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13.おつかいが早く終わるメモ(2)

 買いものメモを作るのは、料理をするのに似ている。その時々で少しずつ味つけや配合を変えていくイメージだ。


 この日のテーマは、おつかいが早く終わるメモ。





 作り方は簡単で、やることリストと同じように、紙を四つ折りにしてつくる。


 大切なのは、買うものの種類や、場所に合わせて書き込む欄をつくること。




 “前世”では、会社の昼休みに、その日スーパーで買うものを書いていた。


 四つ折りにした紙の上部には、左から「野菜・果物」「肉・魚」「加工食品・調味料」「その他」と、その欄のテーマを書く。そして、テーマごとにまとまった、四列の買いものリストをつくる。


 こうすることで、魚コーナーまで進んだあとで買い忘れに気づいて野菜売り場に戻るといったむだな時間を防げるようになる。


 また、目に入ってくる情報が整理されているので、判断もしやすい。頭をあまり使わなくてもいいので、疲れにくいという点も気に入っている。


 ちなみに、店内のレイアウトに合わせて左から順番に欄をつくっていくと回りやすい。


 今回は、このメモを応用してみた。






 孤児院のための買い出しで必要なものを聞いていたところ、ざっくり分けると三つになった。


 食品、消耗品、その他。



 食品の欄には、孤児たちが自分で使える厨房に備え付けておく砂糖や塩、小麦粉といった基本的な食材を書いた。


 これらは無償で使えるが、例えばアップルパイを焼きたいと言った場合には、りんごを自費から買わなければならない。


 食品欄には、そうした頼まれごとの食材も多く書いていく。




 消耗品は、孤児院の備品。たとえばトイレで使うものや洗剤、薬などだ。


 この世界の文明レベルからすると不思議なことに、トイレは日本のものと大差ない。水魔法の応用で流すことができ、トイレットペーパーと同じような流れる拭き紙が常備されている。


 やはり、初代王が迷い人であるからなのだろうか。





 その他という欄には、ほかに特別に頼まれたものと、頼んできた相手の名前をまとめていく。




 最後に、空いた四つ目の一行には雑務を書き込んでいくことにした。


 孤児院のための買い出しと聞いていたが、実は買いもの以外の雑務もある。


 市場に来る前に、すでに雑務は終えてきたが、一つは図書館へ行くことだった。


 孤児たちは希望すれば本を借りられる。ただし、王城図書室は利用できない。そこの書架の本は城外に持ち出せないからだ。


 そこで、あらかじめ孤児たちに要望を聞いておき、それに即した本を城下町の図書館で借りてくるのも、赤侍女の仕事の一環だ。


 同時に、前回借りていた本の返却と、近日図書館に入荷予定の書誌報を貰い受けてくる作業もある。




 もう一つの雑務は、孤児たちの習作を売り、同時に素材を買ってくることだ。


 孤児たちには、最低限の衣食住が保証されており、読み書きも教育される。


 王城孤児院の子どもたちは、将来、文官や侍女、騎士として登用されるからだ。 


 ミカエラもカリーナさんも、王城孤児院の出身であった。


 もちろん、適性や希望がほかにあれば、城を出て働いたり、孤児院の運営側に回ったりすることも可能だ。




 生活に必要なもの以外でほしいものを手に入れる、そのために設けられたのが、習作を売る仕組みだった。


 年始にその年の元手金が支給され、それを活用して自らの仕事を作り上げる。


 例えば、繊細な髪飾りを作る子どもがいる。

 彼女がはじめての元手金で買ったのは、手仕事の書物と布であった。裁縫道具は孤児院で貸し出されるので、それを使って見よう見まねで髪飾りをつくりはじめた。


 もちろん、初めから売れるようなものが作れるわけはない。はじめの二年は、自分で使ったり、ほかの女児と物々交換をしていたらしい。


 少しずつ研鑽を重ね、今では彼女を指名して予約が入るまでになった。彼女には、黄侍女や街の雑貨店、服飾工房などから誘いが来ているという。




 わたしが抱える魔法鞄には、城を出たとき、孤児院の少女がつくった髪飾りがたくさん詰まっていた。


 髪飾りは、半紙のような薄い紙でつくられた袋に入っている。


 この個包装もまた、孤児たちが考えた仕事で、特別に絵のうまい少年が一つずつ緻密な植物画を描いて作っているのだった。



 もちろん、すべての孤児が、元手金をうまく使いこなしているわけではない。


 すべてを小遣いとして使い切ってしまう子どももいるし、いろいろ取り組んではいるがさっぱり売れないという子もいる。



 孤児たちのものづくりは単なる慈善事業として行われているものではない。

 将来登用する人材探しの目的も兼ねているのだった。





 雑務欄に書く内容は、さまざまな場所に足を運ぶ必要がある。図書館に雑貨屋、布屋、紙屋と言った具合に。


 そこで、場所ごとに色を分けて書き込み、同じ場所でのやり忘れを防げるように工夫しておいた。





 雑務がひと通り終わり、市場での買い出しもつつがなく終わったころ。ふと声をかけられた。

 深山さんだった。


活動報告に【きららの手帳】をupしていきます。

物語に登場した、きららの時短テクを、すぐに試せるようにメソッド化したものです。

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