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軍神と呼ばれた俺ことベルモンドがアル中騎士に転生し、辺境都市で数々の偉業を成し遂げ、新たな伝説を作りしこと  作者: 三島千廣
第2回 俺こと、ベルモンドが副団長の鼻を明かし、無頼の冒険者を更生させること
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過去と現在

 アルベルトは驚愕したまま凍りついたようにその場に立っていた。


 指一本動かすことができない。

 しばらくそうして同胞の快挙を前に身体を震わせていたが、次第に我を取り戻し、唾を呑み込んだ。


(嘘だろ? あのベルモンドが、なんでゴツイネンを……?)


 驚愕の結果に納得いかないのか、麝香騎士団南門詰所の面々は互いに顔を見合わせて無言でコクコクとうなずきあっている。


 それはあたりまえの反応だった。

 なぜなならば、ほんの一カ月前に酔いどれベルモンドは酒が入ったままポーネリアス商会の用心棒であるゴツイネンにフルボッコにされていたのだった。


 入門時の対応によるいざこざだが、アルベルトをはじめとした騎士団の面々は悔しいながら当然の結果として受け入れていた。


 まず、第一にフライドブルクの有力諸侯や都市議員に対しも顔の利くポーネリアス商会に対して、都市の警備を受け持つ麝香騎士団といえど、たかだか五十人弱では影響力からして相手にならなかった。


 ポーネリアス商会は命知らずの食客や傭兵を屋敷に六百人以上抱えているのだ。


 その中でもゴツイネンは五本の指に入る豪傑である。

 彼は、重さ八十斤を超えるこん棒を小枝のように扱うという触れ込みであった。


 事実、アルベルトもゴツイネンが盛り場で十人近い無法者を瞬きの間に叩きのめしたのを目の当たりにしていた。


 ベルモンドはゴツイネンに足腰が立たぬほど叩きのめされても「酒が入っていなければ勝っていた」という負け犬の遠吠え染みた言葉で現実を糊塗するのが精一杯な男のはずだった。


 さらに言えば、河水に落ちて死にかけて――実際アルベルトが葬儀に参加したときに心臓は止まっていた――記憶まで失ったベルモンドはなにも知らずにゴツイネンに突っかかっていったと思ったのだが、現実は完勝だった。


(夢だよな。でも、あのゴツイネンが……オレたちをいつも小馬鹿にしていたポーネリアス商会のやつらがあんなにペコペコと)


 ゴツイネンは六人がかりで担がれ市内に搬送されてゆく。

 ベルモンドは抜きっぱなしの剣を手にしたままポーネリアス商会に指示を出し、いつもは居丈高な商人や手代たちが蒼い顔をして従っているところを見るとアルベルトは胸が熱くなるのを止められなかった。


「おおい! 点検ならオレに任せてくれ! さあ、ルールを守ってしっかり稼いでくれよな、商人たち!」




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― 新着の感想 ―
[気になる点] クマキチと言い、ゴツイネンと言い、名前の付け方に昭和っぽさを感じる。
[一言] ある意味負け犬の遠吠えがリアルに実現された訳だ(笑) この先、ジャクリーヌと男爵がどんな関係や気持ちだったかもはっきりするかな?
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