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軍神と呼ばれた俺ことベルモンドがアル中騎士に転生し、辺境都市で数々の偉業を成し遂げ、新たな伝説を作りしこと  作者: 三島千廣
第6回 俺こと、ベルモンドが村人を苦しめる竜を倒し、正義を世に知らしめること
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制裁

 魔物使いのウンベルトは手にした大鹿を解体しながら、涎を垂らす地竜を制していた。


「よ、よおし、待て。待て、だ。い、いいい、今、エサをやるからなあ……」


 手にした大振りのナイフを器用に使い大鹿の肉を骨から切り離すと、ウンベルトは顔にかかったフードをどけて奇妙な笑い声を立てた。

 アリスンという少女は素晴らしい。あれはもうしばらくすれば自分たちの自由になると思えば、たまらない気持ちになる。


「ししし、素人娘か、たたた、たまらん」


 パオロのおこぼれでもない限り醜男であるウンベルトが素人女を楽しめる機会は皆無である。

 アリスンの均整の取れた肉体を思い返しながら、大鹿の臓物を拾い上げようと手を伸ばしたところで地竜が奇妙な吠え声を上げた。


 場所は深い渓谷である。

 村から離れている場所であり、地竜を統御するウンベルトがいる限りほかのモンスターが襲ってくるとは考えにくい。

 だが、ウンベルトが飼っている地竜が上げた声はあきらかに怯えであった。


「な、なに……?」


 見れば、木の葉亭に居た目立たぬ老人の下男がひとりの男を岸辺に先導していた。

 ウンベルトはその男を見た途端、本能的に強い恐怖感を覚えた。


 騎士服を身に纏った男は背丈も並みであり、一般的には脅威を感じない風貌だ。

 だが、男から立ち昇る圧倒的な闘志は熱気を帯びており、自然と見る者を威圧した。


「や、やれぃ。殺せ!」


 ウンベルトが命ずるよりも早く地竜が男に向かって駆けてゆく。

 体長が五メートルに達するであろう地竜はどかどかと足場の悪い川岸の水を蹴散らしながら男に向かってゆく。

 だが男は特に慌てた様子もなく鞘から剣を抜くと、だらりと自然体に構えたままその場を動かない。

 ウンベルトの脳裏には次の瞬間、男の身体が地竜の牙で引き裂かれる図が浮かんだが現実は違った。


「は――?」


 男がわずかに身体を沈めたかと思うと、鋭い音が鳴って地竜の頭が外れたのだ。

 まさしく、それは遠景から見ると外れた、というように描写するのが正しい異常事態だった。

 だが、正確には男が放ったただ一度の斬撃で巨大な地竜の首が断ち割られただけだった。


「なんだ、竜と言うから構えたがトカゲもどきじゃないか。このようなものは、かつての我が配下なら新兵でも恐れんぞ」


 地竜は噴水のような血潮をブシューッと音を立ててあたりに撒き散らし、そのまま数歩よたよた歩くと川の流れに横倒しになって、飛沫を高々と上げた。


「ばばば、ば、ばかな……ッ」


 ありえないことである。

 地竜の強さは本物だ。


 パオロですらウンベルトが育てあげた地竜を単独で殺すことなどはまず無理だろう。でなければ吃音癖があり、女性に対する変態嗜好で王都を追われたウンベルトの魔物使いとしての能力を傲岸なパオロが重用するはずもない。


「自ら魔物を操り罪なき領民を傷つけた罪は重い。都市まで連れ帰る必要性も感じられない。おまえはこの場で俺が始末をつける」


 男の目は真っすぐウンベルトを射抜いていた。

 自分に向けて放出される鬼気――。


 パオロなどとは比較にならない強さを感じ、どうあがいても許されないと判断し、ウンベルトは逃走に移った。

 だが、次の瞬間ウンベルトは背中に熱いものを感じ、数歩泳ぐように前にのめって倒れた。


 ――斬られた?


 理解ができなかった。

 それもそのはずだ。

 男がいる場所からウンベルトの位置まで軽く十メートルは離れている。


 もがこうとして腕を伸ばす。

 それから再び絶望した。

 伸ばした右腕の先がないのだ。

 正確には目の前に肘から先が転がり真っ赤な血が流れ出していた。

 ドンドン身体が冷たくなってゆくのがわかる。


 切断面から白い骨が見えておりウンベルトは強烈に気分が悪くなった。


「や、やめ、やめ、助け……」


 なんとか首だけで振り返ると、ゾッと背筋が凍った。

 自分の背中に重たげな足を乗せられ動きが完全に封じられた。


 男が剣を振りかぶるのがわかった。

 次の瞬間、ウンベルトが脳裏に描いたのは割られた脳髄に顔を濡らしたまま、誰も足を踏み入れない場所で蟲に喰いつくされる己の姿だった。



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― 新着の感想 ―
[一言] こんなに弱いやつがどうやってこの地竜を手懐けたんだ?
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