4 パーティ集結!ギルドの問題児達
「ごめん……。べつに、攻撃するつもりなんて、なかった……けど……。傷付いたなら、あやまる……」
涙声で反省の言葉を口にするエルン。
そんなエルンの様子を見たミユサが口を開く。
「エルンちゃん……」
「ミユサぁ……」
「……そうやってわたしの旦那様の気を惹こうとしたってそうはいかないですよ? このメス猫が……」
ミユサはそう言ってエルンを睨みつけた。
……怖っ。
エルンはそれに対して、顔の前で手を左右に振る。
「ごめんミユサ、ボクこいつに全然興味ない。一応異性とはいえ本当に無理」
「お前は言葉で俺を傷つけるのが異常に上手いな!?」
っていうかお前、女だったの!?
俺が悲しみの声をあげるのと同時に、ミユサは安堵の表情を浮かべていた。
……どうやら二人は幼馴染みらしいが、二人の仲が良いのか悪いのかはイマイチよくわからなかった。
だがどうして二人がパーティをクビになったのかは簡単に想像できる。
こいつら……めちゃくちゃ扱いが面倒くさいんだ……。
そんなことを考えているとまた一人、別の人物に声をかけられた。
「……あっ、いたいた! すみません、遅れました!」
その声に俺は振り返る。
肩上までの短く切り揃えられた金髪に、青い目をした少女。
姿からして前衛で戦う戦士だろうが、その顔立ちには幼さが残っており歴戦の戦士のような雰囲気はない。
むしろいいとこのお嬢さん、といった雰囲気の少女だった。
彼女は笑顔でこちらに近付いてくると、改めて挨拶をした。
「どうも! リュッカ・カロンと言います。急遽パーティを組む相手がいなくなっちゃって……。こうして皆さんとお会いできて光栄です!」
リュッカと名乗った少女は、元気よくそう言うと手を差し出してくる。
……ま、まともだっ!!
まともな挨拶ができる人が来たぞ!!!
俺は心の中で小躍りしつつ、右手を差し出した。
「どうも。俺はシン……ってあれ?」
握った手に、べちゃり、と湿り気を感じた。
「あ、すみません!」
それに気付いたリュッカは、慌てて手をはなす。
俺が自分の手を見ると、その右手は真っ赤に染まっていた。
……は?
「安心してください! ただの返り血なので!」
「……え? 返り血?」
「はい! さっきちょっと街で腕試しをしてた強い人がいて」
てへ、と少女はいたずらっぽく舌を出す。
見れば彼女の拳からは血が滴り落ちていた。
「……殴り合いのガチのケンカを?」
俺が思わずそう尋ねると、彼女は目を輝かせて答えた。
「はい! 戦いは心が躍りますし、スッキリしますよね! そうは思いませんか?」
「うーん、思わないかな!」
「ですよね! わたしもとっても楽しいと思います!」
「おっと、さてはお前も話が通じないな?」
彼女は照れるような表情を浮かべる。
「今日は新しいパーティメンバーと出会えると思ってたら、気持ちが昂ぶっちゃってたんですよね! どんな強い人と会えるのかなって」
……やべぇ。
やべぇよこいつ。
もしかしたらこの中で一番ヤバイヤツかもしれない。
「あ、ここ座っていいスか?」
恐怖を感じる俺を無視して、リュッカは空いた席に座った。
……これで四人。
俺は三人の顔を順々に見ていく。
「えっと……どうも」
惚れやすく、その上めちゃくちゃ感情が重いミユサ。
口が悪く、自分の気持ちを伝えるのがド下手クソなエルン。
一見まともに見えて、その実バトルジャンキーなリュッカ。
……本当にこのメンバーでパーティ組むの?
嘘でしょ?
俺は念の為、みんなの意見を聞いてみることにする。
「四人でパーティ組むのに、賛成の人?」
俺が恐る恐る聞いたその言葉に、三人は力強く手を上げた。
――俺に退路はなさそうだ。
俺は覚悟を決める。
……どうせ100回パーティを追放された俺に、他の選択肢などない。
なら腹をくくってこのメンバーと運命を共にすることにしよう。
「それじゃあ改めて……よろしく頼む」
そうして俺は101回目のパーティを結成するのだった。
……本当に大丈夫なのか!? 俺!!