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「何だよ、嫌なのかよ」


 キュピはヒューイに今の顔はなんだよ、と問いかけた。


「お前はものすごくやる気のあるヤツだと思っていたのに……」


 私が聞きたくても聞けなかったことをズバッと口にしたので、私はキュピの事を頼りがいがあると勘違いしそうになってしまった。


「やる気はあります。ただ、ちょっと他の事を考えていました」


 先程の『あ〜……』みたいな顔は今この状態とは関係ない、とヒューイは私たちに力説した。キュピはひとまず、それで納得したようだった。


「じゃあ、期待しているぞ。ちゃんとやらないとお前の髪の毛をピンクにしてしまうからな」


 キュピは満足げに羽を膨らませたあと、ペチペチと歩いて食堂を出ていってしまった。


 結局、ヒューイがあの時何を考えていたのかは明かされないままだったけれど、まとまったように見える話を蒸し返すのは得策ではないと思う。


「ところで、話の続きなんですが」


 何の話だったんだっけ……。そうだ、私の休みの話だ。


「明後日僕も休みを取るので、買い物にでも行きませんか」


 お買いもの。外出しなくても、城の購買で生活に必要なものは何でも揃う。しかし、彼が言っているのはそのような意味ではないだろう。


「あ、いいですね。何を買いに行きますか? 本?」


 学者といえば読書。私はヒューイに対してそのぐらいのありきたりすぎる印象を抱いている。


「祭り用の服、持ってますか?」

「いえ」


「もし良ければなんですが、お出かけ用の服を買いに行きませんか」



 私は二つ返事で了承し、ヒューイは夜に打ち合わせが入っていると言って戻ってしまった。


 その帰り道。いろいろあったが、私は若干浮ついた気持ちだった……のだが、一つ都合の悪いことに気がついてしまった。


 ……服を買いに行くための服がない! ついでに買いに行く時間もない! 貧乏で着たきりスズメ、というわけではない。服はある。あるけれど、地味すぎて異性と出かける……いわゆるデートにはそぐわないだろう。


「こうなったら……」


 この状況を打破するためには、他の人に頼るしかない。走って寮へ戻る。


「あ、おっかえりー」


 門限を守るなんて、相変わらず真面目だなー。とエラが軽口を叩く。


「どうしたの、そんな顔をして。喧嘩でもした?」

「これこれこの様な事情がありまして」


「なるほどなあ」


 エラに相談し、「親が送ってくるけれど趣味に合わない服」を貸してもらうことになった。


 本人は派手な服が好きなのだが、継母は彼女にもっと落ち着いた服を着て欲しいのだそうだ。


「いやー、体型が一緒でよかった。お礼は石鹸でいいよ」

「了解」


 エラは最近色とりどりの石鹸を集めるのにハマっている。細かいつぶつぶが入っているものや、しっとりするもの、さっぱりするもの……と日によって使いわけているらしい。私のような洗いざらしとは気合の入れかたが違うのだ。


「さて、どれにする?」


 私が友人について思いを馳せている間に、クローゼットからどんどんと服が出てきた。


「無地のはないの?」

「それだと手持ちのと変わらないでしょ!」


 ぐるぐると着せ替えが始まってしまい、私はその中からベージュの小花柄のワンピースを選んだ。


「髪の毛は当日編み込みをして……せっかくだから、眼鏡も外しちゃいなよ」


 どーせ度の入っていないガラスなんだからさ。ない方が可愛いよ。


 その言葉に唇を尖らせる。彼女が親切で言ってくれている事はわかっている。


 眼鏡を外して鏡の中の自分を見つめる。


 左右で色が違う、水色と黄色のオッドアイ。今までこれに言及されるのが嫌で異性と深く関わる事を避けてきたのだ。


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