第12話 可愛いモノは正義です
雨天の中、守が傘をさして学校から帰宅していると、道端から「みゃ~」と鳴き声が聞こえた。
さて、どうしたものか? と思考する守。たまりは守にどうするの? と言わんばかりに「きゅ?」と鳴いた。
因みに幼女神は現在、魅雲と対策会議に出ている。妖怪達にとっても悪霊未満の存在は危険だからだ。
「そうか、たまりもそう思うのか、とりあえず様子をみるか」
たまりの問いに背中を押されて様子を見に行くと、小さい猫が怪我をしていて親猫が必死にその怪我を舐めている所だった。
「ふむ……これを手当てしろと?」
「きゅきゅー!」
どうやらたまりは子猫の手当てをして欲しいらしく、必死にアピールしている。しかし親猫が此方に気がつくと警戒して今にも飛び掛らんとする体勢をとりだした。
「ほらおちつけー、たまり何とかできるか?」
「きゅ~きゅきゅ!」
フッー! と言う感じの警戒が少しずつたまりのお陰で和らいでいく。その間に近くのコンビニでぬるま湯や包帯などを手に入れて来た守。
親猫の警戒が完全に解けたと同時に、子猫をぬるま湯を浸したタオルで拭いてやってから怪我の手当てをしていく。
「まぁこんなもんだろ、親猫さんよ次からは気をつけろよ?」
「みゃ~」
まるで言いたい事を理解したかのような親猫に少しほっこりしつつ、雨に打たれない場所に寝子達を移動させてから、たまりを首に巻き帰路についた。
そこではたと一つの事に気がつく。
「なぁたまり……なんであの親猫はたまりに気がついたんだろうな?」
親猫はたまりと会話をしていた。昔から犬猫には見えないものが見えているのではないか? と言う話があったが本当だったのかも知れないと思う守。
「きゅー?」
「そうか? まぁたまりが気にしなくても良いって言うなら、そうなんだろうな」
野良とは言え猫の親子と触れ合い会話したなんて、誰に話しても信じないだろうな等と思いながらも貴重な体験に満足したのであった。
数日後家の縁側の下に猫が住み着いた、あの野良猫たちだ。
「なぁお前達……どうやって此処を見つけれたんだ?」
「みゃ~~」「みぃ~」
何とも可愛い仕草で擦り寄ってくる親子猫。細かい事など良いかな? などと守が考えだしたその時に幼女神がやってきた。
『おや? 珍しいモノが居るのう』
「みゃみゃ!?」
猫が幼女神に驚く、まるで神の席に居るものだと理解したかのように。
「ん? 何でこんなに親猫は驚いてるんだ? 子猫を背にしてるし」
『それは我の事を理解しているからじゃろ』
「猫が理解してる?」
幼女神のほうも、猫が理解して当たり前という態度を取ることに守は何が何だか解らないといった感じだ。
『……守、よく見てみよ。その猫の親子を』
「んー? 凄くかわいいよな?」
「きゅー!」
「みぃ~」
たまりと子猫が戯れだす、守からしてみればただただ可愛い姿だ。しかし此処で微妙な違和感を感じる。
「ん? なんか誤魔化されてる感じ?」
『ようやっと気がついたか、一種の幻覚や認識ずらしじゃな』
「でも、誰がそんな事を?」
『守はまだまだじゃのう、状況的に其処に居る親猫じゃろ』
猫がそのような事をする。まるで妖怪じゃないかと守は思うのだが、それを言う前に幼女神が口を開いた。
『まぁその猫達は猫又じゃ。大方そこの親猫は人に飼われておったんじゃろうが……どのような理由かは解らんが、街を彷徨っておったんじゃろ』
「猫又ぁ!?」
「みゃ!?」
守の驚きに触発されたかのように親猫もびくっとする。まぁ自分達の話をしているところで大声を出せば当然ではあるだろう。
「はぁ……猫又かぁ」
『そういう訳じゃ、こちらの会話もしかと聞いておるじゃろ』
「みゃー」
そうだよ、と言わんばかりに鳴く親猫。それは自分達が猫又という妖怪である事を肯定しているようであった。
『しかし人化の術が使えるはずじゃが……どうしたんじゃ?』
「みゃ~……」
『なるほど、子供の怪我に対してヒーリングをしておったら力を使いすぎたと』
現状、化ける能力が使えずに居たため、人に紛れる事が出来なくなったと言う。そして、安全だろう守の側であればゆっくりと休み、親子共に回復できるだろうと此処に来たという事だ。
「まぁ縁側の下が気に入ったみたいだしいいけどさ」
『ん? 何じゃ守、なんとも腑に落ちんといった顔をしておるのう』
「あぁ……なんだかんだで、また妖怪が増えたなっと思ってな、小さい猫だからいいけど」
『……まるで妖怪屋敷、そのうち色々な妖怪がきて……家がマヨヒガに憑依されるかもしれない』
「え……座敷童子、あれって憑依するのか?」
『……昨今の妖怪は隠れながら気ままに動くから』
『まっこと、妖怪事情は変わったものじゃのう』
「みゃ~」
着実と妖怪の隠れ家みたいになっていく守宅ではあるが……父親はたまりと猫又の子が戯れるのも見て悶え、母親はその姿が見えない事に父に嫉妬したのは、余談と言うものだろう。




