第11話 お出かけ中に大発見
守達は現在街を歩いている、例によって例の如く幼女神がゲームセンターに興味をもったなどと言い出したからだ。
しかし、幼女神と座敷童子はゲームセンターに行って如何するのだろうか? 人に見られない状況で遊ぼうものならポルターガイスト現象だ、そこのゲームセンターは違う意味で有名になってしまうだろう。
「しかしなんと言うかよくわからん視線が増えたな」
『ふむ悪霊未満と言ったところじゃな、しかし増えたのう? 現状問題が無いから放置しおるようじゃが、本来であれば払った方が良いのじゃがのう』
「ん? その言い方だと払う人が居るのか?」
『神社の神主や寺の和尚やらが昔はやっておったぞ』
とは言え昔の話である。現在に至ってはそういったスキルを保有している者は稀だろう。
そういった点、守は側に幼女神が居る。スキルだの何だのといった話ではない環境だ。
『とはいえ、主神達がこの地から上がっていった事によって、そういった人やモノにとっては摩訶不思議な力が減少したはずじゃ、であれば奴等は早々発生する事は無いはずなのじゃが……』
あの事件以来、悪霊とまでは行かずとも力を持つ〝何か〟が、今の世界の環境で発生するのは、ありえないレベルだと幼女神は思っている。
一体何処からその力を手に入れているのだろうか? そもそも人が垂れ流している生命力は質が違うのでそれを力にする事は出来ない。
悪意などのマイナスの感情から発生するものも、マイナスという点では同じなのだが、中身が全くまとまりが無く、核となる物が育ち強引に纏めない限り力の源として成り立たない。
そしてその核が育たない環境であるにも係わらず、核になれるかもしれないモノ達がうろうろとしている。
『此間の霊団もそうじゃったが……なにか良からぬ事をしておる輩がおるかもしれぬのじゃ』
「きゅきゅ?」
『……大丈夫、うち達には幼女様が居るから』
「人も力が使えるやつなんて殆ど居ないんだろ? どうなってるんだか」
『そうじゃのう……って、ちょっと待つのじゃ! 幼女様とは何なのじゃ!』
「……だってお前、名前教えれないじゃん」
『ぐふぅ……名乗れのがこういった形で仇となるとはのう』
その様な道中を歩みながらもゲームセンターに到着し、さぁ遊ぶぞ! といった所で問題にぶち当たる事となる。
「なぁどうやって遊ぶんだ?」
『……来たいと思っただけで如何するかなど考えておらんかったのじゃ』
『……うちも同じ』
「はぁ……人の目にも監視カメラにも写らないんだよなぁ、ポルターガイストか?」
『その様な低俗なモノと同じ扱いをして欲しくないのじゃが、我等が堂々と遊べばそうなってしまうのう』
『……ざんねん』
二人が普通にゲーム等出来ないという事で、指示して色々できる可能性があるコインをやった後に、UFOキャッチャーやキーホルダー取りを堪能。
しかし此処で予期せぬ自体が起きる事となった。
『のう……あれはなんじゃろうか?』
「なんだろうな?」
「きゅ? きゅうう?」
『……たまりが正解かも? ゲームセンターの妖怪?』
空中を荒れ狂う二本の棒、軽やかにステップを踏む巫女衣装、ギャラリーの目を惹きつけながらダンスを踊り、太鼓を叩く。
「……いやいや、あれただのコスプレイヤーだろ」
巫女のコスプレをした〝男性〟が太鼓の何某をプレイ中であった。
「ふぅ! 良い汗をかいたのよね!」
『……キャラが濃い』
『恐ろしいのじゃ! あのような輩、悪霊でも見た事が無いのじゃ!』
「いやいや、ただのレイヤーさんだから」
『レイヤー……霊夜! 霊団が集まる夜なのかの!?』
「いやいや、違うから」
