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軍神と呼ばれた俺ことベルモンドがアル中騎士に転生し、辺境都市で数々の偉業を成し遂げ、新たな伝説を作りしこと  作者: 三島千廣
第4回 俺こと、ベルモンドが近ごろ横行する領内の盗賊たちを討伐すること
21/45

勝利

 パトリシアはいまだ状況が掴めていない賊の転がしていた長剣を引き抜くと、息を呑むほど手際よく当たるを幸いになで斬りにしてゆく。


「な、なな、なんだおめぇらは! 反乱か!」

「麝香騎士団のベルモンドだ」


 慌てふためいた賊将の顔面を蹴りつけ、胸を刺した。

 最後のひとりをベルモンドが倒すと攫われてきた女たち以外にその場で動く者はいなくなった。

 ベルモンドが視線で命じるとパトリシアは籠に入れてあった尾の長い鳥を天に放った。

 驚くほど尾の長い鳥は朝焼けの中を貫くように空へと昇ってゆく。


 それが合図だった。

 賊の陣地へと遥か彼方から割れんばかりの銅鑼や太鼓の音が鳴り響き、伝わった。

 折から吹いた東からの強風は津波のような音を運んで賊たちの陣地を揺るがせた。


 ――まさか、官軍か?


 この音の実態はベルモンドが騎士団や助けた隊商、それに旅芸人の一座を使って鳴らせた虚兵であった。

 突如として背後に大軍が現れたと思い込んだ【明けの明星】は一斉に浮き足立った。


 この時、すでにベルモンドとパトリシアは「裏切り者が出たぞ」と叫びながら、陣営の中を駆け回り次々に賊を斬り殺していた。


「いまだ。突撃せよ」


 担架で座ったまま負傷の深いナタンも最後の力を振り絞って指揮を執った。

 命を受けた突騎二十名は真っ赤な日の出を背に賊の陣営へと勇敢に突っ込んだ。

 兵略に通じるわけでもなく、単純に、陣営の周りに杭を打っただけの防備は、騎馬の突進力で呆気なく突き崩された。

 とはいえ、敵の数は千を超えている。


 この騎馬隊の役目は敵を殺傷することではなく、中をかき回してさらなる混乱を誘うことだった。


 騎馬隊が逃げ惑う敵陣営を何度か往復すると、指揮官を欠いた賊たちは一戦もせずに遁走を開始した。


 この周辺一帯では名の通った【明けの明星】は騎馬の数も百を超え、踏み止まって戦えば、小勢にすぎない騎士団など追い返すことは容易なはずだった。

 だが、カリスマであった首魁のピエールがいなくなれば、その実態は流民の集合体に過ぎない。


「追撃しろ。逃げる兵こそもっとも討ちやすい」


 騎乗したベルモンドは巧みに手綱を操って二十名の騎士を我が手のように動かした。

 賊兵が完全に潰走状態に陥ったとき、ベルモンドは連れてきた五十の歩兵を投じた。


 勝っているときには弱兵でも通常の何倍も勇気を見せることがある。

 市で徴募した歩兵は練度も動きも水準以下であったが、逃げ惑う賊を討つには充分だった。

 この百に満たない軍は完全に夜が明けきる前に、四百を超える賊を捕斬した。


 麝香騎士団の大勝利はフライドブルクへと実情以上に伝播し、騎士たちの強さは都市の誇りにまで昇華されるのだった。




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