第10話 力とは?
人間が神気を使った、これは実際大問題である。祭壇や神社等で神と交信している時に、神の気が周囲を満たすなどであれば普通の事だ。
そうであれば問題はなかった、だが守がやったのは神の気を自らが発し、悪霊にそれをぶつけ浄化した。
実際には守が所有する事になった幼女神の宝玉が神気を発していたのだが、それを知らぬもの達にとっては人が神気を使ったと言う判断になる。
『そういう訳で守には、人間があやかし討伐をしておった力の使い方を教えるのじゃ』
「そういう訳と言われてもな、それを使えるようになった所で意味があるのか?」
『大いにあるのじゃ、人の身で人の力を十全に使えぬお主が、神気を使ってしまったのじゃ、ゆえ人の力を先ず覚えねば……その内守はぼーんなのじゃ』
「骨?」
『違うのじゃ! 宝玉が発する力に器が耐え切れず爆発するのじゃ』
「……なんてもの埋め込んでくれたんだよ」
『お主が宝玉の力を使わねば良かったのじゃが、使ってしまい宝玉が半覚醒しておるのじゃよ』
「……あの時の判断が問題だったと?」
『それは何とも言えないのじゃよ、守が行動したから助かったとも言えるからの。あの時行動せねば、援軍が間に合ったかどうかなど今となっては不明じゃ』
とはいえ、現状の守は安全ピンがゆるゆるな手榴弾みたいなものである。それを何とかする為に人の力の使い方を学び修行させると幼女神は言う。
「しかし人の力で神の力が如何にかできるのか?」
『普通はできん。じゃが宝玉は守に宿っており守は人間じゃからな』
「そういうもんかね、因みに人の力はなんていうんだ? 神が神気なら人は人気か? なんだか有名になりそうだな」
『古来より人の力は霊力か霊気じゃ、妖怪であれば妖力か妖気じゃな』
そして訓練内容は朝晩それぞれ一時間の冥想と実に味気ない訓練であるが。基礎だという事で絶対に手抜きが出来ない内容である。
『つまらぬ等とおもうでないぞ? 手を抜けば何時かは、ぼん! じゃ』
守に脅しをかける幼女神。現状は切羽詰ってはないが、それでも今からやらないよりかはやる方が良い。幼女神は守であれば何かが合った時、また突っ込んでいく可能性がある気がしているからだ。
「まぁそれぐらいならやれない事もないか」
『確りと自分の霊力を認識せねばならぬぞ? 出来てなければ活! じゃからな』
それに幼女神は理解している、人が神の力を使った事により、影に闇にと動き出してるものが居る可能性を。
だからこそ守に自衛が取れる力をあたえ、魅雲や他の妖怪と連絡を密に取っている。
全ては自らの可愛い住人達の子や自らの居場所を確保する為に。
「それにしても、たまりや座敷童子は何をしてるんだ?」
『守が訓練をするから自分達もやる! という事じゃろ?』
「きゅー!」
『……がんばる』
仲間外れが嫌なのか、全員がやる気に満ちている。守だけは呆気にとられているが。それでも、一人でやるよりは随分と良いだろう、それも相手は可愛い住人達だ。
「まぁ皆がやる気だしてるしがんばりますかね」
こうして朝晩の訓練が開始されるのだった。
「きゅーん」
たまりが空を飛んでいる、早速訓練の成果が出たようだ。
「てか、早すぎじゃね!?」
『まぁ殺生石の欠片を内包しておるでの、術を使えるようになるのも早いじゃろ』
『……たまりえらい』
悠々自適に空をとぶたまりは其のまま守に突撃し……くるりと首に巻きついた。
「きゅきゅ」
「おぉぅ、そうか、うんすごいなたまりは」
ほめてほめてとすりつくたまりに、守も何だか安心した気分になってついつい構ってしまう。
古今東西何処へ行っても可愛いは正義なのだろう、相手が妖怪であってもだ。
『たまりが可愛いのは解ったのじゃが、さっさと続きをするのじゃぞ』
絶対妖怪殺すべしを長い間過してきた幼女神すら、たまりに陥落しているのはさておき、今は訓練の時間である、続きを催促するのも当然だ。
うんうんと唸りつつも冥想をする守ではあるが、何かを使う事が出来そうにもない。
「はぁ……まったくわからんぞ」
『……守は色々と考えすぎ』
『そうじゃな頭の中を空っぽにするのじゃ、木々の様に其処に在るだけの存在となるのじゃ』
「……全く解らん」
「……きゅー」
現代の人間にとって考えない時間と言うのは、寝てる時ぐらいしか無いのではないだろうか? 其れほどまでに色々な情報や物が溢れている。
『何かに集中する形のほうが良いやも知れぬな』
『……鈴虫の音とか?』
「歌とかじゃ駄目なのか?」
『心静かに落ち着ける状態でないと駄目じゃ』
思考錯誤をしながらの特訓になりそうだ、この訓練が実を結ぶのは当分先の話になるだろう。




