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第24話 同じだけど違う妖怪

久々にw

 べんべんべべ~んと三味線を弾く音がする。

 それは実に悲し気な音色。


 まるで、友を恋人を家族達を送る鎮魂歌の様な……。


「って、どういう事だ? 彼女? で良いのか解らないが、三味線を弾いてるの猫又だよな」


 そう確認する守。

 ただ、その三味線を弾いている猫はと言えば、守の家に居着いた〝みけ〟と〝みぃ〟でなく、全く別の猫又。

 そして、その姿はと言えば……着物を着ており黒い鬘を被っていて、まるで時代劇に出て来る女性の姿を真似しているかの様。


『守よ、あ奴は江戸時代に生まれた猫又じゃな。当時、三味線を作るのに〝雌猫〟の皮を使っておった。特に〝未通〟であればよりよい音が出るなどと言う話もあってのう……あの猫又はそんな材料にされてしまった同族を憐れんでおるのじゃよ』

「なるほど。それであんな年代物と言える三味線を弾いているのか」


 そう。この猫又が持っている三味線は実に年代を感じる代物。だが、よほど大切なのか丁寧に手入れをしている様だ。

 そんな三味線を愛おしそうな目をしながら奏でる猫又だが、守達から見られている事に気が付いたのだろうか……慌てて三味線を自らの背に隠した。


「に、人間! それに、神の一柱も! な、何故このような場所に、もしかしてこの三味線を狙っているのですか!?」


 過去に余程の事が有ったのか、この猫又の警戒っぷりは異常と言えるレベルだ。

 もしかしたら人やどこぞかの神が、この猫又から三味線を奪おうとした事が有るのかもしれない。そうであるなら、守と幼女神の組み合わせは地雷とも言えるだろう。


『落ち着くのじゃ。何、我等はお主の三味線を狙っては居らぬ』

「信じられません! だって、そう言って近づいてきて無理やり奪おうとするのでしょう!?」


 重症だ。

 一体この猫又はどれだけ過去に騙され傷ついて来たのだろう。そう感じとれてしまう程、猫又の表情は痛々しい。

 とは言えこの幼女神は何かとお節介焼きだ。このような痛々しい姿をみれば、何としてでも助けたいなどと思ってしまう程のお人好し。いや、神だからお神好しだろうか、何か違う言葉に聞こえてきそうだが。


『安心せい。我等の傍には沢山の妖怪が居る。お主にその様な振る舞いを行えば、彼らに顔向けが出来ぬでは無いか』

「その話が真実かも解りません! 近づかないでください!!」


 お手上げだ。守はこの猫又に会話など出来ないとそう感じた。

 だが、幼女神は諦めが悪い。こうも意固地になられると逆に燃えてきてしまう様で、彼女は更に話を推し進める。これでは、親戚や近所に居るお節介おばさんである。……その内、お見合い写真でも押し付けて来る様になるのだろうか?


 一柱と一体の間で一進一退の攻防が続く。

 その姿は、普通に考えれば大きなお世話と言われても仕方のないモノだろう。だが、幼女神にとって、この猫又の在り方は不味いモノがあった。

 ここ最近起きている悪霊などの問題。もし、その悪霊がこの猫又に憑りついてしまえば一大事である。

 そして、この猫又には憑りつかれてしまうだけの理由が十分にあるのだ。


 悲し気に奏でる三味線と、壁の高い人間と神への不信。


 これでは、憑りついてくださいと悪霊たちに言っている様なモノである。

 それ故に、幼女神はこの猫又への説得を止める事はしない。止められるはずも無い。


『お主が考えておる世界は既に変化しておる! 今では、妖怪が安心して暮らせる場所もあるのじゃ!』

「そんな事を言って、私に酷いことをするんでしょう!」


 ……なんだか人間の世界を知っていないか? と思うような発言が猫又から出て来るが、それはきっと気のせいだ。

 この猫又は本気で嫌がっているだけに過ぎない。決して、薄い本の様な事をされるとは考えていない。

 猫又にとって酷い事と言うのは三味線を奪われる事や、自らが三味線の材料にされる事だ。


 そんな口論を繰り広げていると、守の胸から空気を読まない鳴き声が響いた。


「きゅ? きゅきゅきゅ~!」


 腹の虫では無い。八尾の管狐であるたまりだ。

 たまりはどうやら守に巻き付き今まで寝ていたらしい。そう、この騒々しい口論の中ぐっすりと。

 そして、そんなたまりが目を覚ましたのか、空気を破壊するような「おはよう!」と言う挨拶を発したのだった。


「あ、おはようたまり。良く寝れたか?」

「きゅきゅ!」


 守の頬にチュチュとあいさつしながら「もちろん!」と鳴くたまり。

 そして、そんな姿をみた猫又と言えば……。


「ほ、ほ、本当に妖怪がいたぁぁぁぁぁぁ!?」


 お前も妖怪だろう。と、突っ込みたくなるような一言を叫ぶのであった。

と言う事で、違うパターンの猫又です。


猫又も色々と種類があるようです。

そして本編で軽く触れたように、その一つには三味線にされた同類を憐れむ三味線を弾く猫又と言うのも有るそうで。

そして、この猫又は江戸時代に誕生したようですね。


因みに守宅にいる猫又のみけとみぃは、〝飼われていた猫が年を取って化けた〟猫と普通の猫から作り出された子供の子孫と言った処です。実に可愛い猫ちゃん達です。

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