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ファミレスに入ってきた竜夫は、入り口から店内を見回した。
テーブル席のユースケとヒサシが気づいて手をあげる。
「こっちこっち」
「わりぃ、わりぃ、遅くなって」
「いいよ、マサやん、どう?」
竜夫は困った顔で首を振った。
「無理もないよ、あんな事故だもん」
「けど一年も前だぜ。もういい加……」
ユースケは気の利かないヒサシをこづいて止めた。
「どうする、ライブ」
「そりゃやるさ。な、タツ」
「マサやんなしだと、ちょっとな」
「だったらお前が叩けよ、オレを叩いてないでさ」
ユースケはヒサシを強く叩きながら言った。
「俺は裏方なんだ。何もできないよ」
「……オレ、また」
かけてみようと思ってる。
竜夫はそう言おうとしたが、言葉は出てこなかった。
かけても出てもらえる保証もかけ直してくれる保証もない。
二人をもっと待たせて負担をかけるだけではないか。
そんな気がして、竜夫はただ水を飲むばかりだった。