ中の嫁呼んで

尻を蹴られて小銭得る

嫁の腹見て節約決める




『吟遊詩人』


歌売るか

体を売るかは

その日次第

陽気に踊り、酒を飲む

楽器盗まれ

追い出され




『胸壁』


酒樽の 間に隠れ飲んだくれ

眠り込んだら城落ちて

周りは見知らぬ顔ばかり


鎧を脱いで 樽担ぐ

勝利の美酒をお届けに





『カラスの巣』


きらきらと輝く宝

集めている

噂聞きつけ

巣を漁り

見つけた宝、質に入れ


断頭台に運ばれた

カラスがやったと聞いてはくれず




『井戸の水』


バケツ置き

ポンプを押して水を出す


水が跳ね

地面はどろどろ

靴も濡れ


豚がのんきに泥遊び




『朝露』


木漏れ日に

きらきら輝く朝露が

乾く間もなく雨に濡れ

トカゲの鼻にぽたりと落ちる


大粒の露に打たれて顔をあげ

キノコの下で雨宿り

湿った地面に小さな足跡




『粉ひき小屋』


ぐるぐると 粉ひく馬の足元に

ちょろちょろねずみがやって来て

こぼれた粉をちゅうちゅう食べる


そこに猫もやってきて

馬と一緒ににゃあにゃあと

ねずみを追いかけ走り出す


外では水車がごとごとと水を跳ね上げ回っている

川の魚は知らぬ顔




『雨』


仕事にならんと人々が

酒場に押し寄せ

安酒を 大事に一杯手に取って

雨降る通りを眺めやる


ここぞとばかりに

楽師来て

奏でる曲は恋歌で

人肌のぬくもり売ろうと

娼婦来る


奥さんの機嫌取りにと

物売りが

戦場漁りの戦利品

磨いて飾り軒下に


雨音も 聞こえぬ酒場の片隅で

チーズ盗みにネズミ来て

店主に見つかり大騒ぎ


雨上がり財布がないと男達

逃げたスリ追い飛び出して

酒場は昼間の静けさに




『轍の中』


雨上がり

水のたまった轍の中

ぬるぬるひしめくカエルのたまご


がらがら車輪が音をたて

泥水跳ね上げやってくる

馬車がきたぞとカエル鳴く


ぬるぬるたまご、逃げ出した





『樽』


親方にどやされながら

木を削り 

金具を嵌めて樽仕上げ

水を入れたらやり直し


一カ月 海を漂い沈まない

そんな樽が一級品





『画家』


鼻高く

目はぱっちりで

肌白く


胸は大きく

上品に

注文付けて椅子に掛け


画家が言うには

本人不要






最後までお読みくださりありがとうございました。

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