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鶴の……

 ケーンケーンと鳴き声が響く。

 キュ・トントンとリズムよく何かの機械が動く音が聞こえて来る。


 そして、それらの音が止まった後、スススーと言う音と共に開かれた障子から一人の女性が現れた。


「久々に反物を織りました! 実に良い仕事が出来たと思います!」


 素晴らしい笑顔でそのような事を告げる女性。


『ふむ、素晴らしい反物じゃのう。これは……鶴と亀じゃな』

「はい! 縁起物と言えば、鶴は千年亀は万年と言いますから、私が織るのならこれだろうと」

『うむうむ。実に良い仕事じゃ。含まれて織る妖力も素晴らしい』


 そして、その織られた物を手に評価を下す幼女神。

 しかし、その幼女神の言葉にあるように、この反物には妖力が含まれている。と言う事は、この反物を織ったこの女性は……妖怪と言う事になる。


 まぁ、入ってしまえば鶴だ。


「良く童話とかで聞いたけど……鶴の恩返しって実際にあった話なんだな」

「あ、その話はちょっと違う処がありまして! と言うよりも、当時そんな話は山の様に……」

「え? マジ?」

「はい! マジです! こう、罠に引っかかる鶴の妖怪って多かったんですよ……何を隠そう私もやっちゃいましたし」


 てへぺろ。そんな行動をとりながらも鶴の妖怪である女性が言う。

 その行動に、何といって良いのか解らないと守は困ってしまうのだが……まぁ、本鶴は過去の黒歴史だと笑い飛ばしているので、守が深刻に悩む必要も無いのだが。


『ふむ、ではお主にはどのような話があるのかの?』

「えぇ! 私ですか!? えっと、その……」


 時折頬を染め、くねくねと動く女性。

 これは、ラブロマンスでも有ったのでは! と幼女神は前のめりになる。

 だが……そんな女性から放たれた言葉は、幼女神をフリーズさせる一言だった。


「反物を渡した相手なんですけど……その、反物の美しさに一目ぼれしたのか……反物と結婚しちゃったんです!」


 ドドーン! と背後で波を打つような力で衝撃の事実を言う女性。

 そして、その内容に固まるなと言う方が無理だろう。守どころか周囲に居る妖怪たち全てが停止してしまっている。


「反物とですよ!? 幾ら私の力作だからと言っても、あんまりだと思いませんか!? しかも、その後その反物はと言えば……私の最高作だった為か、その男の愛情が凄かったためか……一反木綿になってしまい、その後急激に強化されて人の姿を取れるようになり……仕舞いには、男と揃って私をお母さんなんて呼んだんです! 私子供なんて生んでいなかったのに……しくしく」


 気が付けば、鶴の妖怪である女性は母親と呼ばれ、更におばあちゃんと呼ばれる運命が。

 これはラブロマンスどころか、彼女の視点に立ってしまえばただの喜劇である。いや、男や反物の目線から見ればラブロマンスなのだが。

 ただ、この場に居るのは鶴である反物を織った彼女だ。当然目線は彼女の話となる。


 そして、喜劇と入ったが笑って良いのかもわからず、守達は言葉を紡ぐことすら出来ずにいた。


「あ、ここは笑うポイントですよ? そもそも、何世紀前の話だと思っているんですか! そんなもの引きづってませんよ」


 けらけらと笑う女性。その様子を見るに一切引きずって居ないのは本当の事なのだろう。


「あぁ! この話を童話にしたら受けますかね? こう、大ヒットしませんか?」

「いや、流石に……コメディのネタにはなるかもしれないけど」

『そ、そうじゃのう……童話だと厳しいかもしれぬのじゃ』

「そうですかぁ……こう、面白い教訓になると思ったのですが」


 そんな話で生まれる教訓など碌なものでは無いだろう。一体なにを教えるというのか……。

 とは言え、鶴である彼女は昔話に花を一方的に咲かせながらも、次の反物は何を織りましょうか? などと笑って話している。

 彼女が織ると言う行為を嫌いにならなくて良かったと思うのだが、守達にはその明るく軽い彼女とどう接したら良いのか頭を悩ませるのであった。










「こう、最高傑作を織りたいのですよね。と言っても、この〝鶴と亀〟が現状では最高傑作でしょうか! うん、あの一反木綿を超えましたよ!」

「……引きづってるやないかー!!」

「おお! 的確な突っ込みありがとうございます!」


 どうやら、少しではあるが恨みつらみは残っていたらしい。

ブクマ・評価・感想ありがとうございます!


さて、鶴に対して悪意が無い事は明言しておきます。まぁ、少しネタに走りすぎた気もしますが。


因みに、この世界の鶴は……妖怪であれば隠れてひっそり生きてますよ。えぇ、しっかりと化けてます。

中には、自分が妖怪の鶴であるなど忘れている個体もあるとかなんとか……。

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