第18話 歌を聴いて
歌を奏でる。それは古より人を惹きつけた。
歌を囀る。その綺麗な旋律は沢山の人を楽しませたはずだった。
しかし、何時しかその歌を聞くものは居なくなってしまった。
そして現代になり、その歌を聴く事が守達には出来た。
「あのお宿の話以降は人との関係に距離を置いたって事か」
「そうでちゅん。あの事件は大変でちゅた」
お宝で人を押し寄せたり、妖怪騒ぎで討伐しに来る者がいたりと大変だったようだ。
「それでも、歌いちゅづけたかったでちゅん。人が歌で笑ってくれるのは嬉しかったでちゅよ」
彼等は妖怪ネットワークで守達の存在を知った。そこでまた歌を聴いて貰えるのではないか? と此処に来たのだ。
ちゅんちゅん、ちゅんちゅん。
歌を奏でる雀達、ステージは大原家の庭の一角、周りには音が漏れないように幼女神が結界を張っている。観客達は守と妖怪達。
ちーぱ、ちーぱ、ちゅーんちゅん。
美しく響く旋律は、雀のオーケストラだ。
音に酔いしれる。正に守達は雀のコーラスにドリップしている。
雀達のライブが終わり、守達は総立ちで拍手をする。
「いやー! 良かった!」
『流石じゃのう、古来より人々を魅了する訳じゃ』
「きゅー! きゅきゅん!」
『……そう、たまりも歌ってみたいんだ』
猫又達もなにやらうずうずしている。みけもみぃも混ざりたいのだろう。
因みに雀と猫が同じ空間に居るが、問題ないのは妖怪だからだ。
「聞いて頂きありがとう御座いまちゅん、もうどれ程の時が過ぎたか解りまちぇんが……本当に楽しかったでちゅん」
雀達はとても満足したようで、ちゅんちゅんと楽しそうに庭を飛び回っている。
きっと遠くないうちに、このリサイタルはまた開かれるだろう、妖怪や見える人間を集めて。