幼女神と座敷童子が混乱している最中、此方に向かってくるレイヤーさん。
「あら? あらあら? かわいこちゃん達が居るわネェ」
『ッ!? 目が合ったのじゃ!』
『……確りと見られた!』
どうやら巫女姿の彼は見える人だったようだ。
「さてとん、少し時間を取って貰ったのだけど行き成り本題でいいかしらぁ?」
「かまわんぞ? どうせ見えてるし聞こえてるんだろう?」
「えぇ、もちのろんよ。ソレに関係してる事だしねん」
『ふむ我等に関する事といえば、神か妖怪か悪霊関連かの?』
多少復活した幼女神が確信に迫るような質問を逆に繰り出した。
そして、急に巫女姿の男の雰囲気が真面目なそれに変わる。
「その通り、ここ数日文献などで見た悪霊みたいなものが、ちらほらと確認できるようになってな……何か知らないかと聞きたくなったからな。そこの二人は神に属するものと妖怪だろう? 首に巻きついてるのは管狐か?」
『まぁそんなもんじゃ、そして悪霊についてじゃったな。うむ、あれらは悪霊未満の存在ではあるが、何時そうなっても可笑しくないものじゃ』
「対処はしないのか? 神に座するお方なのだろう?」
『我は元々別の土地の神で、今は其処の住人じゃった子の子孫に憑いておるただの背後神じゃ。それに人の地の悪霊未満は基本人が対処するものじゃ』
お互い言葉の牽制を繰り広げつつ、どうするんだ? と言い合っている。
男からしてみれば、神様だろ何とかしろよ! と言う気持ちで。
幼女神からしてみれば、これ我の管轄外じゃし? と不毛な話だ。
『そもそもお主も何かしら出来るのではないのか? その身なりや力からして、どこぞの神に仕えておる者なのじゃろう?』
「……無理だな、俺は放逐された身だ」
『力はあるのにのう……どこぞの神かは知らぬが、お主に力を貸さなくなったのかえ?』
自らの霊力を呼び水にして、神仏に力を借りて浄化する。これが神職関係者の基本のやり方であり、自分の力だけで浄化する力技は武士のやり方だ。
武力に霊力を纏わせて浄化するなど、今の人間には無理だろう。
「俺の趣味が神にも家の人間にも認められなくてな、幼少時代体が弱いからと女子の格好をさせたのは奴等だというのに」
男の子の体が弱いと女子の格好をさせる風習。諸説色々あれど、基本嫡男が呪われ死なないようにする為の対処だったらしいが……今や真実を調べるには歴史の闇の中だ。
「なるほど、それでなにやら目覚めたのか」
「まぁ……そうなるな、だって可愛いだろ?」
どう見ても男の体つきなのだが、〝着ている服〟は可愛いのだろう。巫女服に色々アレンジがされている。
『まぁそうであれば、お主の実家に匿名で情報を送っておけば良いじゃろ』
「はぁ……係わりたくないんだがな」
『むしろ我が緊急事態でもないのに前に出れば、そっちの方が問題になるのじゃぞ?』
「……縄張り争いみたいなものか」
『まぁ俗な事を言えばそうなるのう』
面子と言うのもある、それゆえ抱腹などされぬように、触らないのが一番だ。
「はぁ……わかった、匿名でリークしておく」
そういって男は去っていったのだが、それにしても問題が解決したわけじゃない。
しかし今守達に出来る事は……ただ男の実家が確りと動いてくれる事を願いながらも、万が一の為に日々の訓練を続ける事だろう。
『しかしこの熊のぬいぐるみはかわいいのじゃ!』
『……幼女様は単純、可愛いのはこっちの鮫の着ぐるみ』
「きゅー……」
「まぁたまりそう言ってやるな、熊はリアルすぎるし鮫も……まぁ独特のセンスもまたって事だろ」
幼女神と座敷童子のセンスは中々にハイセンスだったようだ。




