洋の東西問わず
守の自宅は妖怪屋敷である。
それは、守が幼女神と出会ってから急速に変化した結果なのだが……その変化と言うのは家に住んでいる者達も全く追いつけていない。
例えば、守のマフラーとなっている八尾の管狐である〝たまり〟は、基本的に守から離れる事は無い。
次に、気分屋でありながらも、しっかりと家に居座っている座敷童。
彼女が家として設定している場所は割と広く、守宅以外にもその領域として浄化作業をしているのか、時折普通に外出している。
そして、そんな座敷童と激戦を繰り広げた事が有るスライム。
彼らは家にある汚れや虫の卵などを率先して食べている。ただ、蜘蛛は食べないらしい。そして、座敷童に対して負い目が有るのか、偶に貢物を運んでいる様だ。
更には、家の庭で猫又親子がくつろいでおり、その姿を見た家族はほっこりとした気分になっている。
偶にご近所さんにもその姿を見られるのだが……どうやら尻尾が二本あると言うのは見えていないらしく、ただの猫を飼っていると思われているようだ。……その割には知能が高い行動をしているのだが、それはどうやら賢い猫として見られているらしい。
それ以外にも、偶に現れる絡新婦やススメに鬼なども居るのだが、基本的に彼らは守宅に住んでいる訳では無いので、その姿が誰かに見られるなどと行った事は無い。いや、そもそも人の目には映らない可能性が高いのだが。
そして、いつの間にかにと言うべきか、新しい住人がこっそり増えていたりもする。
「……なんか増えてないか?」
『増えておるのう……ただ、アレは我も知らぬ存在じゃの』
『……それは仕方ない。だって、アレは日本の妖怪じゃない』
そう、どういう訳かハーピィーやスフィンクスの時みたいに、海外産と言える存在がまた現れたのだ。そして、今回はどういう訳か家にこっそりと居座っている。
「とは言え、ひっそりとしているみたいだな。余りしゃべらないみたいだし」
『……なんだか……スライムと仲良くしている』
スライムと仲良くしている理由は、スライムが埃や塵と言ったゴミを食べてくれるからだろう。
そう、そこに居たのは……耳と鼻が大きく、体は小さい存在のブラウニーだ。
そして、更に他にも居てこっそりと守の母をアシストしている、白色のシルクで出来たドレスを着たシルキー。
どちらも、海外産の妖怪というか幽霊と言うか妖精と言った存在である。
そして守の母はと言えば、適格なアシストに疑問を覚えながらも、何故かそれを受け入れ「何時もありがとう」なんて言っている。実に懐が広いと言うべきだろうか。
そして怖がらないと言うのが、どうやらシルキーの好感度を上げている様で……シルキーも喜々としてお手伝いをしているのだから、正のスパイラルまっしぐらと言った処だろう。
「家事妖怪と言うか、お手伝い妖精というか……何とも凄い事になっているな」
『しかし……あれらはどう扱えば良いのじゃ?』
「えっと、確か……ブラウニーはこっそりお礼をしようだったかな? 後、衣服を与えると出て行ってしまうなんてのも有ったはずだけど、アレを見る限りそうとは思えないなぁ」
何せ、目の前ではスライムと戯れているブラウニーの姿。
あれでは、服を獲るために働きに来ているなどとは到底思えない姿だ。寧ろ、遊びに来たついでにお礼として掃除をしている。そういった感じに見えなくも無い。
「シルキーは基本的に怒らせなければいいみたいだな。とは言え、神が居着いている家だからな。彼女が怒って癇癪を起し住民を追い出すなんて真似は出来ないだろうな。後、どちらも天邪鬼的要素を持っていて、部屋を散らかすなんて話も有るけど……大丈夫かな」
『ふむ……海外の妖怪と言うのは起こるとそういう行動にでるのじゃな』
『……天邪鬼……座敷童にそんな要素はない』
座敷童の場合、家から逃げられたら不幸が怒るなんて話もあるのだが、どうやら彼女はその話を棚上げした様だ。
その発言に、守も座敷童をじっと見つめているが、座敷童はと言えばどこ吹く風と言った感じで、そんな守の行動など気にすることなく新しい住民を見ている。
「とは言え、これ以上増えられても困るんだが……アイツら何処で寝泊まりしているんだ?」
『……妖怪と同じ。何処にでも居て何処にもいない。……そんな空気見たいに家に溶け込める』
何とも便利な話である。
ただ、言えるのはこの家もかなり賑やかになりすぎたと言う事だろうか。
願わくば、彼らが先に居たモノや遊びに来るモノ達と喧嘩などしない事をと祈る守であった。
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わらわらと現れますね。順調に異空間化が進んでますw




