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間の木

作者: 静寂

私の家のベランダからは 大きな木が見える

微かなサクラの匂いが消える頃 新緑が芽吹き 

葉と葉の間からは 空のかけらさえも見えなくなるほど 緑が覆い茂る

都会の真ん中 マンションとマンションの間 

小さな我が子が チョコチョコと走れば終わる程の 空間にあるその木は

建物の谷間を吹く風にザワザワと揺られて いつも風の音を奏でる


ああ……子供の頃 音楽の時間に習った歌だ

哀しいメロディーと 美しいあの歌と同じだ


雨が通り過ぎれば 日の光を浴びて 淡く透けていた緑は濃淡を濃くし

薄ら青い 小さな空間に向かって伸びていた葉先は

叱られた子供のように 頭を垂れて滴を滴らせている


ユラリユラリと 気怠げに揺れる梢に隠れるように

名も知らぬ 怯えた鳥が身を寄せている

仲間も見えず 濡れそぼった羽で 己の体を抱きしめて


そして 雨が上がり 線で引いたかのような光が差し始めると

ヒュッと吹き抜けた風が 濡れた葉を揺らし 空へ空へと向かって伸びをする

さっきまで 一言も鳴かなかった鳥は 優しく喉を震わせて 囀りながら飛び立った


建物の谷間に残して

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