第21話 小さいけれど、大きな成果
今、守達は幼女神とであった廃村に来ている。
現在も人は居ない。居ないのだが人の変わりに妖怪達がいる。彼等は妖怪ネットワークを使い、此処が安全だと理解した妖怪が、妖怪を呼ぶという状況になっており、その様な場所を提供してくれた幼女神は、彼等にとって幾ら守に憑いたとは言え、今でもその土地の神である。
そして今回、そんな守や幼女神を妖怪村に招待したのが経緯となり、幼女神は懐かしい地へと足を踏み入れた。
『おぉ……妖怪達が少しずつ増えておると聞いてはおったが』
「いろんな種族がいるな」
『……いつかの鬼や雀以外にも色々いる』
「きゅきゅ!」
人とは違うが、それでも村に活気が戻った事を喜ぶ幼女神。
守もあの寂れた感じを目の当たりにしているので、幼女神の気持ちは何と無く理解できた。
『着たわね。どう? 少しずつだけど村の噂を広げたのよ』
今回の件は妖怪ネットワークで管理者の一人である魅雲に誘われた。であれば当然だが、彼女が此処に居るのも当たり前という話だ。
『今回のお誘いは感謝なのじゃ』
『いいわよ、アナタが此処で暮せばと提案してくれたんだしね』
そのようにお互いに感謝をしつつ村を懐かしむように歩きだす。
その様な中、たまりや猫又親子は、村にいたスネコスリや狸に、再開した雀達となにやら合唱している。
「実に楽しそうだな」
『仲間が一杯回りにいて浮かれてる』
その様に言う座敷童子だが、彼女も気分がいいようで何時もより軽やかな口調になっているようだ。
ショキショキと音が聞こえてくる、守がなんだ? と見てみると其処には大量の小豆が籠の中に入っていた。
「……小豆?」
『……小豆洗いが大量に作業してるみたい』
水辺を見てみると、其処には小さいおじさんみたいな姿をしたモノ以外にも、イタチ、キツネ、タヌキ、ムジナといった動物ベースのモノ達まで小豆を一心不乱に洗っている。
「なんであそこまで真剣なんだ?」
『あぁあれ? 今どうも小豆洗い大会やってみるみたいよ?』
守の問いに魅雲が答える。
小豆洗い大会。説明を受けた内容が、一番多く、一番綺麗に、一番効果の高い小豆を洗えたモノが優勝という事だ。
「効果ってなんだ?」
『あぁ……小豆洗いがあらった小豆にはね、破魔の効果や霊薬の素材として使えるのよ』
恐ろしくとんでもない代物であった。
古き時代であれば、人が大金を叩いてでも購入していた品らしい、ソレが大量に量産されているのを見ると、何と言って良いのか解らない気持ちになる守達。
『……ま、まぁ彼等が楽しそうだから良いのじゃ!』
楽しそうだから良い。実に便利な言葉だが、正しい判断といえる。
『帰るとき少し持っていく? 彼等も別に拒否はしないわよ?』
「霊薬の材料だろ? 良いのか?」
『いいのよ、それにあの小豆で作ったお菓子は至高よ?』
その言葉に食い気味な幼女神と座敷童子。はらぺこ属性の本領が発揮されそうである。守も仕方ないといった感じではあるが、小豆を貰える様に話を進めるしかなかった。
神社に着くと幼女神が膝を着いた。
『あぁ……しっかりと整備されておる、離れた時にはある程度は諦めておったのじゃが……』
綺麗に掃除された道や社。荒れた部分など一切なく、妖怪達が幼女神に感謝しているのが一目瞭然である。
「しかしあれだな、神主をやっているのは鬼族なのか」
『彼等も凄く感謝してたからね』
現代の桃の人の事件が理由だろう……彼等もまた救われた妖怪だ。
『おぅ! お前等着てたのか、一著相撲でもとるか?』
酒呑童子の楽しげな挨拶ではあるが、相撲をとるの言葉が彼の性格を表しているだろう。実に戦い好きである。
「いやいや、確実に負けるから」
『ふむ……まぁ人の子が俺に勝てる訳もないか。まぁ、相撲がとりたくなったら裏に来いや。他の鬼達と楽しくやってるからよ!』
そういうと、戦う事が待ちきれないと言わんばかり去っていく酒呑童子。一体かれはどれだけの鬼と組み手をするのだろうか?
「なんというか……平和な妖怪環境で良かったな」
『……本当良かったね?』
鬼が神社で相撲の組み手をする……何とも言いがたい話ではあるが、現代の妖怪事情であればそれも一興と言ったところだろうか?
何はともあれ、彼等が安全であり静かに暮していける状況を目に出来たのは、守達にとっても随分と良い影響を与える事になりそうだ。




