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第14話 海で遊ぼう! 遊べるの?

 燦々と照りつける太陽、押し寄せる大量の塩水、歩けば歩くほど灼熱地獄な砂浜。

 守達は今海に来ている、とは言え幼女神も座敷童子も水着を着てはいない、普段通りの格好である。まぁ彼女達は水に濡れる事が無いから良いのだろう。


「それにしても暑い、見た目も暑い!」


 守るからしてみれば、太陽に砂浜の照り返し、さらには視覚的に和服を着込んだ二人の幼女。環境も視覚的から来る精神的にも暑い。


『そう言うがのう、我等は着替えなぞ出来んのじゃぞ?』

『……基本装備』


 もし人が着る様な物をを着てしまえば、それは服が宙を浮くという完全な心霊現象となってしまう。かといって彼女達が着れるような物を作るには、現在の人間には無理である、それこそ魑魅魍魎が蔓延っていた時代であれば作れたはしただろうが。


「たまりのお陰で首周りは不思議と気持ち良いんだがな」

「きゅきゅ~」


 実に不思議な存在である、一部分とは言え空調機能を完備したたまりは、一家に一匹は欲しいだろう。


「しかし島民は美男美女ばっかりだな……ウラヤマシイ」

「うふふ、それはありがとうございます」


 少し愚痴を言った守に一人の女性がお礼を言いながら近づいてくる、彼女もまた当然ながら美女といった部類だ。


「側に居るモノを見れば話しても大丈夫そうですけどね」

「……あんた見えるのか?」

「私に限らずここの住民であれば皆さん見えると思いますよ?」

「理由を聞いても?」

「そうですね、彼女達と共に在る人ですし問題ないでしょう。私達は人と妖怪の間に出来た子供の末裔と言う奴ですよ」


 半妖というやつだろう。離島といった環境が良かったのか、ひっそりと静かに暮していけたのだろう。とは言え妖怪の雰囲気も無いのは……稀に本土から離島に来た人間を取り込んでいくにつれ、妖怪の部分が薄くなっていき、現状純粋な人間に限りなく近い存在といった所だろうか?


「とは言え、今でも妖怪の方々とは交流があるんですよ? 余り公にはしてませんが」

「因みにどのような妖怪で?」

「人魚です」


 人魚とは珍しい、と言っても海の妖怪で人と子を生してと言うと限られては来るだろう。


「今も、あそこの岩場で……余りの暑さにぐったりしていますね、大丈夫かなぁ?」

『……確かにぐったりしてる』

「きゅ~」


 どうやら、近年の暑さの上昇にやられてしまっているらしい。妖怪でも色々な違いがあるようだ、現に……座敷童子やたまりはぐったり処か、元気一杯だ。


『それにしても、どうして我等に声を掛けたのじゃ?』

「あぁそうでした! 先ずは自己紹介しますね。私は、浦野 島子(うらの とうこ)と言います」

「島子さんね、俺は守、この神は名乗れないから幼女で、こっちは座敷童子に管狐っぽいのがたまり」

『だから幼女じゃないのじゃ!』

『……どう見ても私と変わらない幼女』

『……ぐぬぬぬぬ』


 なにやら戯れているが、自己紹介もそこそこに本題の話をしていく。


「最近どうも、海の底から姫と名乗る方が人魚や島民にちょっかいを掛けていまして、話を聞いてみると浦島太郎がいるはず! さっさと出せ! と」

「……えっとソレって竜宮城?」

「そのようですね」


 竜宮城に姫ときたら、玉手箱の乙姫だろう。しかしあの話のラストは鶴になっただの亀になっただので終わってなかっただろうか?


「一体如何いう理由なんだろうな?」

「どうも、太郎の生まれ変わりだとか何だとか」

『……なるほどのう、しかしその太郎殿の生まれ変わりが……女とは気づいてないのじゃろうな』

「…………はぁ!? 浦島太郎の生まれ変わりが居てソレが女ぁぁぁぁ!?」


 とんでもない事実だろう。まさか輪廻転生が存在した上で、性別が逆転しているなどと想像すらしていない話だ。


「ちょっとまってください! その太郎さんの生まれ変わりが居るんですか!?」

『解らぬのも無理は無いのじゃ。基本的に記憶などもって生まれ変わるなどありえぬからの』

「まぁ記憶なんぞ持ったままだったら発狂しかねないだろうしな、ソレよりも何処の誰なんだ?」

『ほれ、目の前におるじゃろ? 名前が既に引張られておるではないか、名の一つが確か……浦島子だったはずじゃぞ?』


 唖然とする幼女神以外の人。確かに名前がそのままと言える。

 しかしそうであれば話は早いだろう、現実的に男の太郎は居ないのだから。




『そ……そんな……浦島様が……女で……ああああああああああああああ』


 説得するもすぐさま発狂するかのように泣き出す女性。美人だが、惚れた男に玉手箱を渡すような地雷女だ。


『戻ってくるって言ったのに! 地上に女を作った上で子孫まで残して! それでも、戻ってきてくれたら、許してあげるたのに!』


 ツンデレ? ヤンデレ? 守が感じた印象はそのようなモノだ。たまりも心なしか首元で震えている。


『落ち着くのじゃ、もう千年以上も前のはなしじゃろう?』

『それでも! 私は! 待ち続けたんです!』


 げに恐ろしいのは女の執念だろうか? それも何千年と積み重なった妖怪のものだ。何処を踏んでも地雷原である。


「……島子ちゃんは余り気にしないほうがいいよ、今は女の子だしね」

「はい、ありがとうございます」

「それにしても、乙姫って人魚に近い種族だったんだな」

「あーたしかに、足元が海蛇みたいですけどね」


 執念深いのは、蛇っぽいからだろうか? まぁ幼女神に任せるしかないだろう、下手に触れれば守や島の男がターゲットにされかねない。


 その後は、三日三晩と幼女神が乙姫の愚痴に付き合い、少しすっきりさせた所でお開きとなった。この結果、島民が漁を邪魔される事も無くなる。

 幼女神は乙姫の愚痴に偶にではあるが。付き合うそうではあるが……守はというと、たまりや座敷童子と一緒に島民達と仲良くなっていたそうだ。

 後に幼女神がその件についてご立腹となり、大量のポテチとコーラをお供えする事となったのだが、それは実に平和な話だろう。

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