第20話 すのーらいふなのじゃ!
深々と雪が降る。今回の雪は守達の住んでいる場所では何年か振りの積雪だ。
その庭に積もった雪の上を、たまりとみぃが駆け回っている。
「あいつ等は元気だな」
『見てみて微笑ましいのう』
「みゃー」
この様な事を言っているが……彼等のいる場所は居間で、炬燵の中に足を突っ込みながら窓の外を見て話をしている。母猫のミケも顔だけ炬燵から出している状態だ。
「動物だろうが妖怪だろうが、子供は風の子ってやつなのか」
『……元気なのが一番、……蜜柑が美味しい』
見た目が幼女な神も妖怪は炬燵でまったりとしているのだが……。
それはさておき、雪で戯れる二匹になにやら混ざっていっている。
「なぁ……あれって」
『……ん、あれは雪ウサギ。昔は子供が良く作ってた』
『いつの間にかに雪だるま達と同じで妖怪化しておったんじゃのう』
庭では雪だるまが優しく雪球を投げ、それを避けるたまり・みぃ・雪うさぎ達。
雪が積もった日前提とはいえ、妖怪が増える。守には少し前からでは考えれなかった状況だ。
「……まぁ平和だから良いか」
守が呟くがその間にも妖怪が増えて行き……認識を阻害する結界がなければ、ご近所さんは阿鼻叫喚だったであろう。雪玉が何もないのに空中を飛んでいるのだから。
「増えていくなぁ……あの蓑を着込んでる子供って」
『ゆきんこ、雪童子……まぁ雪の精や雪女の子供と言われておるやつじゃな』
『……あの子達も害がある訳じゃないから大丈夫』
逸話みたいに雪女が子供を抱いてくる……などという事も無く、ただ楽しそうだから遊びに来ましたという感じなのだろう。
この家の庭ほど安全に妖怪達が遊べる場所など、そう多くない。
庭では雪合戦をしたり、雪像を作ったりと実に楽しそうだ。
だが、そんな時間も雪国と違い長く続く土地ではない。
『このたびは! あの子達を見て頂きありがとうごじゃ……ございました!』
『ふむ、雪女じゃな。山の神にでも言われて来たか?』
『そうです! 此処は雪が長い時間存在できないからつれて帰って来いと!』
雪が直ぐに溶けていく。それは雪が係わる彼女達にとっては存在の危機だ。
「まぁ仕方ない話だな、太陽出てきてるし」
『……少しでも楽しい時間が出来たのなら良かった』
「みゃー」
私の子も一杯遊んだとみけが鳴く。守はたまりもだなと同意し、庭で遊ぶ妖怪達を止めに行った。
『それにしても……よう此処まで来たのう』
『雪が積もりましたからね! 此処も常に雪が降っていれば、私達にとって理想ですのに!』
それは簡便して欲しいと思う幼女神。その様な環境になれば、こたつむりから抜け出せなくなる……新しい妖怪幼女神・こたつむり! 等と守から言われかねない。
時間が過ぎるのは早く……まだ遊ぶんだ! と訴える妖怪達を嗜めつつ、お別れの時間だ。
『次は雪国にでも着てください! 雪妖怪達でおもちぇ……おもてなし致します!』
たまに噛むのはもはや愛嬌だろう。挨拶もそこそこに雪女は、雪妖怪達を連れて空へと消えていった。
「賑やかだったな」
「きゅ~きゅきゅ!」
呟く守にそうだね、楽しかったよと返すたまり。間違いなく一般人では味わえない冬の出来事だ。
「お誘い受けたし、その内スキーでもしに雪山にでも行ってみるか」
『寒くないかのう』
『……私は大丈夫』
守がお出かけの話をすると、賛成! と言わんばかりに、たまりとみぃは庭で走り回りだす。幼女神は寒さが嫌なようだが。
それにしても、守は着実に妖怪達との縁を結んでいっているようだ。
……本人の意思とは関係無くではあるが。




