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多少の化かしは許しますが

「もしもし? 俺だよ俺! 悪いんだけどさ……」


 突如、守宅にその様な電話が掛かって来た。

 内容はと言えば、今はもう知らない人の方が少ないだろう〝俺俺詐欺〟という奴だ。今更引っ掛かる人が居るのか? と思わなくも無いが、まだやる人が居ると言う事は一定数居るのだろう。


 そして、守宅でそのような電話を取ったのは……。


『……誰? 私、俺なんて人知らない』


 座敷童である。

 そして、そんな彼女は電話先の主に対して、ズバッと切り裂く知らないと言う一言。


「……あれ? お嬢ちゃん? ……可笑しいなお嬢ちゃんなんて居たっけ?」

『……どうでも良い。問題はアナタ』


 電話先で頭を抱えているだろう相手に、どうでも良いと言い切る座敷童は何やら違和感を覚えたのか、相手に話しかけるのだが……。


「……チッ。まぁ、良いや。電話先間違えましたーしつれーしまーす」


 相手は舌打ちをすると、間違えたと言い電話を切ってしまった。


『……可笑しい。けど良いかな。……この家には関係無いし』


 そう言って、座敷童は今の電話の事を忘れる事にした。


 ただ、この時座敷童が電話の事を覚えていて、守や幼女神に話をしていたら……未来は変わったかもしれない。







 数日後。テレビの報道で俺俺詐欺の集団が逮捕されたと言うニュースが流れた。

 しかし、逮捕された人達は口を揃えて〝ここ数ヶ月の記憶が無い〟と証言。これには様々な人があきれたと言うコメントをしたのだが……。


『……あ、もしかしてあの時の電話って』

『ん? 如何したのじゃ?』

『……えっと数週間前。「俺だよ俺」って電話が有った。その時、違和感を感じた』

「違和感か……電話越しにも解る違和感って何だろうな」


 そんな事を守達が話していると、何処からともなく追いかけっこをしているだろう声と音が聞こえ始める。


「ごるぁぁぁぁぁ! このくそ狸!! また! 人様を騙しよってからに!!!!」

「いい加減追いかけるのを止めるたぬ! うさぎの癖にしつこいたぬ!!」


 なんと、兎と狸が壮絶な追いかけっこをしているではないか。


「今捕まれば、少しは刑を軽くしてやる! 大人しく捕まるんだよ!!」

「嫌たぬ!! そういって、また泥船に乗せるたぬ!!」

「泥船には乗せん!! やるのは、背中を火あぶりじゃ!!」

「もっと酷かったぬ!!!」


 どこかで聞いた事が有るようなワードが、兎と狸から飛び出す。

 いや、何処かでは無い。童話にあるあのカチカチな山だ。


「……一体あの狸は何をやったんだ?」


 童話を知っている為か、守は狸が悪さをしたのだと疑わない。なので、何をしたんだという疑問が出ても当然だろう。

 そこで、はっ! と、座敷童が表情を変えた。


『……わかった。あの狸、人に憑りついてたんだ』

『おぉ! なるほどのう。あの詐欺集団は嘘を吐いていなかったと言う訳じゃな』


 そう、この化け狸に憑かれていた〝俺俺詐欺集団〟は、憑りつかれていた事によって記憶があやふやにされていたのだ。

 そして、其れに気が付いた兎が詐欺集団を襲撃し……見事狸を追い払った。追い払ったのだが、事は既になされた後だった為に……哀れ、憑りつかれた人達は記憶の無い詐欺行為で逮捕されてしまったと言う訳だ。……彼らに、救いが有らんことを。


「しかし、狸に憑かれて犯罪を犯したとなれば……あいつらも可哀想な話だな」

『気にする出ないぞ? 憑りつかれたと言う事は、あの者達も狸と同じ気質か、過去に何かしでかしたと言う事じゃからな』


 どうやら、あの詐欺集団は最初からそちら側の人間だったようだ。


 前言撤回。


 彼らにあるべきは、救いでなく罰だろう。

 

 閑話休題(それはさておき)



 そんな、兎に追いかけられている狸は、化かすこと自体が生き様という奴だ。彼自身になんら悪いことをした等と言う意識は無い。……むしろ、其れを否定すれば存在が維持できずに消えてしまうだろう。

 とは言え、やる事が悪質過ぎる。

 なので、童話の通り兎はあまりにも悪質な行為をした時に限って、狸を追いかけまわしているのだ。


「またんかい!!! 今! その背中の皮を剥いで! 塩を塗りたくってから、強風が吹く場所で日干しにしてやる!!」

「それをされたの、あんさんのお仲間たぬ!! 話が違うたぬ!!」


 何はともあれ、彼らの追いかけっこは当分続きそうだ。

 出来れば、夜中は静かにしてほしいなぁ。などと思う守達であった。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!


さて、今回と前の話は江戸時代に五大昔話と言われていたモノで、「質素倹約、勧善懲悪」などがテーマなんて言われています。

他の3つは前に扱った、雀の話や桃太郎になりますね。残りは花咲爺でしょうか。

この五つの中でも、桃太郎やカチカチ山では「鬼」や「狸」が可哀想! なんて話も出て来たり……「勧善懲悪」は何処へ行ったと思いますが。なーぜか、話の内容が意味不明に改変されてたりするものも有るのですよねぇ。



私は「勧善懲悪」と言うのは話としてはそう好きではありません。いえ、善悪の判断基準を教える為に必要と言うのは解ってますけどね。行き過ぎた正義は毒と言うか悪と言うのもありますから。

「必要悪」以外にも「それ以外なかった」なんてものも有れば「ガチで狂っている」なんてのも有りますからね。判断が難しいと思ってます。

ただ、話のネタとしては、悪さをしたら裁かれると言うのはスカっとする部分も有る訳で……バランスと言うのは難しいなと思います。

まぁ、色々と考える人が多いので「ダークヒーロー」と言うジャンルが成立するのでしょうがw

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